アニメや漫画の人気作品は一度注目が落ち着いても、原作者やスタッフの思わぬところで再ブームを巻き起こすことがあります。
とくにSNSが普及してからというもの、多くの人が手軽に情報を得られるようになり、何気ない投稿が拡散されて再度注目された作品もあるようです。
◆一般人の投稿が16万件の「いいね」を獲得──『斉木楠雄のΨ難』
今年の4月中旬、麻生周一先生原作の『斉木楠雄のΨ難』が再び注目を集めました。
きっかけは、ある一般人が「窪谷須は一途で良い男だからみんなメロついて当然」と、同作に登場する窪谷須亜蓮の魅力をX(旧Twitter)に投稿したことで、瞬く間に拡散され16万件以上の「いいね」が付いたことです。
この投稿を見たXユーザーからは「窪谷須亜蓮は確かに良いキャラクター」「また漫画が読みたくなっちゃった」といったコメントが寄せられ、反響の大きさがうかがえます。
数日後、この投稿を知った麻生先生は、自身のXアカウントで窪谷須亜蓮の描き下ろしイラストを発表。
拡散された一般人の投稿を引用リポストする形で、「たまに現れたと思ったら他人のバズりにのっかっていく作者」と投稿しました。
麻生先生のポストは34万件を超える「いいね」が付き、ファンからは「麻生先生にもこの投稿を知ってほしいと思っていたので、とても嬉しいです」「窪谷須君の新規イラストありがとうございます!」と喜びの声があふれ、もう一度漫画を読んだり、アニメを観たりしたいと感じた人が増え、同作の再ブームにつながりました。
◆まさかのインドで人気再燃!──『おぼっちゃまくん』
1989年から3年以上も放送された、小林よしのり先生原作の人気アニメ『おぼっちゃまくん』。
同作は原作の累計発行部数が630万部を超え、1989年には「第34回小学館漫画賞児童向け部門」を受賞しました。
主人公・御坊茶魔の「おはヨーグルト」「こんばんワイン」「そんなバナナ」などの愉快なワードは子供たちを中心に流行し、いまだに熱狂的なファンに支持されています。
そんな『おぼっちゃまくん』はインドでも絶大な人気を誇っており、2021年にキッズチャンネルで放送されたことをきっかけに人気に火が付き、新シリーズの放送をリクエストする声が多数寄せられたのだとか。
今年の3月に公開された『読売新聞オンライン』の記事「アニメ「おぼっちゃまくん」 おかげ茶魔でインドで人気爆発ぶぁい!」にて、テレ朝国際ビジネス開発部のアニメチーフは、同作がインドで人気を得た理由について「学校が舞台の学園ものの要素」「親子愛」「何より勢いのあるギャグ」の3つを挙げており、「昭和の終わり、経済が発展を続け、国として元気のある中で生まれた作品が、経済が上り調子のインドの状況と合うのでは」と分析しています。
インドでの高い人気を知った小林先生も新たなシリーズの放送を快諾し、テレビ朝日とソニー・ピクチャーズ・ネットワークス・インディア(現カルバー・マックス・エンターテインメント)が『おぼっちゃまくん』の新作アニメの制作をすることになりました。
アニメ制作はインドで行われ、シナリオはかつて『おぼっちゃまくん』を放送していたテレビ朝日のグループ会社・シンエイ動画が手がけることになっており、放送は今年の夏に予定されています。
◆最終回は3つのパターンが決まっている?──『HUNTER×HUNTER』
冨樫義博先生原作の『HUNTER×HUNTER』は、休載期間がかなり長いことで知られています。
理由は主に冨樫先生の体調面ですが、掲載元の『週刊少年ジャンプ』で連載が再開するたびにSNSを中心に大きな話題を集め、再び同作を読み直す読者が増えています。
2022年には冨樫先生がXの公式アカウントを開設し、原稿のラフ画などを投稿。このことにより、もともと人気のあった本作はさらに注目を集めました。ちなみに、冨樫先生のXのフォロワー数は、今年の4月末の時点で、334万人を超えています。
冨樫先生は同作の結末についていくつかの案を考えており、2023年11月放送のテレビ朝日系『イワクラと吉住の番組』で特集を組まれたとき、直筆の手紙でA・B・Cの3パターンを用意しており、読者がどのような反応を示すのか想像していることなどを明かしました。
それでもストイックな冨樫先生は「この3パターンのどれも選ばずに済むくらい、面白い結末を考えつくるのが理想であり目標」だとしつつ、「未完のまま私が死んだらこれが結末だったという事で御容赦いただけますと幸いです」と、ブラックジョークも交えました。
さらに、3パターンとは別に実はDのパターンも構想しており、ゴンの孫娘にあたるギンという少女が登場する世界線を考えていたそうです。
現時点で『HUNTER×HUNTER』 は再び休載になり、冨樫先生のXも2024年末から更新がストップしています。
今後も、ストーリーがどのように広がっていくのか目が離せません。
──既に連載やTVアニメの放送が終了していても、SNSの普及により一般人の投稿で人気が再燃するのはおもしろい時代だといえます。
また『おぼっちゃまくん』のように海外で人気を得たことで、日本と共同の新作アニメが制作されることを見ると、大きな国を動かした日本のアニメの凄さを感じます。
〈文/花束ひよこ〉
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