年齢にかかわらず長く活躍できる「漫画家」という職業ですが、長年に渡って作品を世に送り出している作家の中には、驚くほど若いころにデビューを果たした人も少なくありません。

 ギネス世界記録に認定されたあの人気の漫画家も、高校在学中からその才能を発揮していたようです。

◆尾田栄一郎先生『ONE PIECE──17

 2022年で連載25周年を迎えた『ONE PIECE』は、同年8月に全世界での累計発行部数が5億部を突破したと、尾田栄一郎先生公認ポータルサイト 『ONE PIECE.com』で発表されました。これは「最も多く発行された単一作家によるコミックシリーズ」としてギネス世界記録にも認定されています。

 尾田先生が「漫画家」という職業がこの世にあることを知ったのは4歳だったと、1998年出版のコミックス第4巻で明かされています。

 高校1年生のころから本格的に漫画を描き始め、1992年、17歳の若さで『週刊少年ジャンプ』の新人賞「手塚賞」(下半期)で準入選。短編『WANTED!』でデビューを果たします。

 デビュー当時は「月火水木金土(つきひみずきこんどう)」のペンネームを使用していましたが、1997年、22歳で初連載となる『ONE PIECE』を「尾田栄一郎」名義で発表しています。

 また、尾田先生は2016年の熊本地震の際、「モンキー・D・ルフィ」の名義で地元・熊本県に8億円を寄付。復興プロジェクトとして南阿蘇鉄道のラッピング列車にイラストを提供するなど、積極的に支援活動を行いました。

 その功績が認められ、2018年には熊本県から「県民栄誉賞」を贈呈されています。

◆ゆでたまご先生『キン肉マン』──17歳と18

 『キン肉マン』シリーズの原作者・ゆでたまご先生は、嶋田隆司先生と中井義則先生による漫画家ユニットの合同ペンネームです。

 同じ小学校に通っていた嶋田先生と中井先生は、1978年、高校生のときに二人で描いた『キン肉マン』が『週刊少年ジャンプ』の新人賞「赤塚賞」(下半期)に準入選し、嶋田先生が18歳、中井先生が17歳という若さでデビューを果たしました。

 ちなみに「ゆでたまご」という独特なペンネームの由来については、2006年公開の『All About 趣味』でのインタビュー記事「ゆでたまご嶋田先生が語るキン肉マン1」で語られています。

 嶋田先生は「相棒(中井先生)は「おならして、それがゆでたまご臭かったから」と言ってますけど、恐らくその説が正しいかなと思うんですよね。たまたまです」「キン肉マンを投稿するギリギリのところでペンネームが思いつかなくて……」「昔は藤子不二雄さんみたいに、二人の名前をつけたりとかしてました」「でも、マガジンに応募したりもしてダメだったときに、ペンネームが悪いってなって」と、記憶が曖昧であることを明かしました。

◆小畑健先生『DEAHT NOTE』ほか──17

 『ヒカルの碁』『DEAHT NOTE』『バクマン。』『プラチナエンド』など、数々のヒット作の作画を担当している小畑健先生は、17歳でデビューしています。1985年、『週刊少年ジャンプ』の新人賞「手塚賞」(下半期)に『500光年の神話』で準入選し、デビューを果たしました。

 デビュー時のペンネームは「土方茂(ひじかたしげる)」でしたが、のちに現在の「小畑健」に改名しています。

 特にその画力は高く評価されており、2007年に出版された太宰治先生原作の『人間失格』(出版社:集英社文庫)の表紙イラストを手がけたときは、21万部を超えるヒットとなりました。

 そのほか、2008年出版の芥川龍之介先生原作の『地獄変』、夏目漱石先生原作の『こころ』の表紙イラストも担当し、その優美なイラストで多くのファンを魅了しました。

◆遠藤達哉先生『SPY×FAMILY──19

 2019年、『少年ジャンプ+』で連載が始まった『SPY×FAMILY』で人気を博した遠藤達哉先生は、2000年、『週刊少年ジャンプ』の「第5回ストーリーキング漫画部門」に投稿した『西部遊戯』で準キングを受賞し、19歳でデビューしました。

 デビュー後は読み切り作品や連載作品を発表するものの、なかなかヒットに恵まれず、加藤和恵先生原作の『青の祓魔師』などのアシスタントを務めていた時期もあったそうです。

 しかし、その実力は高く評価されており、2020年に遠藤先生の担当編集者が『COMIC NEWS』のインタビューを受けたときには、「遠藤先生が(アシスタントに)入ると、どの職場も絵が上手くなるんですよ」「どこの現場でも重宝される方でした」と大絶賛しています。

 38歳にして連載を始めた『SPY×FAMILY』は、2023年に「第52回日本漫画家協会賞」コミック部門で大賞を受賞しました。

 

 ──『週刊少年ジャンプ』の屋台骨である作家陣は10代でデビューする人が多く、尾田先生・ゆでたまご先生・小畑先生に至っては高校生の若さで才能を開花させています。

 遠藤先生を含め、全員が現在も人気を維持しているのは、彼らの実力はもちろんのこと、その才能を見出した当時の編集者の先見の明があってこそでしょう。

〈文/花束ひよこ〉

 

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