難しいことに、TVアニメ『ダンダダン』のパロディネタが悪い形で取り上げられる事態を生んでしまいました。
『ダンダダン』の第18話「家族になりました」にて登場したバンド・HAYASiiが、X JAPANを思わせる演奏を見せてくれるシーンが登場。
それに対して放送直後にX JAPANのYoshikiさんがX(旧Twitter)にて反応したのですが“この件何も知らないんだけど、こういうのってあり?”“最初これを知った時は、なんだか面白くて笑っていたら、弁護士達からも連絡がきた”と怒りではないものの「驚き」や「困惑」といった反応を見せました。
最初これを知った時は、なんだか面白くて笑っていたら、弁護士達からも連絡がきた😱
著作権侵害の可能性があるとのことで、どうなるのだろね🤔
みなさん、この手のものは、多分先に関係者へ連絡した方がいいみたいだよ#YOSHIKI@DandadanTV @animeDANDADANen @netflix@hulu @XJapanOfficial…— Yoshiki (@YoshikiOfficial) August 8, 2025
『ダンダダン』自体がヒットタイトルということもあり、パロディが豊富な本作としては小さな問題では済まないような、ファンとしてはドキッとするニュースとなりました。
◆たくさんのオマージュにあふれた『ダンダダン』とそれを果敢に再現するアニメシリーズ
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週刊『#ダンダダン 』
━━━━━━━━👻💨第18話『家族になりました』https://t.co/GoDcCTXN61
ジジの邪視化が深刻化する中
囃子を呼び邪視を外に出そうと試みる…🪐8/7深夜0:26~
MBS/TBS系28局全国同時放送開始 pic.twitter.com/vCsd0sWzvr— 「ダンダダン」TVアニメ公式 | 第2期は25年7月3日から放送開始 (@anime_dandadan) August 6, 2025
もともと『ダンダダン』という作品は作中のキャラクターや怪異といったものの多くに“元ネタ”が存在する作品です。ターボババアやアクロバティックさらさらなどの怪談のモチーフはもちろんのこと、宇宙人サイドのシャコ星人ことドーバーデーモンは、見た目がカネゴンやバルタン星人といった円谷プロダクションの特撮キャラクターを思わせるデザインになっています。
それらは原作にあたる龍幸伸先生の同名漫画の時点で登場してる特徴でした。TVアニメ版では原作に寄せる形で再現しており、ある意味で挑戦的とも受け取れていた状況です。
「こっそりやる」のではなくはっきりとオマージュであることを明示するような姿勢で、前述の円谷プロダクションのオマージュである点も、第1期のオープニングからして影絵を使ったりや桃の耳飾りが瞳に見えるような演出は、かなり分かりやすく『ウルトラマン』のオープニングをモチーフにしていると分かるようにできていました。
オマージュだけでなくはっきりとそのまま元ネタを採用する例もありました。シャコ星人がドリンク剤のリゲインのかつて使われていたCMソングを歌うという場面が原作で登場していたのですが、TVアニメ化に際してそれもしっかりと再現。そのまま歌うという事態には多くの視聴者を驚かせました。
いろんなジャンルに対してかなり“分かる”形で引用を行なっている『ダンダダン』だったのですが、今回はそんな再現の姿勢からして「引用元に対して事前に許可を取らなくて大丈夫なのか」「そもそも取っていなかったのか」といったところが問題として浮き彫りとなりました。
◆今回もかなり気合いを入れたオマージュ演出! それでもやはり“やったもん勝ち”ではない?
「改めて“似せて作る”ことは受け手によっては事前に連絡してほしいという人もいる」と今回のYoshikiさんの反応で分かります。
今回登場したHAYASiiに対してYoshikiさんは「最初これを知った時は、なんだか面白くて笑っていたら、弁護士達からも連絡がきた 著作権侵害の可能性があるとのことで、どうなるのだろね みなさん、この手のものは、多分先に関係者へ連絡した方がいいみたいだよ」ともXに投稿していて、事前に連絡があったわけではないことを明らかにしています。
難しいのは今回のHAYASiiは直接X JAPANの曲を流すのではなく、「Hunting Soul」という新曲として、知っている人からすれば分かるパロディとしてX JAPANを引用していた点です。
この曲は放送直後から作詞・作曲・編曲を永井聖一さん、プロデュースを牛尾憲輔さんが務めていることは早々に発表され、ボーカルに谷山紀章さん、演奏でギターにマーティ・フリードマンさん、ドラムをChargeeeeee...さん、ベースをわかざえもんさんが担当しているといった製作布陣も共に発表されています。
TVアニメ『ダンダダン』の公式Webサイトには谷山さんのコメントも掲載され、歌唱の感想として「真面目にふざけるとでも言うんですかね、オマージュやパロディーってやる側がヘラヘラやっちゃうと、受ける側には伝わっちゃって醒めるんですよね。」と元ネタがあることを意識した上での、真摯な取り組みの姿勢がはっきりと明示されています。
一方でYoshikiさんが弁護士から連絡のあったという「著作権侵害の可能性がある」という意見の通り、そのまま楽曲を使った訳ではないので、現時点でこの演出自体が罪となるかは裁判などになってみないと分からない部分なのですが、もし権利者サイドから訴えられた場合には「どこまで寄せているのか」とその再現具合も問われることになるでしょう。
──『ダンダダン』はこのまま原作通りの展開を加味すると、今後のエピソードにもオマージュと受け取れる演出は多々登場予定です。今回の事態を踏まえると、今後は引用の具合を和らげるなど今後の表現に対する製作の姿勢に影響を与える可能性があります。パロディやオマージュはグレーゾーンの危うさも伴う演出です。もしかするとTV『ダンダダン』にとって、今回の事件はターニングポイントとなり得るのかもしれません。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi