アニメが放送される前のキービジュアルやPVなどで、ひときわ目を引くキャラクターを主人公と思ってしまいがちですが、実はその人物が主人公ではなく、主人公は別にいたというケースがあります。次の4つの作品も宣伝効果などによって、本当の主人公の影が薄くなってしまった作品です。
◆コミックス1巻の表紙にいるのに主人公じゃない?──『【推しの子】』
赤坂アカ先生原作・横槍メンゴ先生作画の漫画『【推しの子】』は、人気アイドル・星野アイが16歳にして双子の子供を授かるという驚きの展開が盛り込まれており、コミックスの第1巻にもアイが登場し、OPテーマ「アイドル」のミュージックビデオにもアイが多く描かれました。
しかし、実は彼女は主人公ではなく、アイの大ファンである産科医の雨宮吾郎こそが本当の主人公なのです。
吾郎はアイのストーカーによって手にかけられてしまい、アイの長男である星野愛久愛海(ほしのあくあまりん)として転生します。
同作はファンタジー作品でありながら、芸能界の光と闇、複雑な人間関係、サスペンス要素なども描かれ、最後まで手に汗握る作品として圧倒的な支持を得ました。
◆てっきり主人公の名前かと思ったら……──『AKIRA』
大友克洋先生原作の『AKIRA』は、タイトルが人名とも取れるためか、「AKIRA」という人物が主人公だと思われがちで、なおかつ実際の主人公・金田正太郎のことを「AKIRA」だと勘違いしている人も一定数いるのだとか。
もちろんコミックスをしっかり読めば誤解はすぐに解けますが、もう一人の主人公・島鉄雄も「AKIRA」だと思われることが多く、その理由はコミックスや劇場版などのキービジュアルで彼らが大きく描かれているからかもしれません。
ちなみに「AKIRA」とは同作の鍵を握る「アキラ」という少年のことで、「28号」とも呼ばれています。
◆なぜか主人公じゃないのにフォーカスされる──『戦姫絶唱シンフォギア』
『戦記絶唱シンフォギア』は、TVアニメが放送される前に発表されたキービジュアルや雑誌に掲載されたイラストで、天羽奏と風鳴翼の二人がフォーカスされていました。
そのため奏と翼のダブルヒロインだと思われていましたが、TVアニメの放送直前で立花響が主人公だと明かされ、ファンを驚かせています。
なぜ主人公ではない奏と翼を先にアピールしていたのかは明かされていませんが、アニメ第1話で奏は亡くなってしまうため、制作サイドに何らかの「大人の事情」があったのではないかと考えられています。
同作は第1期から第5期までTVアニメが放送されていますが、オープニングテーマ曲はすべて風鳴翼役の水樹奈々さんが、エンディングテーマは雪音クリス役の高垣彩陽さんがそれぞれ担当し、主人公・立花響役の悠木碧さんは挿入歌・劇中歌のみの担当となりました。
◆メディア展開はヒロインばかりが目立つ?──『BLACK LAGOON』
広江礼威先生原作の『BLACK LAGOON』は、ヒロインの「レヴィ」ことレベッカ・リーがメディア展開でフォーカスされることが多いため、主人公だと思われがちです。
実際の主人公は「ロック」こと岡島緑郎という青年で、レヴィも作中で多く活躍することから、ファンの間では「W主人公と言っても差し支えないのではないか?」ともいわれています。
また、同作の主人公が男性ではないと誤解されている理由として、『【推しの子】』と同じくレヴィがコミックス第1巻の表紙を飾っていることと、ほかの女性キャラたちが表紙に選ばれる場合が多いことが考えられます。
ちなみに2010年出版の『サンデーGX』10月号では、『名探偵コナン』の原作者・青山剛昌先生がレヴィのピンナップを描き、話題となりました。
──よく目にする作品にもかかわらず、主人公が別のキャラクターと誤解される……。通常なら考えられないことですが、それだけ視覚から受ける印象が強い証拠であり、作中で主人公よりもある意味でオーラを放っているのかもしれません。
特に『【推しの子】』は星野アイを巡って多くのキャラクターの人生が揺れ動いたことから、登場回数は少なくとも、「影の主人公」といっても過言ではないでしょう。
〈文/花束ひよこ〉
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