コナンはこれまで数々の事件を解決してきましたが、中でもとくに多いのが殺人事件です。

 あり得ない裏切られ方をしたり、少なからず同情できたりする動機もある一方で、「そんなことで!?」とビックリ仰天してしまうような、信じられない動機もあるのです。

◆ハンガーを投げつけられたから

 アニメ第135話「消えた凶器捜索事件」は、コナンファンの間でも語り継がれるほど「意味不明な動機」といわれているエピソードです。

 ある日、コナンが少年探偵団のメンバーと米花町のアーケードを歩いていると、吉田歩美が通っている美容室の前を通りかかります。

 すると、店の裏から店長の五島緑と美容師の三井美香の言い争う声が聞こえ、腕の良い三井が他店に引き抜かれるのを五島が止めているところでした。

 翌日、歩美が髪をカットしてもらうために三井の自宅に赴くと、何者かに首を絞められて死亡している三井を発見。

 ただちに警察に通報して捜査が始まるも、凶器が見つかりません。

 のちにコナンの名推理で凶器がハンガーであること、犯人が五島であることが発覚し、犯行を認めた五島が動機について語りだします。

 五島は三井の自宅でも移動を思いとどまるよう説得していましたが、辞めないでほしいという気持ちが先走るあまり、つい三井の身体に触れてしまいます。

 その瞬間、怒った三井がたまたま手に持っていたハンガーが五島に直撃しました。

 今まで面倒を見てあげた三井の行動を「恩知らず」ととった五島は、衝動的に彼女の命を奪ってしまった、というのが事件の真相でした。

 しかし、五島は「あの子、私にハンガーを投げつけたんです」と発言し、回想シーンでもハンガーのくだりが強調されたことで、あたかもハンガーが当たったことがすべての犯行動機であるかのように映ってしまいました。

 五島の動機を聞いていた目暮警部も「そんなくだらん理由で、人ひとりの命を奪ったんですか、あんたは!!」と激怒します。

「ハンガーを投げつけられたから」としか動機を言わなかったため、誤解されたのも無理はありません。

◆小説を酷評されたから

 アニメ第857話・第858話「米花町二転三転ミステリー」も、なかなか無茶な設定で視聴者を驚かせました。

 ある日、騒音トラブルで近所中から嫌われていた男性と、人柄は悪くないものの頼りない町内会長の男性が何者かに手にかけられているのが発見されました。

 その犯人として疑われたのが、大学講師でありミステリー雑誌で小説の審査員を務める千野洋介でした。

 結論からいうと、犯人は千野に罪を被せようとしていた喫茶店経営者の金光豊子という女だったのです。

 金光はミステリー作家を目指しており数々の新人賞に応募していたものの、すべて落選。

 その作品の審査をしていたのが千野だったのですが、あるとき、彼が金光の喫茶店に来店している際、自分の小説を酷評しているのを耳にしてしまいます。

 それを人格否定と捉えた金光は、かねてより嫌われていた男性と頼りない町内会長を手にかけた罪を千野に被せ、復讐しようと試みるも失敗し、逮捕されました。

 しかし、金光の書いた小説はお粗末極まりないもの。小説に登場する犯人はとにかく揉めごとが嫌いで、揉めるくらいなら人を手にかけてしまうという発想の持ち主で、彼女そのものともいえます。

 さらに、施錠した密室のドアの隙間から毒を塗ったナメクジを侵入させ、寝ている被害者の身体を這い回らせて命を奪い、苦しむ被害者の脂汗でナメクジが溶けて完全犯罪成立……というあり得ない展開がてんこ盛りだったのです。

 この小説の表紙に赤ペンで書き込まれた「こんなのはダメ!論外!」という意見に同意するコナンなのでした。

◆将棋ソフトに「待った」を入れようとしたから

 アニメ第307話・第308話「残された声なき証言」では、有名なシステムエンジニア・板倉卓が手にかけられてしまいます。

 犯人は20年来の友人である将棋ゲームの開発メーカーに勤務する相馬竜介という男で、板倉と相馬は「いつか名人をも倒せる将棋ソフトを作ろう」と約束していました。

 相馬は多額の借金をしてまで板倉に出資していたのですが、板倉は失踪。

 なんとか探し当てた相馬に対し、板倉はのほほんと「将棋ソフトに『待った』は何回入れるのがいいと思う?」と質問してきました。

 プロの将棋の世界では、「待った」は邪道といわれます。犯行動機は、板倉が本格将棋ソフトに「待った」機能を付けようとしたことでした。

 いくら将棋を冒涜されたように感じたとはいえ、ゲームが理由で人の命を奪うなど言語道断です。

◆ずっと「おぼっちゃま」でいたいから

 アニメ第73話「少年探偵団遭難事件」は、死人は出ないものの、犯人の春日輝彦が自分の欲望のために恋人の忍を手にかけようとしたエピソードです。

 この春日は財閥の御曹司で何不自由ない生活を送る、いわゆる「おぼっちゃま」で、対して忍は一般的な家庭で育った女性でした。

 あるとき、春日は父親から、自分と似たような財閥の令嬢との結婚を勧められ、邪魔な忍を手にかけようと企んだのです。

 最後、すべての悪事が露呈した春日は歩美のことを人質にして、「真相を知られた今、全員生きて返すわけにはいかない」 「俺はずっと、おぼっちゃまでいたいんだ!」と絶叫しますが、毛利蘭の華麗なる跳び蹴りが命中し、逮捕されました。

 

 ──難解な事件やトリックを解決していく『名探偵コナン』ですが、中には視聴者に疑問を感じさせた事件も多々あります。

 原作・アニメともに毎週プロットを考えなくてはならない作者やスタッフの苦労は想像に難くないですが、あまりにも無茶苦茶な内容だったものは、こうしてネットで語り継がれていることがよく分かります。

〈文/花束ひよこ〉

 

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