『バットマン』シリーズの新たな展開が興味深い。昨年は『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』でスパイダーマンというキャラクターの自由度に驚かされたばかりですが、それに負けじと言わんばかりに“バットマン”ブランドが続々と異色の作品を発表しています。

 バットマンといえばゴッサムシティを舞台に戦うダークヒーローという設定がベースにありますが、その根底から逸脱したような設定のシリーズが続々と発表されています。

◆日本の制作で『スーサイド・スクワッド』を異世界モノに!?

 直近で目立った動きを見せているのが『バットマン』に登場するヴィランの活躍です。実写映画では、今年10月に『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の公開が控えていますが、アニメーションも負けてはいません。

 『SPY×FAMILY』や『王様ランキング』などで知られる日本のアニメーション制作会社・WITスタジオが『異世界スーサイド・スクワッド』を制作。7月5日より放送の開始を予定しています。

 本作は『バットマン』に登場するキャラクターを主に、DCコミックのヴィランたちで構成されたチーム「スーサイド・スクワッド」が、“異世界=ISEKAI”へと送り込まれるという作品。今や放送のない時期がないほど数多くのアニメが制作されている“異世界モノ”ですが、それをまさかの「スーサイド・スクワッド」シリーズでやるという驚きの企画です。

 今作の注目のポイントは、日本制作で「スーサイド・スクワッド」を制作する点。シリーズ構成と脚本には『Re:ゼロから始める異世界生活』の原作者である長月逹平氏と、そのアニメ化の際に脚本で参加している梅原英司氏が共同で名を連ねる『Vivy -Fluorite Eye's Song-』のタッグを再編。さらにキャラクターデザイン原案には『家庭教師ヒットマンREBORN!』の作者である天野明氏を起用し、がっつりと日本ナイズした布陣で制作されます。

 日本のアニメーションの海外での活躍も目覚ましいですが、今作のように海外の人気キャラクターシリーズを日本で制作していく例もどんどん増えていきそうです。

◆ニンジャバットマン復活!“ヤクザリーグ”って何なんだ!

 ヴィランたちだけでなく『バットマン』の日本でのアニメーション化企画も新たに発表されています。

 2018年に公開された日本制作作品『ニンジャバットマン』の新作が発表されました。それが『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』です。

 現在は制作発表と共に『ニンジャバットマン』の制作陣が再集結することとタイトルロゴのみが発表されている状態です。7月4日にロサンゼルスで開催されるAnime Expoではステージイベントが行われることが発表されているので、そこで続報が発表されることに期待したいところです。

 ただ、情報の少ない現時点でもタイトルからして挑戦的。日本人ですらピンと来ないキーワード“ヤクザリーグ”とはなんなのか? 前回の『ニンジャバットマン』も忍者モノ以上の仕掛けがいくつも用意されただけに今回も思わぬ“飛び道具”が用意されていることに期待です。

◆実は以前から縁のあった日本と『バットマン』のアニメーション

 こうして追っていくと『バットマン』を日本でアニメーション化する時流に驚きが感じられますが、『バットマン』を日本が制作する例で言えば、厳密に言えば新鮮な話ではありません。

 たとえば90年代に放送された『バットマン(原題:Batman:The Animated Series)』では、制作を務める海外のアニメーション制作会社の中に、サンライズや現在のトムス・エンタテインメントにあたる東京ムービー新社が名を連ねていたりと、以前より日本の制作会社やクリエイターが『バットマン』のアニメーション制作に携わっていたのです。

 実は『バットマン』に限らず『トランスフォーマー』や『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』など、80年代〜90年代にかけて多くのアメリカのアニメーションに日本の制作会社が参加していました。

 惜しいことに当時のそれらの仕事はあまり大々的に知られる形にならなかったのですが、『バットマン』との縁で言えば以前から既にあったわけです。

 『異世界スーサイド・スクワッド』にしても『ニンジャバットマン』にしてもこうして日本の制作物であること自体が海外に向けても“引き”になるのは嬉しい話です。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『Warner Bros. Japan Anime』より

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