※この記事には複数の作品のネタバレが含まれます。ご注意ください。
やさしい絵柄だからといって、物語までやさしいとは限りません。むしろ、かわいらしいキャラクターが過酷な状況に置かれるからこそ、視聴後に強く残る作品があります。『がっこうぐらし!』『魔法少女まどか☆マギカ』『メイドインアビス』は、見た目とのギャップで多くの視聴者を引き込んだ代表的なアニメといえるでしょう。
◆学校で暮らす少女たちに隠された真実──『がっこうぐらし!』
一見すると、『がっこうぐらし!』は明るい学園日常アニメのように見えます。学校で寝泊まりする少女たち、部活動のような空気、かわいらしいキャラクター。初見の視聴者ほど、ほのぼのとした作品だと受け取ったかもしれません。
しかし、第1話の終盤でその印象は大きく変わります。彼女たちが暮らしている学校の外には、穏やかな日常とはまったく違う現実が広がっていました。作品がそれまで隠していた世界の姿が明らかになることで、かわいい絵柄との落差が一気に視聴者へ迫ってきます。
本作が印象的なのは、たんに怖い場面を見せるだけではない点です。少女たちが日常を守ろうとする姿や、心が追い詰められていく描写がていねいに積み重ねられます。そのため、ショックだけで終わらず、「なぜ彼女たちはそう振る舞っているのか」と先を確かめたくなる構成になっていました。
放送当時、第1話の仕掛けは大きな話題になりましたが、時間がたった今でも語られる理由は、意外性だけではありません。日常の形をした避難場所が、実はとても不安定なものだったという構造が、作品全体に切なさを残しているからでしょう。
◆魔法少女ものの約束を揺さぶった──『魔法少女まどか☆マギカ』
『魔法少女まどか☆マギカ』も、見た目の印象だけで判断すると大きく裏切られる作品です。蒼樹うめ氏による柔らかなキャラクターデザイン、魔法少女という題材から、明るく前向きな物語を想像した人も少なくなかったでしょう。
ところが、物語は第3話を境に一気に緊張感を増していきます。魔法少女が敵を倒して平和を守るというお決まりの構図は崩れ、契約や願いの裏側にある重い現実が少しずつ見えてきます。かわいらしいビジュアルがあるからこそ、その世界の冷たさがより際立つのです。
この作品が強く残るのは、残酷な展開を見せるためだけに作られているわけではないからです。少女たちが何を願い、何を失い、それでも何を選ぶのか。その問いが最後まで物語を引っ張っていきます。見た目と中身の差は、視聴者を驚かせる仕掛けであると同時に、作品のテーマを深く刻むための装置でもありました。
今年の8月には新作映画『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』の公開も予定されており、今なお本作への関心は続いています。最初の印象を裏切りながら、長くファンの心に残り続ける力を持った作品だといえるでしょう。
◆かわいい冒険の先に待つ過酷な深淵──『メイドインアビス』
『メイドインアビス』は、絵柄だけを見れば少年少女が未知の世界へ進んでいく冒険ファンタジーに見えます。リコとレグの姿も愛らしく、巨大な縦穴「アビス」を探索する設定には、ワクワクするような魅力があります。
しかし、物語が進むにつれて、アビスはただの冒険の舞台ではないことが分かっていきます。下へ進むほど帰還は難しくなり、身体にも精神にも重い負荷がかかる場所です。かわいらしいキャラクターが過酷な環境にさらされることで、視聴者は美しい世界の裏側にある危うさを強く意識させられます。
とくにナナチとミーティの過去は、多くの視聴者に深い印象を残しました。痛ましい出来事でありながら、そこにはたんなる暗さだけではなく、相手を思う気持ちや救いを求める切実さがあります。だからこそ、目を背けたくなる場面でありながら、簡単には忘れられないのです。
『メイドインアビス』は、今年の10月に劇場シリーズ第1部『「メイドインアビス」 目覚める神秘』の公開が予定されています。かわいい絵柄と過酷な物語のギャップは、今後も多くの視聴者を惹きつける要素になりそうです。
──かわいい絵柄のアニメには、安心して見られる作品もたくさんあります。しかし、その印象をあえて利用し、視聴者の感情を大きく揺さぶる作品もあります。『がっこうぐらし!』『魔法少女まどか☆マギカ』『メイドインアビス』は、見た目のかわいさと物語の重さがぶつかることで、ただ怖いだけではない忘れがたい余韻を残した作品といえるでしょう。
〈文/秋山緑 編集/相模玲司〉
※サムネイル画像:Amazonより 『Blu-ray「魔法少女まどか☆マギカ(完全生産限定版)」(販売元:アニプレックス)』

