『HUNTER×HUNTER』の原作者・冨樫義博先生と、『美少女戦士セーラームーン』の原作者・武内直子先生は「漫画家夫婦」として有名であり、武内先生が冨樫先生の原稿を手伝うこともあるそうです。

 ほかにも夫婦で漫画家として活躍している人は多く、中には世界的なヒット作のあの技の名前を妻が生み出したという驚きのケースもあります。

◆鳥山明先生×みかみなち先生──「かめはめ波」の名付け親はまさかの妻!?

 『ドラゴンボール』の原作者・鳥山明先生の妻は、かつて少女漫画家として活躍したみかみなち先生。

 1983年5月放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に鳥山先生が出演したときにはみかみ先生も撮影に同行し、ほんの少しだけ姿が映し出されました。

 鳥山先生は馴れ初めについて、「奥さんの親戚が同じ町内にいまして」「同業の人ってめったにいないですから、会ってみようと最初は同業の人5人くらいで」と明かしています。

 さらに、「(妻は)僕より年上で」「時々手伝ってくれています」「(同じ漫画家で)一番助かっている部分」と、みかみ先生が大きな支えとなっていることを笑顔で語っていました。

 また、1995年6月出版の『Dragon ball大全集 : 鳥山明ワールド. 1 (Complete illustrations)』(出版社:集英社)では、孫悟空の必殺技である「かめはめ波」を命名したのは、実はみかみ先生だと明かされています。

◆松本零士先生×牧美也子先生──夫婦で合作作品も発表

 『銀河鉄道999』の原作者・松本零士先生の妻・牧美也子先生は、少女漫画雑誌や女性向け週刊誌、青年誌などさまざまな媒体で作品を発表しています。さらに、おもちゃメーカー・タカラトミー(旧:タカラ)から発売されている着せ替え人形「リカちゃん」の初代デザインを手がけたことでも知られています。

 20168月放送の『徹子の部屋』に出演した松本先生は、牧先生との馴れ初めについて、漫画家同士のつながりがきっかけだったと明かしました。

 15歳という若さで漫画家デビューを果たし、18歳のときに手塚治虫先生のアシスタントを務めていた松本先生。同じく若くして活動していた牧先生の活躍が耳に入っていたのかもしれません。

 2015年に広島県熊野町の「筆の里工房」で行われた「松本零士×牧美也子 夫婦コラボ展」では、松本先生と牧先生の漫画原稿や合作原画、初代リカちゃん人形のグッズなど、およそ150点が展示されました。

◆本宮ひろ志先生×もりたじゅん先生──スランプを乗り越えることができた理由は……

 『サラリーマン金太郎』の原作者・本宮ひろ志先生の妻・もりたじゅん先生は、少女漫画雑誌『りぼん』やレディースコミック雑誌『YOU』を中心に活躍した漫画家です。

 2012年9月出版の著書『同期生 「りぼん」が生んだ漫画家三人が語る45年』(出版社:集英社)では、もりた先生がスランプに陥ったとき、本宮先生の助力を得て作品を完成させられたと明かされています。

 その後、もりた先生は58歳で漫画家を引退したものの、絵を描くことは続けていたようで、本宮先生の作品に登場する女性キャラの下描きを担当していました。

 実際に著書を読んだファンからは「本宮先生とのエピソードがおもしろかった」「もりた先生の漫画家としてのストイックさがすごい」と称賛の声があがっています。

◆吉田戦車先生×伊藤理佐先生──最初の結婚でスピーチしたのは、のちの夫!?

 『伝染るんです。』、『ぷりぷり県』などの原作者・吉田戦車先生と、『おるちゅばんエビちゅ』の原作者・伊藤理佐先生は、バツイチ同士で再婚しています。

 20177月公開の『AERA DIGITAL』の記事「まるでギャグ漫画! 伊藤理佐が吉田戦車に放った戦略的口説き文句」によると、伊藤先生が23歳で結婚したとき、披露宴でスピーチをしたのが吉田先生だったという驚きのエピソードが明かされました。

 もともとは「飲み友達」だったという二人は、お互いに結婚したことで15年ほど会わずにいたものの、二ノ宮知子先生のヒット作『のだめカンタービレ』の講談社漫画賞の受賞パーティーでたまたま席が隣になり唐揚げを食べたそうです。

 そのとき、吉田先生は久しぶりに会ったにもかかわらず近況を聞くこともなく、「なあ理佐、肉ってうめえなぁ」と口にしたのだとか。

 伊藤先生は「それがすごく良くて「格好いい!」って大騒ぎしたら、周りからもはやし立てられて」と馴れ初めについて語っています。その後、二人はSNSでのやり取りなどを経て交際に発展し結婚。結婚後は子供にも恵まれています。

 

 ──夫婦で漫画家デビューを果たしている人は、原稿を手伝ったり、スランプのときには支え合って作品を完成させたりと、同業者だからこそお互いに助け合っているようです。

 孫悟空の必殺技の「かめはめ波」を命名したのが、鳥山明先生の妻のみかみなち先生であるというエピソードは、鳥山先生が亡くなったことを踏まえると胸に迫るものがあります。

 また、松本零士先生と牧美也子先生が夫婦でコラボ展を開催し、合作も発表していたことは、二人の作品のファンにとってはたまらない企画だったのではないでしょうか。

〈文/花束ひよこ〉

 

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