※本記事はアニメ『機動戦士Ζガンダム』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。
百式は、名前負けした機体だったのでしょうか。1年足らずで大破した一方で、改修のしやすさや扱いやすさに目を向けると、「100年保つ」という名に別の意味が見えてきます。
◆名前負け? 100年どころか1年持たなかった百式の悲劇
百式は、アニメ『機動戦士Ζガンダム』にて、クワトロ・バジーナに名前を変えた、シャア・アズナブルの搭乗機として登場。書籍 『NEWTYPE 100% COLLECTION 機動戦士Zガンダム メカニカル編 Vol.1』(出版社:角川書店、1985年10月31日)によると、「RMS-099」リック・ディアスの次に開発されたため、型式番号には100の数字が与えられました。
それに合わせて、開発者のM・ナガノ博士が「100年保つモビルスーツ」という願いを込めて、百式と命名しています。しかし、開発者の願いとは裏腹に、本機が迎えた結末はあまりに無惨なものでした。
2001年に発売されたプラモデル『マスターグレード MSN-00100 百式』の説明書によると、当初本機は可変機として開発されていたものの、フレームの強度問題が解決できませんでした。その後、可変機としての開発は断念されたものの、機体のポテンシャルの高さから、非可変のモビルスーツとして完成しています。
そうした経緯もあって、実践配備された当初は、かなりの高性能機として活躍しました。しかし、本機が誕生したグリプス戦役はモビルスーツの進化が目覚ましく、次々に最新鋭のモビルスーツが誕生します。
そして、グリプス戦役終盤には、キュベレイやジ・Oなどの、ニュータイプが駆る機体には太刀打ちできなくなっていました。最終決戦でも奮闘はしたものの、最後はキュベレイによって四肢を破壊され大破。命名から1年も保たずに、ボロボロになって戦線を離脱してしまいます。
『機動戦士ガンダムZZ』の舞台となる第一次ネオ・ジオン抗争でも投入され、ZZガンダムとともにガンダムチームを結成しますが、すでに型落ち機となっているため、目立った活躍はできませんでした。
◆実は100年戦う気満々だった? 百式改から見られる百式に汎用性
アニメ『機動戦士Zガンダム』、『機動戦士ガンダムZZ』を見る限り、百式は「100年保つ」ようなモビルスーツには見られません。しかし、百式の真価はその性能ではなく、拡張性の高さにあります。
それを体現したのは、雑誌『B-CLUB No.3』(出版:バンダイ出版、1985年12月20日出版)にて初登場した百式改です。本機は『Z-MSV』の1機で、雑誌『B-CLUB No.4』(出版:バンダイ出版、1986年3月1日出版)によると、エゥーゴの現行モビルスーツの強化を目的とした計画から生まれています。
グリプス戦役以降はモビルスーツの進化が加速したため、時代の推移にあわせて現行のモビルスーツを強化する必要がありました。書籍『Mobile Suit Gundam - MSV The Second - Generation 1986-1993』(出版社:双葉社、2019年10月19日)によると、本機はオリジナルの百式から、軽量化、推進力、運動性、火力の強化がされています。
たとえば、頭部にはパルスレーザー砲や、肩部に設置されたハードポイントが増設され、同時期に開発中の各主兵装の装備が可能となりました。また、バックパックとバインダーが、増加モーメント型高移動バーニアスタビライザーへと変更され、推進力、運動性が大幅に向上しています。
このように、原型機から大幅に改修されているものの、その作業は比較的用意だったようです。それは百式の再設計が比較的容易だったことに起因しています。書籍『Mobile Suit Gundam - MSV The Second - Generation 1986-1993』では、この改修の容易さを指して、「100年通用するモビルスーツ」というコンセプトを体現しているとも説明されていました。
つまり、ベースとなった百式の「100年通用する」というコンセプトは戦闘力ではなく、時代に合わせた改修ができる、拡張性の高さを指していたのでしょう。
◆皮肉な予言の的中──技術の衰退が「百式」を現役に戻した?
百式の「100年戦える」というコンセプトは、宇宙世紀150年以降の社会情勢によって現実味を帯びることになります。
漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST 』第1巻によると、『機動戦士Vガンダム』の舞台である宇宙世紀0153年以降、地球連邦の弱体化によって、コロニー間の争いが活発になっていきました。
これにより人々の生活は不安定になり、技術力は低下していきました。そして、百式誕生から85年後となる、約宇宙世紀0170年頃にはモビルスーツ関連の技術を維持できなくなります。
結果、最新鋭機ではなく整備しやすい、旧型のモビルスーツの価値が見直され始めました。そのため、同時代では過去の機体をレストア、もしくは複数の機体をミキシングしたモビルスーツの運用が台頭しています。
また、ビーム兵器もかなり貴重になっており、標準でビームを搭載しているジオンの水陸両用機体が重宝されているほどです。こうして、技術が衰退した宇宙世紀0170年頃であれば、百式のように拡張性が高く、可変機構を持たないシンプルな機体は、むしろ重宝されるのではないでしょうか?
──最新鋭機から型落ちへ、そして技術衰退後の貴重な戦力へ。百式が辿った数奇な運命は、開発者の願いが性能ではなく、扱いやすさという形で結実したことを示しているのでしょう。
〈文/北野ダイキ(ガンダム担当ライター)〉
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「HGUC 1/144 百式」(C)SOTSU・SUNRISE』

