今、中国のアニメーションがすごい記録を樹立しました。今年1月に中国で公開されたばかりのアニメーション映画、『哪吒之魔童閙海』が興行収入140億元(約2900億円)を突破。ディズニー・ピクサーの『インサイド・ヘッド2』の記録を超えて、世界興行収入第1位のアニメーション映画となりました。
日本でも『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来』のヒットなど中国のアニメーションの勢いが感じられるブームが起こりましたが、中国アニメーションの勢力が決定的となる作品がついに登場したと言えます。
そんな中国のアニメーションについて、まさに今どんな作品が作られているのかが体験できるプログラムの無料公開が始まっています。
◆中国の短編アンソロジーシリーズ『Capsules』が無料配信中
中国の動画配信サイト「bilibili」のYouTubeアカウントにて、アンソロジーアニメシリーズ『Capsules(胶囊计划)』の配信が始まりました。
このシリーズは中国内のアニメーション支援プロジェクトとしてスタートしたプログラムで、各々のクリエイターが短編アニメーションをシーズンごとのテーマにそって制作するシリーズです。ここで発表された作品たちは国内だけでなく、海外でも賞を受賞するなど広く活躍しています。
2022年にシーズン1が公開され、昨年12月には最新のシーズン3の配信が始まったのですが、今回はシーズン2までの作品が無料で配信されています。残念ながら日本語の字幕はないのですが、アニメーションという特性から、ビジュアルだけでも楽しめます。
◆国外でも活躍!『Capsules』の注目の作品たち!
今回配信された作品の中でもいくつか注目の作品を紹介しておきます。
『喵十一(Ruthless Blade)』はシーズン2の第1話として発表されたアクション作品。虎のような姿をした主人公が謎の刃物使いと戦います。手描き感のあるテクスチャの3DCGアニメでスピード感のある映像がかっこいいです。
2024年に広島で行われた「ひろしまアニメーションシーズン」にて『ニャオ剣』のタイトルで上映も果たしていたのです、オチまで見るとそのユルそうな邦題も腑に落ちるような、ある真相が分かります。
本作はアニメーションを対象としたアワードである「アニー賞2024」にて、短編アニメーション部門で受賞こそ逃しましたがノミネートを果たしました。
シーズン2の第5話として配信された『亮码吧!爸爸(Dad in the Echo)』も必見。スマートフォンの操作に慣れていない父親に息子がキャッシュレス決済のやり方を指導するという内容なのですが、その様子をSF作品の見せ方にするというアイデアの作品です。
作中では「利用規約に同意しないとアプリが使えない」ことや「偽物の閉じるボタンがある」といった“スマホあるある”がシリアスに出てくるシュールなところも面白いです。
この作品は去年の3月に行われた「東京アニメアワード2024の」『~アジアン季節風~ 中国短編アニメーション作品選』にて『お父さん!キャッシュレスと戦おう!』のタイトルで日本上映も果たしています。いずれも中国内だけにとどまらず国外でも活躍しているという作品という点でも注目です。
──これまでは限定的な環境でしか観られなかった作品たちですが、これを機に日本でも観やすくなったのは嬉しい話。欲を言えば日本語字幕などが付随するようになると嬉しいのですが、これだけ中国作品が活躍していることを考えるとそれも時間の問題かもしれません。
冒頭の『哪吒之魔童閙海』にしても中国国外での展開は“これから”始まると報道されています。新たな中国アニメーションの波が訪れる予感がヒシヒシと伝わってきています。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『哔哩哔哩动画Anime Made By Bilibili - 欢迎订阅 -』より