劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が大きな記録達成を目前としています。9月19日の公開スタート直後からヒットを果たし、まもなく3ヵ月のロングラン上映に到達しようとしていますが、興行収入もついに95億円を突破して“100億円”という大台が見えてきたことが、『チェンソーマン』公式X（旧Twitter）の12月9日のポストで明かされています。
続々と新しい映画が公開される中、上映期間が長い作品ほどさらに集客するには工夫が必要になるわけですが、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が“そういう手があるのか！”という手法を見せてくれました。
◆何度でも踊らせよう！ レゼのダンス動画を公式が発表！
突如として12月12日に米津玄師さんの各種SNSにて発表されたのが、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の主題歌「IRIS OUT」の曲に合わせて、映画のキーキャラクターであるレゼが踊るダンス動画でした。
まさにこれをお手本に踊ってみてくださいと言わんばかりの動画ではあるわけですが、こういったダンス動画のプロモーションというだけなら、昨今では珍しくありません。TikTokなどのショート動画でダンス動画を投稿してもらい、共有・拡散を促していくという前例は多く存在します。
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が特殊なのは、実は既に「IRIS OUT」がダンス音源として流行している点です。公開直後の9月末時点でファンが創作したダンス動画が流行し、TikTokなどでは早々に“「IRIS OUT」といえばこの振り付け”というのが確立していました。
そんな背景の中で果たして公式がまったく別の振り付け動画を発信したところで効果を生むことはできるのだろうか......と思いきや、動画の発表からまもなく続々と公式が発表した振り付けで踊るユーザーが増えており、しっかり波及効果を生んでいるのが確認できます。この勢いからすると、今回のダンス動画で再度ダンス音源としての流行が期待できます。
一度ダンス音源として流行した曲でも、公式の発信の仕方やタイミング次第では再流行を促すことができる、という前例がここで生まれたといえるかもしれません。
◆ヒット作だからこそ挑める大型イベントを決行！
既にヒット作だからこそ挑める、とでもいうような大型イベントも年末にかけて発表されています。
12月19日には、全国五大都市・五劇場で『チェンソーマン 総集篇』と劇場版『チェンソーマン レゼ篇』を一挙に上映するオールナイト上映企画が行われます。
『チェンソーマン』としては初のオールナイト企画であり、来場者にはこのイベント限定のシーンカードのセットがプレゼントされたりと一夜限りのイベントでありながらも力が入っている様子がうかがえます。
さらに12月20日19時からはお台場レインボー花火とのコラボで「劇場版『チェンソーマン レゼ篇』 スペシャル花火 ― IRIS OUT / JANE DOE ―」の開催も発表。映画の主題歌である「IRIS OUT」「JANE DOE」に合わせて花火を打ち上げるほか、デンジ役の戸谷菊之介さんがナレーションを担当するといった演出も盛り込まれています。イベント自体は約5分ほどとはいえ観覧無料となっているので、近隣の方はぜひ足を運びたい企画となっています。
既にヒットを果たしている作品である点や主題歌が同時ヒットしていることを活かして、しっかり相応のプロモーションを打ち出し続けているところがさすがです。
そして劇場内外での企画で盛り上げつつ、継続して入場者プレゼントをリニューアルし続けているのも手堅いところで、具体的なアイテムの発表はまだではあるものの、入場者プレゼント第七弾までの配布も発表されています（現在は第六弾を配布中）。もはやリピーター向けの施策として入場者プレゼントはなくてはならないほどになってきています。
こういった展開を踏まえて、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は年末年始興行に臨んでいくわけで、これだけ話題性のある仕掛けを設けていくのであれば興行収入100億円突破のニュースはそう遠くないでしょう。今後もジワジワと興行収入を伸ばしていかなければいけない、という映画が出てくると思いますが劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の戦略は一つの成功例として、今後のモデルケースになっていくかもしれません。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X（旧Twitter）⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像：『劇場版「チェンソーマン レゼ篇」ビジュアル (C)藤本タツキ／集英社・ＭＡＰＰＡ』
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。
