「七色の声」を持つと言われている声優ですが、演じているキャラクターの声があまりにも違いすぎて驚かれることがあります。
国民的人気を誇ったギャグアニメで主役を演じたあの声優も、別のアニメ作品ではクールなキャラクターを演じたり、報道番組のナレーションを担当したりするなど多岐にわたって活躍しているようです。
◆則巻アラレとベルモット──小山茉美さん
小山茉美さんの代表作の一つは、『Dr.スランプ アラレちゃん』の則巻アラレ役ですが、映画エンタメサイト『otocoto』の2017 年5月に公開された記事『ニルス、キシリア・ザビ、ミンキーモモ、アラレちゃん、その声はどのように作られたのか?声優・小山茉美ロングインタビュー前編』では、オーディションに参加する前から同作のファンだったことを明かしています。
当初、木緑あかね役を受けていた小山さんが、「誰がアラレちゃんをやるんですか?」と興味本位で質問したところ、アラレ役のオーディションを受けることを勧められ見事合格。
一方で、『名探偵コナン』では、黒ずくめの組織のミステリアスな女幹部・ベルモットを演じている小山さん。
ベルモットは小山さんの地声に近い声で演じているため、茶目っ気たっぷりのアラレとはまったく違った声質となっています。
ほかにも小山さんは洋画の吹き替えや、テレビ朝日の『報道ステーション』でナレーションを担当したこともあり、アニメ以外にも多岐にわたって活動しています。
◆スネ夫とロブ・ルッチ──関智一さん
今年の4月で、『ドラえもん』の主要キャストが交代してから20年目を迎えました。
骨川スネ夫役を演じる関智一さんは、2017年にテレビ朝日版『ドラえもん』で、長年に渡ってスネ夫役を演じた肝付兼太さんを偲ぶ会が営まれたとき、肝付さんとの思い出について語りました。
スネ夫役に抜擢される前からスネ夫が好きだったという関さんは、初めて『ドラえもん』のアフレコ現場で肝付さんの演技を見たときに「本当に後ろ姿が子供の後ろ姿に見えて、鳥肌がたった」「自分のお父さんと同じぐらいの年配の方がマイクの前で無邪気な姿を見せて、すごいなと驚愕しました」と感じたそうです。
「ご縁があって私なんかが継がせいただくことになって、あの背中がよぎります」「全然、力が足りないんですけど、いつかあんな感じで子供のように年をとっていきたいと思っております」と決意を述べる関さんですが、その演技力は声優界の中でもトップクラスで、高い声で叫ぶことの多いスネ夫とは違い、『ONE PIECE』では残虐性の強いロブ・ルッチ役とハトのハットリ役を兼任しています。
また、関さんは2022年放送の『新テニスの王子様 U-17 WORLD CUP』で、ギリシャの代表選手7人を1人で演じており、ポテンシャルの高さが話題となりました。
◆野原ひろしと産屋敷耀哉──森川智之さん
数多くのアニメキャラや洋画の吹き替えなどに出演している森川智之さんは、2016年8月より『クレヨンしんちゃん』に登場する野原ひろし役(2代目)に抜擢されました。
2021年に投稿されたYou Tube動画『動画、はじめてみました【テレビ朝日公式】』の「声優コレクション」に出演した森川さんは、初代・ひろし役の藤原啓治さんから役を引き継ぐとき、スタッフを介して「森川しかいないから頼むぞ」と書かれた手紙をもらったことを明かしています。
さらに森川さんは「その手紙は今もすごく大切にしていて、仕事部屋の引き出しにずっと入れてるんです」「今スタジオでひろしを演じていますけど、傍らに彼(藤原さん)のひろしもいて、一緒にマイク前で演じているという思いが自分のなかにあるんですよね」と語りました。
ほかにも森川さんは『鬼滅の刃』で鬼殺隊のお館様こと産屋敷耀哉役も演じていますが、耀哉の声は聞く者の心に安らぎを与えるという設定です。
器も大きく先見の明もある耀哉は「まさに理想の上司」とも言われていますが、声優事務所・アクセルワンの代表取締役を務め、新たな逸材を育て上げている森川さんと通ずるものを感じます。
◆しょくぱんまんとナウシカ──島本須美さん
1984年公開の映画『風の谷のナウシカ』で、主人公・ナウシカ役を演じた島本須美さんは、透明感のある声が特徴です。
同作は島本さんが演じたヒロインの中でも代表作となりましたが、2019年2月出版の『声優道 名優50人が伝えたい仕事の心得と生きるヒント』(出版社:主婦の友社)の中で、『風の谷のナウシカ』に出演していたころもアルバイトをして生計を立てていたことを明かしました。
声優としてキャリアを重ねる中にヒロイン以外の役柄も増えていき、1988年から出演している『それいけ!アンパンマン』のしょくぱんまん役は30年以上も演じ続けています。
同作は島本さんの娘で声優の越川詩織さんのデビュー作でもあり、10年以上にわたってたびたび共演を続けています。
──声優は必ずしも違う声を出さなければならないわけではないですが、やはりコミカルな役とクールな役の場合は自然と違う声になることが多く、視聴者を驚かせています。
普段何気なく見ているEDクレジットを眺めていると、「え!? このキャラの声とあのキャラの声、同じ声優さんじゃん!」といった発見があるかもしれません。
〈文/花束ひよこ〉
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