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※この記事には複数の作品のネタバレが含まれます。ご注意ください。

 名作として語られる漫画ほど、最終回の印象は強く残ります。きれいに着地した作品がある一方で、あまりに独特な幕引きによって、連載終了後も語り草になった作品もあります。物語と関係ないように見える一言、作者本人の登場、最後まで明かされない正体、そして“未完”を思わせる見開き。読者をざわつかせた異色のラストを振り返ります。

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◆パン漫画のラストに、なぜダルシムが出てきたのか

 『焼きたて!!ジャぱん』の最終回は、今でも「忘れられないラスト」として名前が挙がりやすい作品です。パン職人を目指す少年たちの物語でありながら、最後に読者を待っていたのは、ゲーム『ストリートファイター』のダルシムを思わせる姿と「なんやて!?」という強烈な一言でした。

 もちろん、完全に脈絡なく登場したわけではありません。物語終盤では、主人公の友人・河内恭介がギャグ展開の中でダルシムのような姿になり、そのまま元に戻れなくなる流れが描かれています。パン職人としての道から外れ、格闘ゲームの世界へ向かうような展開は、作品後半のシュールさを象徴するものでもありました。

 とはいえ、パン作りをテーマにした作品の締めくくりとして見ると、かなり思い切った終わり方です。本筋の感動的な決着を想像していた読者ほど、そのズレに戸惑ったかもしれません。だからこそ、たんなる変化球では終わらず、ネット上で長く語られる“伝説的な最終回”として記憶されているのでしょう。

 作者の橋口たかしさんは過去に『コロコロコミック』で『ストII爆笑!!4コマギャグ外伝』を手がけていたこともあり、ダルシムネタには作者自身の歩みと重なる部分もあります。唐突に見えるラストにも、知る人には別の味わいがあるのかもしれません。

◆最終回で作者まで登場した『幕張』の自由すぎる幕引き

 『幕張』は、連載中から実在の人物や人気漫画のパロディを大胆に取り込む、かなり攻めたギャグ漫画でした。その作風は最終回でも変わらず、主人公・塩田鉄人の正体にまで意外なオチが用意されています。

 作中では、塩田の正体が『とっても!ラッキーマン』の作者である漫画家・ガモウひろしさんだったという、かなりメタな展開が描かれました。さらに、作者や制作陣も物語内に登場し、最終回を迎える事情にまで踏み込むような場面が続きます。

 おまけ漫画で作者が登場することは珍しくありません。しかし、本編の終盤で作者自身が前面に出て、制作現場の空気までネタにする展開はかなり異例です。読者にとっては、作品世界の外側まで巻き込まれたような、不思議な読み心地が残ったはずです。

 当時の『週刊少年ジャンプ』巻末コメントに記された「俺は自由だ!」という言葉も、本編の内容と合わせて印象を強めています。物語をきれいに閉じるというより、最後まで『幕張』らしい無軌道さを貫いた終わり方だったといえます。

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◆最後の最後で正体を見せかけた『ピューと吹く!ジャガー』

 『ピューと吹く!ジャガー』の最終回は、ギャグ漫画ならではの“肩透かし”が効いた終わり方でした。読者が長年見慣れていたジャガーさんの顔や髪型に、最後の最後で疑問を投げかける展開になっています。

 普段のジャガーさんの目は、細い線が重なったように描かれていました。しかし最終回では、少女漫画のような大きな目を開き、これまで見えていたものが本当に“目を開いた状態”だったのか分からなくなります。さらに、特徴的なオレンジ色のとんがりヘアーも、実は本物ではなかったことが明かされました。

 そこからさらに、顔そのものまで作り物だったのではないかと思わせる流れになり、真の姿が明かされる直前で物語は幕を閉じます。長く作品を読んできた読者ほど、「結局、ジャガーさんとは何者だったのか」と置き去りにされたような感覚を味わったのではないでしょうか。

 ただし、このモヤモヤは作品の魅力ともつながっています。すべてを説明しないまま、最後までジャガーさんを“よく分からない存在”として残したことが、むしろ本作らしい余韻を生んでいるようにも見えます。

◆“プリンセスハオ”で語り草になった『シャーマンキング』

 『シャーマンキング』の連載当時の最終回は、読者に強烈な印象を残しました。ハオとの決着へ向かう流れの中で、最後に大きく描かれたのは、お姫様の姿をしたハオと「プリンセスハオ」の文字だったからです。

 直前まで、まん太とアンナの会話や、夢の中に現れるハオ、葉のもとに集う仲間たちの描写によって、いよいよ大きな決着が描かれるような空気がありました。その流れからの見開きは、当時の読者にとって相当なインパクトだったはずです。

 最終回の扉絵では、葉が“未完”を連想させる蜜柑を持っていたことも知られています。物語がまだ終わりきっていないことを示すような演出に、作者の無念を感じた読者も少なくなかったでしょう。

 その後、『シャーマンキング』は完全版コミックスで加筆され、本来の決着へとたどり着きました。さらに続編やアニメ展開も続き、作品は新たな形で読者の前に戻ってきています。だからこそ、連載当時の“プリンセスハオ”は、作品の紆余曲折を象徴する場面として、今も語られ続けているのかもしれません。

 

 ──物語の最終回には、読者が納得する結末を求められがちです。しかし、予定調和から外れたラストだからこそ、何年たっても話題になる作品もあります。『焼きたて!!ジャぱん』の唐突なギャグ、『幕張』のメタな仕掛け、『ピューと吹く!ジャガー』の正体不明感、『シャーマンキング』の未完を思わせる余韻。それぞれの終わり方には、作品の個性が強く刻まれていました。

 もちろん、読者としては納得できる結末を見届けたいものです。それでも、ざわつきや戸惑いまで含めて記憶に残るのが、漫画という表現の面白さでもあります。連載を追いかけ、単行本を手に取り、好きな作品を応援すること。その積み重ねが、物語をよりよい形で完走させる力になるのかもしれません。

〈文/士隠カンナ〉

《士隠カンナ》

1990年〜2000年代に放送されたアニメに中学・高校の頃にどっぷりとハマり、その後フリー編集・ライターに。主にアニメ・漫画のムック本のブックライターとして活動中。最近のマイブームはもっぱら『ちいかわ』。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「焼きたて!!ジャぱん」第9巻(出版社:小学館)』

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