TVアニメ『ダンダダン』は、オカルトを扱ったテーマだけあり、数多くの妖怪や幽霊、宇宙人やUMAたちが登場しています。キャラクターたちの多くはそんな「オカルトの力」を使うのですが、一人だけ由来が不明な能力を使用する人物がいるのです。
◆ダンダダンに登場する能力の由来
主人公の1人である高倉健(以下、オカルン)は妖怪“ターボババア”の霊力を身に宿し能力を得ています。そして、白鳥愛羅(以下、アイラ)は妖怪“アクロバティックさらさら”、円城寺仁ことジジは妖怪“邪視”の能力をそれぞれ宿しています。
また、宇宙人たちは宇宙人らしく固有の特殊能力や科学技術を使っています。セルポ星人は特殊能力であるサイコキネシスや「セルポ式測量法」という技術で相手を拘束する力を発生させています。ドーバーデーモンことシャコは基本的に戦闘宇宙人なので特殊能力はなく、自らの肉体で戦う武闘派です。しかし、シャコの息子・チキチータはTVアニメ第16話でも描かれていた通り、宇宙人らしくUFOを操縦しその技術力を使って活躍していました。
このように、作中に登場するキャラクターたちの多くは妖怪や宇宙人、UMAなどの特殊能力に由来した不思議な能力をメインに持っています。しかし、どういった「オカルト」に由来した能力を使っているのか詳細に判明していない人物が1人います。それが、主人公兼ヒロインの綾瀬桃(以下、モモ)です。
◆モモの超能力は人間に備わった「氣」?
モモは第1話でセルポ星人に囚われた際、彼らのサイコキネシスによって精神干渉を受け超能力の覚醒に至っています。このことから、モモの超能力はオカルンたちのような借り物や授かった力ではなく、モモが本来持っていた能力だと推察できます。
ここで注目したいのは、セルポ星人が「女のヒトの“チャクラ”が開いてしまった」と言っている点です。チャクラとは密教で、人体に7つある「エネルギーが出入りする場所」のことです。またサンスクリット語で「車輪」や「回る」という意味を持ち、体内の「氣」の流れを司るとされています。
そして覚醒時に描写されたのが、モモの祖母・綾瀬星子から「氣」を出す練習をさせられていた過去でした。つまり、モモの超能力は人間が持つエネルギーの「氣」が由来である可能性が高いのです。そしてチャクラは人体に備わっているものなので、人間なら誰しも使えると解釈するのが自然でしょう。
しかし、ここで疑問なのがモモ以外に「氣」を操って超能力を使っている人物がいない点です。
『ダンダダン』では「氣」がみんなに備わっているといった説明は現在までのところないのです。実際、モモに「氣」を教えた星子ですら自ら「氣」を使っている描写はありません。つまり、モモの超能力は「氣」が由来である可能性が高いのですが、人間に本来備わっている能力ではないとも考えられるのです。
◆モモの超能力の由来は「神」の力
それでは超能力が人間固有の力でないとすれば、モモの能力はいったい何のオカルト由来の「力」なのでしょうか? 結論からいうと、それは「神」の力なのではないかと考えられます。考えられる根拠は大きく2つあります。
まず1つ目の根拠は、モモの祖母・星子の存在です。星子は自称エセ霊媒師ですがその実力は本物で、TVアニメ第16話でも邪視を圧倒していました。特に注目したいのが彼女の能力です。星子の能力は霊的な力を操るもので、特に「土地神様」の力を借りた時の星子は作中でもトップクラスの能力者になります。
土地神様……、つまり星子はいわば「神」の力を操れる人物ということになります。モモと星子は血のつながった実の家族であることは明かされているため、「神」の力を操る素質がモモに遺伝している可能性は十分に考えられるのではないでしょうか。
続いての根拠は、モモが超能力を発動したときの「感覚」です。第4話で、モモ曰く万物に「炎(オーラ)」が宿っていることが明かされています。そして「ウチはその炎(オーラ)をつかめて自由に動かせる」と語っているのです。
また、モモは触った「炎(オーラ)」を通じて、対象の思考や精神、過去の記憶などを読み取ることも可能です。さらに原作第16話でアクさらとアイラをつないでみせたように、「炎(オーラ)」を移動させて一方の命を救えます。
このことからも「炎(オーラ)」とは、万物に宿る「魂」にも等しい存在だと考えられます。実際、オカルンにターボババアが宿っていた際、モモは「炎(オーラ)」を見分けてターボババアの「呪い」のみを抑えていました。
そんな「炎(オーラ)」に干渉できる能力を現時点で使えるのはモモのみです。ほかの怪異たちにもできない芸当なので、もはや人智だけでなく怪異すらも超えた力と考えられるでしょう。しかもモモの力はまだ全力の状態ではないことが示唆されています。
第4話では星子がモモの力は何かで封印されていると推察していますし、モモも「超能力に目覚めた瞬間はもっとすごかった。それこそイメージが全部現実になる感じっていうか無敵って感じ?」と語っています。
この「感覚」が本当であれば、モモ本来の力は想像したことを何でも実現できる能力ということになります。それはまさに「神」の力と呼ぶに相応しい代物なのではないでしょうか?
──『ダンダダン』ではどちらかといえばマニアックな怪異が登場することが多いです。しかし、物語自体はしっかり王道を踏襲していたりします。「オカルト」といえば、超自然だけではなく、当然神秘的な存在も含まれてくるはずです。『ONE PIECE』然り、神秘の最高峰である「神」が登場する王道展開があっても不思議ではありません。
〈文/fuku_yoshi〉