最終回直前に大統領が放送禁止を宣言し、子供たちが肩を落とした──。日本発のロボットアニメには、海外で爆発的な人気を生んだ作品が存在します。視聴率100%という驚異の記録を打ち立てた作品、世界的自動車メーカーがCMに主題歌を起用した作品まで、日本以上に社会を揺るがしたアニメの軌跡をたどってみましょう。
◆最終回直前、大統領が「放送禁止」を電撃宣言──『超電磁マシーン ボルテスV』
1977年に日本で放送が始まった『超電磁マシーン ボルテスV』(以下、『ボルテスV』)は、フィリピンで国民的アニメとして今も根強い人気を誇っています。
『ボルテスV』がフィリピンで放送を開始した1978年以前、同国のアニメはほぼアメリカ作品一色でした。そこに登場した日本のロボットアニメは、フィリピンの子供たちにとって衝撃以外の何ものでもなく、最高視聴率58%という好成績を叩き出しました。
アニギャラ☆REW編集長、水野ウバの友人の元フィリピンパブ嬢、リタさん(仮名・56歳、日本在住歴30年以上)は、『ボルテスV』は毎日放送されていたこともあり、学校が終わると走って家に帰り、一目散にテレビに駆け寄ったと、当時を振り返えって話してくれました。
子供たちが勉強そっちのけでテレビに釘付けになる状況は社会問題にまで発展し、当時の大統領フェルディナンド・マルコス氏がついに放送禁止の措置に踏み切りました。しかもそのタイミングは、最終回の直前。当時の子供たちの落胆ぶりは相当なものだったといいます(放送禁止の理由については「内容が暴力的で道徳的ではない」など諸説あります)。
待ちに待った最終回が放送されたのは、コラソン・アキノ氏が1986年2月に大統領に就任した直後のこと。当時の子供たちはようやく物語の結末を見届けられました。
2023年には全80話のテレビドラマ『Voltes V Legacy』として映像化されるなど、『ボルテスV』はフィリピンで今も愛され続けています。
◆平均視聴率75%、最高視聴率は驚異の100%──『UFOロボ グレンダイザー』
日本でも幅広くメディアミックス展開されてきた『UFOロボ グレンダイザー』(以下、『グレンダイザー』)ですが、海外での人気は日本人の想像をはるかに超えます。
フランスでは『Goldorak(ゴルドラック)』と改題され、1978年7月、子供たちの夏休みに合わせて放送がスタート。世代別の視聴率集計では平均75%、最高視聴率100%という前代未聞の記録を打ち立てました。
当時のフランスはチャンネル数が少なく、子供向け番組も充実していなかったという時代背景があるにしても、これだけ多くの子供たちを熱中させた作品であることに変わりはありません。
2021年にフランスで行われた『グレンダイザー』46周年イベントの展示会には、1ヵ月半の会期で約2万5000人のファンが詰めかけました。
中東諸国でも絶大な支持を集め、イラクでは「国民が唯一、ともに共感し一致できる話題は、サッカーかグレンダイザーだ」と言われるほど浸透しました。
2022年にサウジアラビアで行われた「リヤド・シーズン2022」では、高さ33mの等身大グレンダイザーが制作され、「世界最大の架空キャラクターの金属製彫刻」としてギネス世界記録に登録されています。
◆世界的自動車メーカーがCMに主題歌を起用──『鋼鉄ジーグ』
1975年に日本で放送されたのち海外輸出が始まった『鋼鉄ジーグ』も、特にイタリアで社会現象を引き起こしました。
1979年の放送開始から国民的な人気を誇り、水木一郎さんが歌う主題歌「鋼鉄ジーグのうた」はイタリアで多くのアーティストがカバーし、独自のアレンジ曲を発表しています。
さらにイタリアの自動車メーカー・ルノーがこの主題歌をCMに採用したことは、日本でもネットを中心に大きな話題となりました。
2017年には『鋼鉄ジーグ』をモチーフにしたイタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーク』が公開されヒット。メガホンを取ったガブリエーレ・マイネッティ監督自身も、子供のときにこの作品を観て育った世代で、「子供たちは、ジーグのうたで正義を学んだ」と2017年5月の産経新聞のインタビューで語っています。映画のエンディングテーマには「鋼鉄ジーグのうた」のバラードアレンジが採用され、作品への深い愛情がにじみ出ています。
──これらのロボットアニメが海外で爆発的な支持を集めた背景には、当時の時代状況も影響しているでしょう。しかし、巨大ロボットが正義のために戦う姿に胸を熱くする感覚や、ロボットを取り巻く人間ドラマに引き込まれる気持ちは、国境を越えて共通するものがあるのかもしれません。
〈文/士隠カンナ〉
《士隠カンナ》
1990年〜2000年代に放送されたアニメに中学・高校の頃にどっぷりとハマり、その後フリー編集・ライターに。主にアニメ・漫画のムック本のブックライターとして活動中。最近のマイブームはもっぱら『ちいかわ』。
※サムネイル画像:Amazonより 『DVD「超電磁マシーン ボルテスV 」VOL.1(発売元:東映ビデオ株式会社、販売元:東映株式会社)』


