『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の興行のヒットに、この夏はどうしても目が行ってしまいがちですが、その隣で“ロングラン上映”を果たして地道に集客に成功しているアニメーション映画たちがいます。それが応援上映形式を意識した作品群。
どうしても映画館の多くの上映回がヒット作品の上映に割かれてしまいがちな中、『うた☆プリ』や『キンプリ』、『ヒプマイ』といったショー形式の映画たちが興行的に大健闘しています。
◆今年も要注目 応援上映形式の作品は“ここ”が強い!
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が日本史上最速で興行収入100億円を突破という著しい結果を残している隣で、“応援上映”形式を大々的に取り上げているアニメーション映画たちが日本の興行史上とまではいかないものの、揃ってヒットを果たしています。
直近で公開された作品では『キンプリ』こと『KING OF PRISM-Your Endless Call-み~んなきらめけ!プリズム☆ツアーズ』が、6月27日公開からひと月ほどで興行収入5億円を突破。さらには8月末にはSCREENX・4DX・ULTRA4DXといったラージフォーマットでの上映も決定しており、この数字はまだまだ伸びていきそうです。
『うた☆プリ』こと『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ TABOO NIGHT XXXX』は、5月9日に公開され、ロングラン上映を果たした末に、7月末の時点で動員100万人の大台の突破を発表。こちらも公開から時間が経っているのですが8月に入って以降も上映を開始する映画館があったりと、息の長い興行を見せています。
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キャラクターデザイン藤岡真紀より
“ありがとう”ビジュアル到着🌹
\「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪
TABOO NIGHT XXXX」動員100万人を突破いたしました🎊
皆様のたくさんの応援を
ありがとうございます✨https://t.co/61GaoiUV5g#うた☆プリTN pic.twitter.com/x5RblQ4ul4— アニメ「うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE」シリーズ公式 (@utapriMAJILOVE) July 25, 2025
さらに公開開始を遡ることになる作品として『ヒプマイ』こと『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』が2月21日に公開を開始して、5ヵ月を計画したタイミングの7月に入ってから“復活上映”がスタート。さらに9月には作品の8周年を記念した再上映も既に発表されており、興行収入は17億円・観客動員数70万人の大台を突破する規模の作品となっています。
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>まだまだ #ヒプムビ🎤<
 ̄Y^Y^ Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄公開から5か月!
7月26日(土)には
˗ˏˋ復活上映ˊˎ˗もあります🔥《👇シアターリスト👇》https://t.co/De9QMyjpRI#ヒプマイ8周年
を迎える9月に再上映も㊗️
引き続き、ヒプムビにご注目下さい🎬 pic.twitter.com/dVgM4xA2pZ— ヒプノシスマイク-D.R.B-(ヒプマイ) (@hypnosismic) July 21, 2025
いずれの作品も共通点として、作品中の登場キャラクターがショー形式で歌唱パフォーマンスを見せてくれるもので、実際に声援をあげたりできるいわゆる“応援上映”の形式を強く推し進めている作品たちです。
上映時期や上映規模によって成績こそさまざまではありながらも、どの作品も公開が始まってから息が長い興行に成功しています。
こういった応援上映の方式を取り入れた作品が2010年代後半ごろから広く話題になってからしばらくが経ちましたが、新型コロナウイルス感染症の流行も乗り越えすっかり上映形式としても浸透し、高いパフォーマンスを残す「ジャンル」と化してきています。
◆なぜ応援上映は強い? 大々的にスクリーンを占有されても負けない強み
なぜこういった応援上映形式の作品が揃ってロングラン上映を成功しているのか? その理由として、限られた上映回でも確実に高い集客が見込めることが映画館側としても重宝していることが挙げられます。
応援上映形式の作品は、その他の作品とは違って映画のストーリーなどを知っていても楽しめるようにできているどころか、むしろ展開を知っているからこそ応援のポイントなどが把握できてより楽しめるといった特徴があります。
ストーリーが明らかになっていたとしても、何度でも楽しみやすい作品です。そのおかげでリピーターとして観に来るお客さんが多く、どれだけ公開開始から期間が空いていても客足の減少はその他の作品に比べてもペースが遅いのです。
しかも上映回数が絞られれば絞られるほど、わずかな上映回数にお客さんが集中することになります。応援上映形式の強みは、来場者の人数が多ければ多いほど盛り上がりやすく、より楽しい体験が得られやすいことです。
『鬼滅の刃』に限らず、話題作の上映が始まるとどうしても映画館としては先行して公開された映画の上映枠を新作に譲っていかざるを得ないのですが、応援上映に注力している作品群は上映回数が絞られれば絞られるほど、その上映にリピーターが集まりやすくより盛り上がるというシナジーが発生します。
大手シネコンでは毎週毎週と新たな映画が上映され、どの作品をどの時間帯に一日何回上映するのかという上映編成に四苦八苦しているわけですが、わずかな上映回数でも確実一定数のお客さんが足を運ぶという点でも、上映回を設けてもらいやすいです。興行側としても扱いやすい作品というところが、応援上映形式の映画のロングランにつながっています。
こういった結果を踏まえるとまだまだ来年以降も同形式の作品は増えていくでしょう。映画を“観る”というよりも“参加する”という体験性が今後の映画では、どんどん強まっていくのかもしれません。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:『「KING OF PRISM-Your Endless Call-み~んなきらめけ!プリズム☆ツアーズ」キービジュアル ⒸT-ARTS/syn Sophia/エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/KING OF PRISM Project © T-ARTS / syn Sophia / テレビ東京 / PSプロジェクト ©T-ARTS / syn Sophia / ILPP』