テレビや映画で活躍する芸能人が、アニメの収録現場に立っていたとしたら──。実はそれほど珍しいことではなく、著名な俳優・タレントたちが声優として作品に参加してきた歴史があります。知らずに見ていたあのアニメに、意外な顔ぶれが揃っていたかもしれません。
◆上戸彩さん──工藤新一とつながりのあった芸能人
上戸彩さんは2024年公開の映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』でルルン役を担当したほか、2007年の劇場アニメ『ピアノの森』では一ノ瀬海を演じました。また、長寿アニメ『名探偵コナン』にも出演しています。
『名探偵コナン』での出演は特に印象的です。2006年放送の第437話「上戸彩と新一 4年前の約束」では、上戸さんが本人役として登場。工藤新一の父・優作が手がけた「女子高生探偵ユキの事件簿」に主演したという設定で、コナンと蘭のもとを再び訪ねる役どころでした。このゲスト出演は、同年公開の劇場版『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』の宣伝活動とも連動していました。
さらにその縁が続き、2018年の劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』にも出演。毛利小五郎の弁護を担う弁護士・橘境子という重要な役を演じており、上戸さんの表現の幅の広さが光るキャスティングといえます。
◆香取慎吾さん──『赤ずきんチャチャ』にレギュラーで参加
香取慎吾さんは1994年放送のアニメ『赤ずきんチャチャ』で、主人公チャチャのボーイフレンドにして狼男の少年・リーヤを演じました。ヒロインと密接にかかわるキャラクターのため出番も多く、同じく魔法使いのたまごであるしいねを交えた三角関係も見どころの一つでした。
また、チャチャが変身するマジカルプリンセスのシーンには、リーヤとしいねが欠かせない存在として登場します。この変身ヒロイン要素はもともと原作漫画には存在せず、当時人気を博していた『美少女戦士セーラームーン』の影響を受けて取り入れられたものとされています。
リーヤはファンからも支持されていましたが、後年発売のゲーム版では香取さんの声が使われず、別の声優に差し替えられています。二次使用の許諾が取れなかったためではないかともいわれていますが、詳細な経緯は明らかになっていません。
◆仲間由紀恵さん──台詞は少なくとも欠かせない役
ドラマ『TRICK』シリーズや『ごくせん』シリーズで広く知られる仲間由紀恵さんは、劇場版アニメ『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』(以下、『ナデシコ』)にラピス・ラズリ役で出演しました。
ラピスはテレビ版の主人公テンカワ・アキトを支える重要な存在ですが、セリフの量は多くなく、仲間さんは収録時間よりもインタビューや取材対応に費やした時間のほうが長かったと明かしています。
『ナデシコ』は『スーパーロボット大戦』シリーズにもたびたび登場していますが、香取さんと同様に、仲間さんがゲームでラピスの声を担当したことはありません。
また仲間さんは『ナデシコ』より前に、テレビアニメ『HAUNTEDじゃんくしょん』でヒロインの朝比奈睦月役を演じていました。お金に厳しく美少年好きという個性的なキャラクターを仲間さんが演じていたという事実は、当時を知らない人には驚きかもしれません。
◆松たか子さん──エルサ役の前は少年を熱演
2006年公開の長編アニメ映画『ブレイブ ストーリー』には、松たか子さんや大泉洋さんら多彩な俳優陣が声優として参加しました。
松たか子さんといえば『アナと雪の女王』のエルサ役で声の演技でも高い評価を得ていますが、『ブレイブ ストーリー』では主人公の三谷亘という少年の声を担当していました。
少年役を女性が演じること自体は珍しくありませんが、松さんの場合は聴いただけでは本人と分からないほどで、プロの声優と比べても遜色ない表現力を見せています。
ディズニープリンセスから少年まで演じ分けられるその振り幅は、芸能界においても貴重な存在であることを示しています。
◆満島真之介さんと土屋太鳳さん──一人の人物をふたりで表現
テレビアニメ『僕だけがいない街』では、主人公・藤沼悟の成人期を満島真之介さんが、少年期を土屋太鳳さんが担当するというユニークな構成が採用されました。
タイムリープを軸にした物語の中では、少年の体に戻った主人公のモノローグと少年期の声が重なる演出があり、ふたりの声が一つの人格を形作ることでキャラクターに独自のリアリティをもたらしていました。
土屋さんはその後、ハリウッド映画『バンブルビー』で主人公チャーリーの日本語吹き替えを担当しており、声の仕事においても実力が認められていることが分かります。満島さんもアニメ映画『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』で佐渡モリオ役を演じるなど、声優としての活動を続けています。
──昔見ていたアニメの声優欄まで確認していた人は、そう多くないかもしれません。何気なく聞いていたあの声が、実は今をときめく芸能人のものだったという発見は、作品への新たな興味につながります。そして今見ているアニメの中から、次世代のスターが生まれてくる可能性も十分にあるのです。
〈文/相模玲司〉
《相模玲司》
大学卒業後、編集プロダクションに入社。メンズファッショ誌の編集に従事したのち、フリーランスの編集・ライターとして独立。アニメ・漫画関連のムック本の制作や、週刊誌のWeb版でアイドルの取材記事やサブカルチャー記事の作成に携わる。
※サムネイル画像:Amazonより 『「赤ずきんチャチャ DVD-BOX VOL.1」(販売元:キングレコード)』



