ゴールネットを軽々と突き破るシュートを顔面で受け止める。竹串をくわえたまま90分間走り続ける選手もいる。命の危険を抱えながらピッチに立つ選手さえいる──。『キャプテン翼』には、現実のサッカーではおよそ考えられない、危うさ満点の選手たちが登場します。
◆反則どころか命がけ 立花兄弟のスカイラブハリケーン
立花政夫と立花和夫の双子が繰り出す合体技・スカイラブハリケーンは、その迫力とは裏腹に、一歩間違えれば大ケガでは済まない危険を持っています。
一方がジャンプ台となり、もう一方が高く舞い上がってシュートを放つこの技。実際のサッカーでは足を頭の高さまで上げる行為は危険なプレイとして反則になりますし、着地の危うさも相当なものです。打ちどころが悪ければ、着地の失敗が致命傷になりかねません。
中学生編で登場するこの技ですが、中学生の試合は土のグラウンドが一般的。芝と違い、土の上では上手く着地できたとしてもヒザへの負担は大きく、体勢を崩せばケガは避けられないでしょう。
日本代表での試合では、巨漢DF次藤洋をジャンプ台に立花兄弟が飛ぶ発展技まで生まれます。これほどの危険をおかしてでもゴールをねらい続ける姿に、兄弟の並外れた勝利への執念が見えます。
◆審判は気づかないの? 竹串をくわえたままピッチに立つカルツ
ドイツ・ハンブルガーSVのヘルマン・カルツは、いつも口に竹串をくわえてプレイしています。転倒したり相手と接触したりした瞬間、竹が口の中や喉に深々と刺さる可能性があり、目に当たれば失明もあり得ます。
シーンによって竹串の長さが変わり、楊枝ほどになることもありますが、いずれにせよプレイとはまったく無関係な凶器でしかありません。
実際のサッカーでは指輪やチョーカーといったアクセサリーの着用すら認められていないため、なぜカルツがこの状態で出場できているのか、不思議でなりません。自他ともに危険な物体をピッチに持ち込む、ある意味で危ない行動といえるでしょう。
◆現実なら出場停止が当然 心臓の病気を抱えてプレイする三杉淳
「フィールドの貴公子」と称される天才プレイヤー・三杉淳は、心臓病のために数分間しかプレイできません。「ガラスのエース」の異名が示すとおり、文字どおり命を懸けてピッチに立っている選手です。
医師の許可を得たうえで本人が強く望んでいるとはいえ、実際の試合であれば出場を認めることはまずないでしょう。医師との約束の時間を超えてプレイしたことさえあり、万一のことがあれば、サッカー協会・学校・監督・主治医の責任が問われることになります。命の危険という点では、三杉淳は『キャプテン翼』でもっとも危うい立場にいる選手かもしれません。
その後、心臓病を克服してほかの選手と同じようにプレイできるようになった三杉淳の姿に、涙した読者は少なくないのではないでしょうか。
◆首の骨は大丈夫? 石崎の「顔面ブロック」という鉄のルーティン
大空翼の親友・石崎了の代名詞といえば顔面ブロック。数々の強烈なシュートを顔で受け止め、チームを救い続けてきました。しかし、ゴールネットを軽々と突き破るファイヤーショットやタイガーショットを顔面で受ければ、首の骨が折れても不思議ではありません。
実際にファイヤーショットをブロックした場面では、衝撃で頭が大きく後方にのけぞっており、首への負担は相当なものです。当たりどころによっては鼻の骨が折れることは確実で、首の骨への影響も十分考えられます。
それでも顔面ブロックのあとに「ボールは友達だから平気」とケロっとしていられる石崎のガッツは、ある意味で規格外です。あれだけの根性と鍛え方があれば、どんな強烈なシュートも受け止められるのかもしれません。
──『キャプテン翼』は日本人選手にとどまらず、元イタリア代表のトッティ氏など海外の名プレイヤーにも多大な影響を与えた作品です。漫画界のみならず、サッカー界にも計り知れない貢献を果たしてきたといえます。
現実では到底あり得ないスーパープレイに心が躍る一方で、あまりにも危険な描写には「大丈夫か?」と思わず声をかけたくなります。それでもこうした選手たちの姿がワクワクさせ、世界中にサッカー少年を生み出してきたのは間違いないでしょう。
〈文/相模玲司〉
《相模玲司》
大学卒業後、編集プロダクションに入社。メンズファッショ誌の編集に従事したのち、フリーランスの編集・ライターとして独立。アニメ・漫画関連のムック本の制作や、週刊誌のWeb版でアイドルの取材記事やサブカルチャー記事の作成に携わる。
※サムネイル画像:Amazonより 『「キャプテン翼 ライジングサン」第1巻(出版社:集英社)』


