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<この記事には劇場版『チェンソーマン レゼ篇』のネタバレが登場します。ご注意ください。>

 原作漫画のある作品を映画化する際、どれだけ原作漫画を踏襲するかが従来のファンにとっては気になるポイントですが、その点、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は絶妙なバランス感になっていたといえます。

 TVアニメシリーズの放送から約2年半を経て、昨日9月19日より公開となった本作。TVアニメシリーズは原作漫画からの改変に対して、ファンからの指摘の声も多く上がっていたからなのか、“何を変えて、何を変えないのか”のチューニングに気を遣っていると感じられる作品となっていました。

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◆劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は原則“原作通り”?

 劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、原作漫画の内容から大きく逸脱するようなことのない映像化となっていました。

 レゼ篇で描かれるのは、原作漫画の5巻〜6巻に収録されている内容です。自身を管理してくれる年上の女性であるマキマに魅了されていたデンジが、それとはまた違ったタイプである同世代の女性レゼに惹かれて、その間で揺れるという展開を迎えた内容でした。

 それだけ聞くとラブストーリーですが、それだけで終わらないところが『チェンソーマン』。クライマックスにかけて敵となる悪魔が登場することで、ホラーやアクションなど“少年漫画”らしい展開を迎え、その恋愛もある決着を迎えていくという内容になっています。

 TVアニメシリーズから見ると地続きのエピソードにはなっているのですが、今回の映画だけでも起承転結がしっかり成り立っているのも特徴です。

 原作漫画のエピソードの長さとしても映画作品にするにはまさにちょうど良いぐらいの長さになっており、事態が急転直下したりといった話の内容の緩急含めて、原作漫画からあまり足し引きがされず、そのエピソードを満遍なく映像化できていました。

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◆今回の映像化で足されていたものとは?

 では、ただ漫画の内容を映像に起こしただけなのか? といえばそうではないのが今回の劇場版の絶妙なところ。映像化にあたっていくつか原作漫画には“なかったもの”がしっかりと考えて足されています。

 たとえば“音楽”。『ダンダダン』や『チ。-地球の運動について-』など今やアニメ作品に引っ張りだこの牛尾憲輔さんがTVアニメシリーズに引き続き担当しており、各場面に合わせて新たな音楽を起こしてくれています。

 前述のような恋愛パートだけでなく、そこから事態が変化していく様子の見せ方であったり、ここぞのシーンで聞き馴染みのあるアガる音楽が流れたりと、漫画にはない要素である耳から入ってくる情報にもこだわって演出されていて、映画をより盛り上げてくれています。

 作中ではレゼが歌を歌うシーンがありますが、こういった場面を「読む」のではなく「聞く」体験として自然と楽しめるのも嬉しいところです。

 そしてストーリーこそ原作漫画を踏襲しているものの、唯一はっきりと原作漫画にはなかったシーンとしてクライマックスとして戦闘アクションシーンが“盛られて”います。アニメーションだからこそ再現できる動画ならではの演出だったり、爆発や過激なシーンといった描写に足すことができる色鮮やかさだったり──。はっきりとアニメーションならではの魅せ方が戦闘シーンに挿入されています。

 今回アクションディレクターを『ONE PIECE』や『呪術廻戦』のアニメシリーズにも参加していた重次創太さんが担当していて、映画らしいスケールアップを担ってくれていました。

 派手なシーンだけでなく、今回の映画ならではの要素として作中で印象的なモチーフが何度も登場します。それが“円形”。実は映画のところどころで画面の中央に大きな円が配置されるようにレイアウトしています。それは日の丸の国旗だったり、上から見たゴミ箱であったり。同じ画角で見せる映像作品だからこそ活きる演出で、漫画では再現しにくい工夫といえます。

 思えば今回主題歌となっている米津玄師さんの「IRIS OUT」のタイトルや歌詞にもある“アイリスアウト”とは円形が縮小していき暗転していく演出のことをさす言葉です。いくつもの円が連なっていくこの映画で、最後にどんな円形に着地していくのかも一つの工夫として用意されていて、それも今回の劇場版ならではの味といえるでしょう。

 

 ──『チェンソーマン』はTVアニメ放送時に原作漫画から改変したセリフを、総集編で原作に準拠させるなど、原作漫画との距離感について改めて検討しているとも思われるシリーズです。

 そんな中で今回新作として出す映画で何を変えず、何を変えているのかは、ほかの作品以上に注目のポイントでしょう。今後出てくる原作のある作品のアニメ化などでは、オリジナルを足すバランス感として、一つの指針にもなり得る映画かもしれません。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

 

※サムネイル画像:『劇場版「チェンソーマン レゼ篇」場面写真 © 2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト ©藤本タツキ/集英社 』

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