世界観の表現が難しいことから、実写化が発表されるたびに物議を醸す漫画作品。
学園モノなどのファンタジー要素がそれほどないものや、登場人物のビジュアルがそれほど奇抜ではないものだと表現しやすい傾向にありますが、あまりにも原作とかけ離れていると炎上することも珍しくありません。
ところが、ファンの想像をはるかに超えるクオリティーの作品もあり、空前のヒットとなる場合もあるようです。
◆日本人が演じる「ローマ人」が大絶賛される──『テルマエ・ロマエ』
ヤマザキマリ先生原作の『テルマエ・ロマエ』は古代ローマ時代の浴場と、現代の日本の風呂をテーマとした異色のコメディ作品で、タイトルはラテン語で「ローマの浴場」という意味です。
実写化に当たっては登場人物の多くが古代ローマ人ということもあって難航することが予想されましたが、いわゆる「濃い顔」のキャストが多く選ばれ、ファンタジー作品としては異例のヒットとなりました。
特に主人公・ルシウスを演じた阿部寛さんは彫りの深い顔立ちで知られており、役にピッタリだと話題に。
ほかの出演者には北村一輝さん、市村正親さん、宍戸開さんなどが選ばれ、作中ではメインキャストのほとんどが日本人でありながら、本当に古代ローマ人なのではないかと思わせる迫力がありました。
同作の映画は2012年公開の第一作目の興行収入が59億円超え、2014年公開の第二作目も44億円を超えるヒット作となり、現在もヒットした実写化作品として語り継がれています。
◆松山ケンイチさんの出世作になる──『DEATH NOTE』シリーズ
大場つぐみ先生原作・小畑健先生作画の『DEATH NOTE』は、連載元の『週刊少年ジャンプ』では珍しいサイコ・サスペンス作品として人気を得ました。
同作は映画として『デスノート(前編)』『デスノート the Last name(後編)』『デスノート Light up the NEW world』とスピンオフ作品の『L change the WorLd』の4つが上映され、いずれも多くの観客を動員しています。
2006年に公開された『デスノート(前編)』は28億円超え、『デスノート the Last name(後編)』は52億円と興行収入にかなりの差があるものの、前編のおもしろさが話題となって後編に興味を持った観客が増えたと考えられます。
通常、原作のコミックスが長期連載作品だった場合、数時間しかない映画の中でどこまでのストーリーを取り入れるかが問題となりますが、視聴者や原作ファンは「まとめ方が素晴らしい」「本当に良いところで終わったと思う」と絶賛。
また、L役を務めた松山ケンイチさんは同作をきっかけに大ブレイクし、のちに『デトロイト・メタル・シティ』や『銭ゲバ』など、人気漫画の実写で主演に抜擢されています。
◆中島美嘉は「ナナそのもの」と言われる──『NANA』
2019年の時点で累計発行部数が5000万部を突破している矢沢あい先生原作の『NANA』は、2005年に映画化されるや興行収入40億円を叩き出しました。
原作の人気もさることながら、同作はキャストに選ばれた役者が「漫画から出てきたみたいなビジュアル」とファンの間で話題になるほどハマり役ぞろいで、主役の一人である大崎ナナ役に選ばれた中島美嘉さんは「ナナそのもの」とまで評されています。
また、中島美嘉さんが歌った主題歌の「GLAMOROUS SKY」(NANA starring MIKA NAKASHIMA名義)はシングルCDで初めてオリコンランキング1位を獲得しました。
◆豪華キャスト全員がハマり役──『銀魂』シリーズ
空知英秋先生原作の『銀魂』は、2017年7月に第1作目が公開されて興行収入38億円超え、2018年8月公開の第2作目『銀魂2 掟は破るためにこそある』は37億円超えのヒットとなりました。
同作の映画は主人公・坂田銀時役に小栗旬さんが抜擢され、ほかの主要なキャラクターを菅田将暉さん、橋本環奈さん、三浦春馬さん、堂本剛さんなど知名度の高い俳優が多く出演しています。
そのほとんどが原作のキャラクターにビジュアルを寄せており、「世界観が原作のまま」「原作に対するリスペクトを感じる」と話題になり、映画は原作を未読でも楽しめる内容で、なおかつアクションシーンも見応えがあると評価されました。
〈文/花束ひよこ〉
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