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 長く愛される漫画ほど、物語が進むうちに「そういえば、あの設定はどうなった?」と思わせる場面が出てきます。初登場時だけ強く印象づけられた能力や弱点が、後半ではほとんど触れられなくなることもあります。

 もちろん、それは作品の粗というより、連載の方向性が変化し、キャラクターが成長していく中で生まれる“味”でもあります。ここでは、読者の間で今も話題になりやすい「初期設定の行方」を振り返ります。

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◆飛影は全身に目を浮かべる妖怪姿になっていた 『幽☆遊☆白書』

 『幽☆遊☆白書』の飛影といえば、額の邪眼、黒龍波、そして寡黙でクールな立ち回りを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、初登場時の飛影は、後年のイメージとはかなり違う姿を見せていました。

 飛影は蔵馬、剛鬼とともに魔界の宝を盗んだ人物として登場し、幽助と対決します。その戦いの中で、額だけでなく体中にいくつもの目を浮かべた妖怪のような姿へ変化しました。さらに、その目には相手の動きを封じる力があり、幽助を金縛りにしたうえで空中へ持ち上げるような場面も描かれています。

 敵を拘束できる便利な能力にも見えますが、原作漫画ではその後、暗黒武術会などの大きな戦いで同じ変身や金縛りを使う場面はほとんどありません。アニメでは空想や特殊な状況で触れられたことはあるものの、飛影の主要な戦闘スタイルとして定着したわけではありませんでした。

 初期の飛影は、現在のクールな人気キャラ像とは違い、感情をむき出しにした言動も目立ちます。だからこそ、初登場時を振り返ると「この頃の飛影、だいぶ違う」と感じる読者が多いのかもしれません。

◆キン肉マンの弱点だった古傷と牛乳 『キン肉マン』

 『キン肉マン』では、主人公のキン肉マンに分かりやすい弱点が設定されていました。その一つが、幼い頃のケガによって残った左脇腹の古傷です。

 キン肉マンは、3歳のときに三輪車で遊んでいた際、竹やぶに落ちて左脇腹を負傷しました。その古傷は大人になってからも弱点として残っており、軽く蹴られただけでも苦しむほどでした。ウォーズマン戦では、コンピューター能力によってこの弱点を見抜かれ、左脇腹を攻められる展開も描かれています。

 ところが、その後の対戦相手たちがこの弱点を集中的にねらう場面はあまり多くありません。試合を左右するほどの急所であれば、もっと使われてもおかしくない設定ですが、物語が進むにつれて存在感は薄れていきました。

 さらに、キン肉マンには「牛乳が苦手」という弱点もありました。ニンニクで力を出す彼にとって、におい消しの効果を持つ牛乳は相性が悪く、頭からかけられるだけで弱ってしまいます。こちらも戦術としてはかなり有効に見えますが、のちのバトルで繰り返し使われることはありませんでした。

 ギャグ色の強い初期から本格的な超人バトルへ移っていく中で、弱点の扱いも自然と変わっていったのでしょう。

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◆天津飯にかめはめ波が効かない設定 『ドラゴンボール』

 『ドラゴンボール』初期の天津飯には、「かめはめ波が効かない」という強烈な設定がありました。

 天津飯は、亀仙流と対立する鶴仙流の門下生として登場します。天下一武道会でヤムチャが放ったかめはめ波に対し、天津飯は「気合い返し」で跳ね返しました。さらに、悟空との決勝戦では、亀仙人が「あの天津飯というやつ、かめはめ波そのものがきかんのじゃ。大小に関係なくな」と説明しています。

 この言葉だけを聞けば、天津飯はかめはめ波系の技に対して非常に強い耐性を持つキャラクターに見えます。しかし、物語が進み、敵の規模が大きくなるにつれて、この設定が前面に出る場面は少なくなりました。

 とくにセル編では、太陽系を吹き飛ばすほどのかめはめ波を撃とうとするセルに対し、天津飯が気合い返しで対処する展開は描かれませんでした。もちろん、初期とは技の規模も戦力差もまるで違います。とはいえ、読者の中には「そういえば天津飯なら跳ね返せるのでは」と思った人もいたはずです。

 初期設定をそのまま持ち込むと、後半の緊張感が崩れてしまう場合もあります。天津飯のかめはめ波耐性は、その代表的な例といえるかもしれません。

◆サクラの幻術タイプ設定はどこへ 『NARUTO -ナルト-』

 『NARUTO -ナルト-』の春野サクラには、初期から「幻術に向いている」という評価が与えられていました。少年編では、担当上忍のカカシがサクラに幻術の才能があると語り、青年編でも「本来幻術タイプ」と評しています。

 そのため、読者の中には、いずれサクラが幻術系の大技を習得するのではないかと期待した人もいたでしょう。しかし本編でのサクラは、綱手のもとで医療忍術と怪力を磨き、前線で戦える医療忍者として成長していきます。結果的に、幻術を主軸に戦う姿はあまり描かれませんでした。

 この点については、チャクラコントロールの高さが医療忍術に活かされたと考えることもできます。幻術向きという評価が完全に消えたのではなく、別の才能として開花したと見る方が自然です。

 一方で、もし幻術設定が本格的に使われていれば、桜吹雪のような幻を操るサクラの戦いが見られたかもしれません。画面映えするキャラクターデザインとも相性がよく、想像すると惜しさも残ります。

 

 ──初期設定が後半で目立たなくなるのは、長期連載ならではの現象です。物語が広がり、バトルの規模が変わり、キャラクターの役割が変化する中で、使われなくなる設定が出るのは自然な流れともいえます。

 ただ、その“消えた設定”を振り返ると、作品がどのように方向転換し、キャラクターがどんな形で読者に受け入れられていったのかも見えてきます。忘れられたように見える初期設定は、連載の歴史を感じさせる小さな足跡なのかもしれません。

〈文/秋山緑 編集/相模玲司〉

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「幽★遊★白書 完全版」第4巻(出版社:集英社)』

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