<この記事には原作・TVアニメ『ダンダダン』のネタバレが含まれます。ご注意ください。>
『ダンダダン』では、主人公たちを襲ったアクロバティックさらさらの過去が語られた第7話が、ファンからSNSなどで「神回」と絶賛されています。第7話の何がここまでファンの心を強く揺さぶったのでしょうか。そして、アクロバティックさらさらの娘はどうなったのでしょうか?
◆アニオリ描写で盛られたアクロバティックさらさらの過去
第7話の特筆すべき点は、巧みなアニメオリジナルシーンでしょう。原作のアクロバティックさらさらと娘の過去は12ページで語られたのに対し、アニメでは約7分間に渡り描かれています。その分、原作では見られなかったシーンが追加されていました。
たとえば、アクロバティックさらさらと娘の幸せな日常シーンでは、娘がなかなか起きないアクロバティックさらさらを起こそうとしたり、買ってもらったドレスを着て家の中で過ごしたりするシーンは、アニメオリジナルです。
ほかにも多くのアニオリシーンが追加されていて、原作よりもアクロバティックさらさらと娘の幸せな日常シーンが長くなっていました。その分、悲劇的な結末が落差で強調され、多くのファンが心を痛めたでしょう。
また、アニオリシーンだけでなく原作から改変されたシーンもあります。
たとえば、アクロバティックさらさらがビルから飛び降りるシーンです。原作は雨が降るなか踊っていたのに対し、アニメでは雨上がりの美しい夜空の下で踊っていました。
このシーンについて、本作を手がける山代監督が作品の裏側やスタッフのこだわりなどを語る『ダンダダン』ポッドキャスト「ダンダ談話室#8」で言及しています。
監督は、これまで透明感や美しさで表現することは避けていたそうですが、母親のここまでの流れや気持ちを彼女なりに消化するには、悲しいほどの美しさが必要だったとして、アニメでは変えたそうです。
ほかにも、原作を改変したシーンとして、親子で星空を見上げるシーンを挙げていました。原作では野原で満点の星空をながめていたのに対し、アニメは家のベランダから見上げています。
これはアクロバティックさらさらにとって幸せな場所を自宅の中だけに統一して、家の中と外で世界を明確に分けたかったからだと語っていました。そのため、アニメではアクロバティックさらさらの最期が自宅へ帰るような締めくくりにされたそうです。
◆アクロバティックさらさらの娘はどうなった?
アニメ第7話は、優れたアニオリシーンや改変で国内外から絶賛されました。しかし一方で、借金取りに連れ去られた娘の行方が気になるとの声も上がっています。アクロバティックさらさらの娘はその後、どうなってしまったのでしょうか。
アクロバティックさらさらの娘の行方については、原作でも明らかになっていません。しかし、原作で描かれたアクロバティックさらさらの最期のシーンで、娘のその後について考察できます。
アニメではアクロバティックさらさらの最期が自宅へ帰るシーンだったのに対し、原作では生前の姿をして素足で歩くアクロバティックさらさらと彼女に買ってもらったドレスを着た娘が手をつないでいました。
このシーンはふたりの装いから過去の回想ではなく、娘がアクロバティックさらさらを迎えにきたと解釈できるため、娘は既に亡くなっているのかもしれません。
一方、作中で亡くなったと明言されていないことから、娘は生存していると考え、再登場を願う声も多く上がっています。
確かに明言されていない以上は、完全に亡くなったと決まったわけではありません。しかし、本作はつらい過去を抱えているキャラが多く、現実の残酷さや無慈悲さが描かれています。この観点から考えても、アクロバティックさらさらの娘が生存している可能性は低いでしょう。
借金取りに誘拐された以上、アクロバティックさらさらの娘には過酷な末路が待ち受けていたのかもしれません。少しでも、彼女の最期が痛ましいものではなかったと祈るばかりです。
◆アクロバティックさらさらは成仏できたのか
また、第7話の視聴を終えたファンからは、アクロバティックさらさらの娘以外にも、アクロバティックさらさらが成仏できたのか心配する声も上がっています。
第7話では、アクロバティックさらさらが白鳥愛羅(以下、アイラ)を生き返らせるため、生物にとって電池のような炎(オーラ)を与えて体が崩壊してしまいます。
そのとき、生前の記憶を思い出し、失った娘への後悔が未練となっていました。ターボババアによると、未練が残ったまま亡くなると成仏できず、生者や死者といったすべてから存在を忘れられてしまいます。
しかし、アクロバティックさらさらに救われたアイラが彼女を抱きしめて「お母さん 愛している」と伝え、そのままアクロバティックさらさらは最期を迎えました。
アニメでは明確な成仏した描写はなかったものの、原作だと先述した通り娘と一緒にいたことから、アクロバティックさらさらは無事に成仏したと考えられます。
アクロバティックさらさらが消えたあとにアイラたちがアクロバティックさらさらのことを覚えていたことも、成仏したと考えられる理由の一つでしょう。
アクロバティックさらさらが抱いていた娘への未練は、自分のもとへ生まれてきたばかりに不幸にしてしまったという思いでした。しかし、アイラがアクロバティックさらさらへ母親への愛を伝えたことで、不幸な記憶だけでなく娘との幸せな日々を思い出し、未練が解消されたのだと考えられます。アクロバティックさらさらという娘思いの母親が、誰からも忘れられずに済んだことが何よりも救いです。
──『ダンダダン』の第7話では、アクロバティックさらさらの悲しい過去がアニオリで盛られ、「神回」と呼ばれるほど視聴者の心を打ちました。本作ではほかにもつらい過去を持つキャラたちがいるため、アニメではどのような演出で描かれるのか、早くもファンから期待が寄せられています。
〈文/林星来 @seira_hayashi〉
《林星来》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。葬儀会社やベンチャー企業での社会経験を生かしたビジネス系の記事や、FP2級を保有し金融の知識を生かしたマネー系記事を執筆。また、人には言えない恋愛経験も多く持っており、恋愛系の記事を執筆することもある。