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 劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が、きょう9月19日から公開が始まりました。そんな『チェンソーマン』ですが、原作には『涼宮ハルヒの憂鬱』などをオマージュしたと思われる、作者の藤本タツキ先生の「遊び心」が随所に散りばめられています。

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◆キャラクターに隠されたオマージュと遊び心

 作者の藤本タツキ先生は、数多くのインタビューで映画や漫画が大好きであることを明かしています。そんな背景もあるからか、『チェンソーマン』ではタイトルやキャラクターの名前に有名な作品からマニアックな作品までさまざまなオマージュが含まれています。それは、知る人が「これってあの作品の?」と気づく遊び心が隠されているのです。

 まずは、タイトルにもある『チェンソーマン』。作中に登場する悪魔は、すべて人間の「恐怖」を根源として誕生します。

 そして「チェーンソー」と「恐怖」といえば、ホラー映画として有名なサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』を思い出す人が多いかもしれません。

 これについて、集英社が行った公式インタビュー『藤本タツキ 毎日インタビュー』でチェーンソーの由来を明かしています。

 藤本先生曰く「『死霊のはらわた』もありますが、一番は『悪魔のいけにえ』ですね」と語っています。『チェンソーマン』は、チェーンソーの奇抜さと従来のホラーとは一線を画した衝撃からインスピレーションを受けて生み出されたそうです。

 また、第23話に登場しチェンソーマンと壮絶なバトルを繰り広げたサムライソード(刀の悪魔)にも着想を得たモデルが存在すると考えられます。それが、ギレルモ・デル・トロ監督の『ヘルボーイ』に登場する「クロエネン」というキャラクター。

 2020年7月に配信された『ジャンプルーキー! 投稿者必見! 編集部ブログ』のインタビューで、「悪魔や魔人のデザインはどのように思いついているのか?」という読者からの質問に答える際、藤本先生はカッコいい絵を集めており、「たとえば『ヘルボーイ』の画集を買いました」と明かしています。まさにクロエネンとサムライソードは、軍帽にトレンチコート、手から生えたブレードなど共通点が多く見られます。

 そしてデンジについても、同じ集英社から出版されている弐瓶勉先生の『ABARA』の主人公・駆動電次からインスピレーションを得たと考えられています。これは『チェンソーマン』のコミックス累計300万部突破を記念して藤本先生が公式にコメントを寄せた際、「チェンソーマンは“ポップなアバラ”を目指して描いています」と語っているのです。

 また『ABARA』には那由多というキャラクターも登場しています。奇しくも『チェンソーマン』第一部の最後にもナユタという名前の悪魔が登場します。さらに読み切り作品『予言のナユタ』にも同じ名前のキャラクターが登場しているのです。もしかすると『ABARA』は、作品全体を通して藤本先生に大きな影響を与えているのかもしれません。

 このように見た目や名前を聞いてピンとくるよう、藤本先生はオマージュしたものの答え合わせをきちんと読者に伝える遊び心を忘れていません。

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◆「永遠の悪魔」の着想は涼宮ハルヒの「エンドレスエイト」?

 藤本先生は映画や漫画と同じくらい「アニメ好き」でもあるとも公言しています。特に注目したいのが、『涼宮ハルヒ』シリーズ。

 2016年8月に配信された『アニメイトタイムズ』のインタビュー記事では、繰り返し観るほど好きなアニメ作品の一つとして『涼宮ハルヒの憂鬱』を挙げています。また藤本先生は、2020年にX(旧:Twitter)で行われた『涼宮ハルヒの直感』(出版社:KADOKAWA 2020年11月出版)の発売応援の公式企画にもコメントを寄せています。

 実は『チェンソーマン』には『ハルヒ』への作品愛が遊び心として表れているのです。それが第15話で描かれた「永遠の悪魔」との戦い……。デンジたちは悪魔の調査に来たホテルの8階に閉じ込められ、延々と空間をループして脱出できないシーンが描かれます。

 実は元ネタとなる展開が2009年に放送された『涼宮ハルヒの憂鬱』第12話〜第19話にかけて描かれた「エンドレスエイト」です。この中でハルヒたちは無自覚なまま延々と8月の夏休みをループし続けます。そして途中で主人公・キョンが時間のループに気づき、ハルヒを除くメンバーと脱出を試みるという物語です。

 「エンドレスエイト」では必ずキョンが夏休みの宿題を放棄してベッドで眠りにつく場面で終了する展開となっています。面白いのが『チェンソーマン』第15話でも、閉じ込められたデンジが思考を放棄してベッドで寝るところで終了しています。

 そんな第15話のサブタイトルは「エンドレス8階」──。

 サブタイトルから内容まで、まさに知っている人ならクスっとさせられるユーモアあふれる1話となっているのです。

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◆「レゼ篇」にも遊び心アリ!? 作者公認で見つけてほしい発言も?

 もちろん、原作の「レゼ篇」でも数多くのオマージュや遊び心が落とし込まれています。2021年12月に行われた『ジャンプフェスタ2022』で藤本先生は、「レゼ篇」のストーリーで押井守氏が原作・脚本を務めた『人狼 JIN-ROH』を自分なりに混ぜたことを語っています。

 実はこういった「遊び心」について、藤本先生は先ほどの300万部突破のコメントで「チェンソーマンはとにかく自分の好きな作品を詰め込んでできている」と語っています。さらに読者にも「それが伝わってくれるなら嬉しい」と正直な気持ちを明かしています。

 そんな藤本先生のその想いを汲んでか、TVアニメ版『チェンソーマン』のオープニングにも数多くの映画やアニメのパロディが落とし込まれたのではないでしょうか。

 

 ──原作とTVアニメ版では演出が違っておりファンの間でも賛否分かれていましたが、『チェンソーマン 総集篇』ではかなり原作ファンの期待に応える再編成がなされていました。「レゼ篇」では、総集篇の監督を務めた吉原達矢氏が続投。原作で描かれた遊び心がどこまで映像に落とし込まれるのか……、注目してみるのも面白いかもしれません。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5

 

※サムネイル画像:『劇場版「チェンソーマン レゼ篇」キービジュアル © 2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト © 藤本タツキ/集英社』


※吉原達矢氏の「吉」は「つちよし」が正しい表記となります。

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