連載漫画やアニメ放送が全盛期だった1980年~1990年代、チビッ子たちはこぞって登場キャラクターが繰り出す「必殺技」をマネしたものです。

 しかし、当然のことながら、想像の産物である「必殺技」を不用意にマネした結果、思いもよらないしっぺ返しを食らうことも……。

◆背骨が折れる危ない必殺技 『キン肉マン』ロビンマスクの「タワーブリッジ」 

 プロレス・ブームの波に乗り、時代を代表する人気作品となった『キン肉マン』に登場する必殺技は、誰もが一度はマネしたことがあるのではないでしょうか。

 ラーメンマンの「キャメルクラッチ」や、ウォーズマンの「パロ・スペシャル」など、比較的マネしやすい必殺技が多かったことも人気の要因だったのでしょう。

 その中でも、簡単そうに見えて危険だったのが、ロビンマスクの「タワーブリッジ」です。柔道技の「肩車」を背面からかけるようなイメージの技で、力の弱い小学生でも、自分より体の小さい下級生であれば比較的簡単にかけることができました。

 ところが、「タワーブリッジ」は実際にやると背骨が折れるリスクがある超危険な技で、小学生など骨格が未熟な子供ならなおさらです。また、右手を首にかけているため、技をかけられた側は声も出せず、ロビン役が気持ちよく技をかけている間に、声もなく泣き出していることも……。

 「タワーブリッジ」に限らず、『キン肉マン』の必殺技は学校の休み時間などに友だち同士でかけ合い、コミュニケーションの一種となっていました。しかし、度を超えてしまうと、それが原因で友達との関係にヒビが入る、なんてことも「あるある」だったのではないでしょうか。

◆あわや大ケガ? アクロバットすぎる 『キャプテン翼』立花兄弟の必殺シュート「スカイラブハリケーン」

 『キャプテン翼』には、翼の「ドライブシュート」など実在するものから、シュナイダーの「ファイヤーショット」など非現実的なものまで、多くの必殺シュートが登場しますが、中でも再現が難しいにもかかわらず再現欲をそそられたのが、双子の立花兄弟が繰り出した「スカイラブハリケーン」でした。

 「スカイラブハリケーン」とは、先を走って仰向けになった政夫の足を踏み台に和夫が高く跳び、強烈な高低差からヘディングシュートするという、想像を絶するアクロバット技です。

 「スカイラブハリケーン」再現へのロマンを追い続ける人も多く、YouTubeでは再現動画が数多く見られ、有識者が科学的に「スカイラブハリケーンは実践できるワザなのか?」について見解を述べるなど、完全再現への熱は現代でも冷めていません。

 しかし、当時の子供がマネした結果、政夫役は背中を擦りむくうえ、和夫役が少しでも足の位置を間違えれば股間を強く踏みつけられてしまう……など、大ケガにつながりかねない超危険な必殺シュートでした。

 はたして、「スカイラブハリケーン」が原作レベルで再現できる日は来るのでしょうか……!?

◆ただの手刀……真似すると手が負ける! 『聖闘士星矢』紫龍の「エクスカリバー」

 「ペガサス流星拳」や「廬山昇龍覇」など、魅力的な必殺技が数多く登場した『聖闘士星矢』。現実では出せないと分かっていても、多くの少年が必殺技のモーションをマネしたものです。

 そんな中、現実世界でも再現できるのでは? と思ったのが、山羊座(カプリコーン)のシュラの伝家の宝刀「エクスカリバー」でした。

 「エクスカリバー」は、TVゲームなどにも多く登場する伝説の聖剣で、本作ではシュラがその身に宿している設定です。振り上げられた手刀は何者をも切り裂く刃と化し、対戦した紫龍も相打ちになるのがやっとでした。

 シュラ亡き後、紫龍が「エクスカリバー」の力を受け継ぎ、ポセイドン編で相対したクリュサオルのクリシュナとの闘いで初披露されました。クリシュナが持つ黄金の槍(ゴールデンランス)を両断するシーンは、空手道の瓦割りや日本刀で竹を斬るイメージを想起させ、「努力次第では自分にもできる」と当時の少年たちは思ったものです。

 しかし、実際は筋力も骨も未熟な小さな子供です。学校の掃除用モップなどでチャレンジした結果、手が負けて打撲や骨にヒビが入るケースも……。

 肝心な「鍛錬」という要素を抜きにしてマネしてしまった当時の少年たちにとっては、やはり危険な必殺技だったといえるでしょう。

◆風呂あがりの湯気は「気」じゃない! のぼせて湯あたり…… 『ドラゴンボール』

 当時の少年たちが熱中した人気漫画の代名詞ともいえるのが『ドラゴンボール』でしょう。バトル要素が強くなるにつれ、「気」というエネルギーを使った必殺技が増え、スカウターの登場によって数値化までされました。

 悟空をはじめ、登場キャラクターが集中すると、その身にまとうオーラのようなものが「気」ですが、それとよく似ていたのが、風呂あがりに体から立ちのぼる「湯気」でした。

 「気」は大きければ大きいほど強いとされていますが、同じく「湯気」も熱ければ熱いほど多くなります。少年たちは、風呂あがりに自分の身体から立ちのぼる湯気を「気」に見立てて、「はぁ~!!」と、悟空たちのマネをしていました。

 特に、兄弟同士や友達の家に泊まったときなどは、いかにたくさんの気(湯気)を出すか競い、我を忘れて長風呂に。その結果、のぼせて湯あたりしてしまうなど、健康的にはあまりよくない行為を繰り返していたものです。

 

 ──当時の漫画やアニメに心躍らせ、こぞって必殺技をマネした時代が懐かしいものです。もしかすると、ケガなどの苦い経験も含めて、名作から得られるかけがえのない「人生経験」だったのかもしれません。

〈文/lite4s〉

《lite4s》

Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『キン肉マン 第77巻 出版社:集英社)』

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