「キノコ姿のドラえもん（？）」に驚き！　映画『デデデデ』がこの春に公開されたのがスゴいわけ

　映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前編』の公開が3月22日（金）から始まりましたが、同時期に映画『ドラえもん』シリーズの興行が行われているにもかかわらず、公開のタイミングがこの3月末の春休みシーズンであるのが驚きです。

　というのも『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』という作品には、明らかに『ドラえもん』を思わせるキャラクターが登場しているからです。

◆『デデデデ』に登場するのは「キノコ型のドラえもん？」

　『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』こと『デデデデ』は、女子高生の小山門出（声：幾田りら）と中川凰蘭（声：あの）が主人公の物語なのですが、そんな門出が好きな漫画のキャラクターが“イソべやん”です。このイソベやんが明らかに『ドラえもん』を意識したキャラクターになっています。

＜画像引用元：Amazonより＞

　イソべやんはキノコのような身体に手足が生えている不思議なキャラクターで、怠け者の女の子、デべ子を幸せにするためにみらいから現在へやってきたという設定です。それだけでも明らかにドラえもんとのび太の関係性を思わせます。

　しかしそれに輪をかけてそのままの設定なのがひみつ道具の設定。ドラえもんはのび太を救うために未来のひみつ道具を出してくれますが、同じくイソベやんは身に着けている四次元ポシェットから未来の超文明の道具である“内緒道具”を取り出してデべ子を手助けします。

　不思議な道具のおかげでデべ子は一時は救われるものの、調子に乗ったデべ子が自業自得で痛い目に合うという、作中のストーリー設定もそのまま『ドラえもん』なのです。

　あまりにも『ドラえもん』すぎる内容に驚かされますが、もともとの原作漫画の出版が『ドラえもん』と同じ小学館であったり、あくまでも劇中劇なので本編のストーリーは別にあるとはいえ、そのまますぎる内容は結構大きなインパクトがあります。

◆映画でもイソベやんが登場！　実はけっこう重要な役割

　ただし、劇中劇だからといってちょっとした遊び心で片付けられないのが重要なポイントです。実はこのイソベやんの存在がストーリーにおいてもかけがえのない設定となっているからです。

　『デデデデ』では、イソベやんのファンである門出が、イソベやんの空を飛べる内緒道具になぞらえて、「もし空を飛べたら」という質問をする場面が印象的に登場します。

　ストーリー上でもこの問いかけがいろんな意味を持っていて、映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前編』でも作中に“イソべやん”の本編場面が登場。イソベやん役に杉田智和さん、デべ子役にTARAKOさんを据えて、架空の漫画であるイソベやんをそのまま体験させてくれます。

　そのおかげで「なるほど、イソベやんは『デデデデ』の世界のドラえもん的な存在なのだな」というのが具体的に分かるわけです。それを踏まえたうえで、もしそんな不思議な力を持った道具があったら……という観点で、ある種『ドラえもん』という作品を客観的に見せるような仕掛けが『デデデデ』にはあります。

　それは『ドラえもん』という作品を蔑んだりするようなものではなく、そもそも『ドラえもん』がどういったメッセージ性を携えた作品なのかを批評的にも見せてくれます。

◆映画館で激突する「真のドラえもん」と「裏のドラえもん」

　『デデデデ』の恐ろしいところは、『ドラえもん』を批評的に観るような視点を持つ映画でありながら、『映画 ドラえもん のび太の地球交響楽（シンフォニー）』上映されているタイミングで公開しているところ。スクリーンで本物のドラえもんが上映されている中、隣ではそのオマージュでもあるイソベやんが上映されるという珍妙な事態が起きています。

　作中では春が舞台になっているなどの要因もありますが、ドラえもん映画は基本的に毎年春シーズンに公開が始まることは周知されている以上、興行側も『ドラえもん』映画の公開時期を意識はしていたことは要因の一つとして考えられます。

　『デデデデ』はSF作品が好きな人、『ドラえもん』が好きな人にも意味が乗ってくる作品。せっかくこのタイミングでの上映をしてくれたのだから『デデデデ』と『ドラえもん』をハシゴ鑑賞するなんてのも良いかもしれません。前後編とは言いつつも、しっかり前章で『デデデデ』のSF要素は体験できるようになっています。果たしてイソベやんとはなんなのか。そのドラえもんすぎる存在の活躍に注目です。

〈文/ネジムラ89〉