『ダンダダン』の新シーズンが目立つ夏アニメ。しかし、実は今季はそれ以外にも“オカルト要素”を取り入れたアニメが続々とスタートしています。一口にオカルトといっても、その見せ方もさまざま。それぞれどんな取り組み方で作られている作品が登場しているのでしょうか。
◆スマホの登場に過激な描写…… 令和の『地獄先生ぬ〜べ〜』は一味違う?
『少年ジャンプ+』出身のオカルト作品代表が『ダンダダン』ならば、本家本元の『週刊少年ジャンプ』のオカルト代表と言っても過言ではない作品として、今季からは『地獄先生ぬ〜べ〜』の放送がスタートしています。
『地獄先生ぬ〜べ〜』といえば90年代に『週刊少年ジャンプ』で漫画が連載され、1996年からはTVアニメ化を果たして人気を博した作品です。
アニメ自体は1997年に終了しているのですが、その後もOVA版が製作されたり、1999年に漫画の連載が終了したあとも継続的に続編やスピンオフ作品の連載、さらには2014年には実写ドラマ化を果たすなど、大きく期間を空けることなく、なんらかのメディアミックスが常時展開されるほどの作品でした。
そんな『地獄先生ぬ〜べ〜』が2025年という四半世紀ぶりにTVアニメとして復活。キャラクターたちは90年代の原作漫画を踏襲しながらも、スマートフォンやタブレットが登場したりと舞台は現代に合わせたりとアレンジが加わっています。
ただたんに舞台を現代にアップデートするだけでなく“攻めている”と思わせられたのが過激な描写の多さ。作品によっては抑えることも多いのですが、今回の新作アニメ『地獄先生ぬ〜べ〜』でははっきりと過激な描写を描いており、第2話「妖狐・跳梁跋扈」はアクションを重視した回だけに、堂々とキャラクター同士が身体を貫き合ったり、幻覚とはいえ生徒の首が消えたような描写や、妖狐が自身の頭蓋骨を自ら……、といった描写などもはっきりと描いたりと下手したら演出を控えめに抑えてしまうようなシーンも、はっきりと描いています。
まだエピソードとしては序盤ということもあり“アクション”要素に力を注いでいるような印象も受けますが、原作漫画では今なお語り継がれるようなトラウマを植え付けるような怖い回も存在するので、今後の本格ホラー回の登場に期待です。
◆1話目から既に本格的に怖い! 先が読めない『光が死んだ夏』
さらに踏み込んで本格的にホラー演出に臨んでいるアニメ作品が『光が死んだ夏』です。
元々は『ヤングエースUP』で連載されている同名の原作漫画があり、それをアニメ化したものです。原作漫画は「このマンガがすごい!2023」(宝島社)のオトコ編第1位に選ばれたほどの作品であり、既にお墨付きの作品といえるのですが、アニメーション化についてもなかなかに容赦がないです。
本作では友人がまったく別の“ナニカ”に突然すり替わっていたという奇妙なところから物語が始まる異色作。何とすり替わってしまったのかや友人に何が起こったのかがはっきりしないまま、友人の喪失を望まない主人公の佳紀はその状況を受け入れて行くのですが、第1話「代替品」では早々にそんな佳紀の知らないところで不審な動きをする者たちや、彼自身にも不可解な体験が起きたりと、不気味な展開が続きます。
漫画にはないTVアニメだからこその要素として、展開の緩急をただひたすらに受動的に受け取るしかないところや、色彩や音といったそれまでは想像で補っていた要素が加わっているところがあります。
『光が死んだ夏』ではそういった違いを“ホラー演出”に振り切っているところが特徴的です。設定からして既に不穏なのに、しっかりと嫌なことが早々に起こっていくので、果たしてこの物語がどこに向かっているのか、まったく先の読めない事態が輪をかけて怖くて面白い導入となっていました。
──今でこそ『ダンダダン』に限らず霊や怪物などオカルトを題材にした作品も多く登場しているわけですが、ここまでしっかりとホラー要素が際立つ作品は珍しいです。“ちゃんと怖い”作品を求めている人には今季の要チェック作品となりそうです。
『ダンダダン』、『地獄先生ぬ〜べ〜』、『光が死んだ夏』といずれもオカルト要素を取り入れた作品でありながら、アクションやコメディの具合など三者三様でその方向性や見せ方がまったく違うのがまた面白い点です。
せっかくこれらが同タイミングで楽しめるということで比較しながら観れば、ヒヤリとさせるスリルを味わいながらこの暑い夏を過ごせるはずです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:『TVアニメ「地獄先生ぬ~べ~」第1話 場面写真 ©真倉翔・岡野剛/集英社・童守小学校卒業生一同』