※この記事には複数の作品のネタバレが含まれます。ご注意ください。
物語の主役カップルや定番の相手ばかりに目を向けていると、見落としてしまう関係があります。『セーラームーン』の火野レイと地場衛、『シャーマンキング』の道蓮とアイアンメイデン・ジャンヌなど、振り返ると「その組み合わせだったのか」と驚くつながりが描かれていました。意外な関係ほど、キャラクターの別の顔を浮かび上がらせます。
◆火野レイと地場衛、うさぎが気にした“昔の関係”
『美少女戦士セーラームーン』といえば、月野うさぎと地場衛の恋が物語の大きな軸になっています。けれどもTVアニメ版では、衛がうさぎと結ばれる前に、火野レイと近い距離にいた時期が描かれていました。
第15話「うさぎアセる! レイちゃん初デート」では、初対面で衛にからかわれたうさぎが反発する一方、レイは衛に好意を持ち、積極的に近づいていきます。偶然を装って接点を作り、デートにこぎつける流れは、レイらしい勢いのある行動でした。
この関係は、どちらかといえばレイの片思いに近いものです。それでも、のちの『美少女戦士セーラームーンSuperS』第136話「衛を守れ! 忍者うさぎのヤキモチ」では、亜美が「昔レイちゃんと付き合っていた」と口にしており、周囲の認識としては“過去の交際”のように扱われていました。
さらに面白いのは、その話を未来から来たちびうさが聞いてしまう点です。将来の父と母を知っている彼女にとって、衛とレイの過去はかなり気まずい情報だったはずです。うさぎが忍者姿でレイの家を見張りに行く展開も含め、恋愛要素とギャグの混ざり方がTVアニメ版らしい味になっています。
◆道蓮とメイデン、接点の少なさが逆に気になる結婚
『シャーマンキング』の道蓮は、初期には冷酷なライバルとして登場しました。気に入らない相手には容赦せず、他人を簡単には信用しない人物だっただけに、彼が後に家庭を持つ姿は大きな変化として映ります。
完全版の終盤では、蓮に息子がいることが明かされます。ただし、その時点では母親が誰なのかははっきりしていませんでした。その後、『SHAMAN KING CHARACTER BOOK 原色魂図鑑』(出版社:講談社、2018年11月出版)で、結婚相手がアイアンメイデン・ジャンヌであることが判明します。
ジャンヌはX-LAWSの象徴的存在であり、蓮とは思想も立場も大きく違うキャラクターです。連載中に濃密な恋愛描写があったわけではないため、判明時に驚いた読者も多かったのではないでしょうか。
それでも、息子・黽の名前には蓮とメイデンから一字ずつ取ったような意味があり、髪や瞳にも母親の面影が見られます。冷たく尖っていた蓮が、子を大切にする父になったことを考えると、この意外な組み合わせは彼の成長を象徴する関係だったともいえます。
◆まつざか先生と川口、すれ違いで終わった惜しい恋
『クレヨンしんちゃん』のまつざか梅といえば、行田徳郎との悲恋を思い出す人が多いかもしれません。しかしその前に、野原ひろしの部下・川口と良い雰囲気になった時期がありました。
「忘年会で盛り上がるゾ」では、同じ店で忘年会をしていた川口が、まつざか先生に好意を抱きます。その後「デートの見物だゾ」では、二人が実際にデートをする展開になり、かなり順調に見える場面もありました。
ところが、まつざか先生のプライドの高さが思わぬ形で関係を壊します。しんのすけに川口のことを聞かれたまつざか先生は、同僚にからかわれる姿を想像してしまい、本心とは違う強がりを口にしてしまいました。
その言葉を、近くにいた川口が聞いていたのです。川口は静かに身を引き、まつざか先生は理由が分からないまま失恋することになりました。ギャグ作品らしい流れではありますが、ほんの少し素直になれていれば違う未来もあったのでは、と感じさせる関係です。
◆金田とあゆみ、問題児が見せた意外な夫婦愛
『地獄先生ぬ~べ~』では、続編『地獄先生ぬ~べ~NEO』でかつての生徒たちのその後が描かれています。その中でも意外性が強いのが、クラスの問題児だった金田勝と、同級生の木下あゆみの結婚です。
金田は小学生時代、問題児として描かれていました。一方のあゆみは病弱な少女で、当時の二人を知っている読者ほど、この夫婦関係に驚いたはずです。
しかし大人になった金田は、あゆみを支える夫になっていました。出産時にあゆみの命が危険にさらされると、金田は自分の体力を分けてあげたいと涙を流します。その姿を見たぬ~べ~は、霊能力で金田をあゆみに憑依させ、二人で出産の苦しみを乗り越える形へと導きました。
かつての問題児が、誰かを守る側へ変わっていたことが分かる場面です。意外な結婚というだけでなく、人は変われるという続編ならではの温かさがにじむエピソードでした。
──意外な関係は、たんなる小ネタで終わるものではありません。火野レイと地場衛のようにTVアニメ独自の恋愛模様として描かれた関係もあれば、道蓮とジャンヌのように後年の設定で大きな驚きを生んだ関係もあります。
まつざか先生と川口のすれ違い、金田とあゆみの夫婦愛も、それぞれのキャラクターの別の顔を見せる重要な要素でした。思わぬ組み合わせをたどると、作品の中で見過ごしていた人間関係の面白さが、あらためて浮かび上がってきます。
〈文/秋山緑〉
※サムネイル画像:Amazonより 『DVD「美少女戦士セーラームーン Vol.3」(販売元 : 東映ビデオ)』

