東京ディズニーランドでも歴史の長いアトラクション「スプラッシュマウンテン」に不穏な動きが続いているようです。ファンの間ではアトラクションの閉鎖やリニューアルが噂されているのですが、果たしてなぜそんな噂が生まれているのでしょうか。実はそれにはいくつもの事情があります。

◆実は今年世界で唯一になっていた東京の「スプラッシュマウンテン」

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<画像引用元:https://www.tokyodisneyresort.jp/tdl/attraction/detail/162/より ©Disney. All rights reserved.>

 スプラッシュマウンテンといえばディズニーランドにおけるいわゆる“急流すべり”にあたるアトラクションです。

 1992年にオープンしたアトラクションで、丸太型のボートに乗り、映画『南部の唄』(1946)で描かれるきつねどんとくまどんをからかううさぎどんの物語をなぞっていった末に、山頂からいばらの茂みへ向かって滝を滑り落ちることになるスリルのある体験となっています。

 このスプラッシュマウンテンは世界でも3つのディズニーパークにしか存在しません。アメリカのカリフォルニア州のアナハイムにあるディズニーランドと、フロリダ州オーランドにあるマジックキングダム。そして東京ディズニーランドの3つです。

 しかし、実はその3つの内、東京ディズニーランド以外のスプラッシュマウンテンは今年2024年にすべてリニューアルオープンを果たしました。

「スプラッシュマウンテン」から「ティアナズ・バイユー・アドベンチャー」というアトラクションへとリニューアルし、急流すべりの要素はそのままに、アトラクション中の題材が映画『南部の唄』から映画『プリンセスと魔法のキス』(2009)へと変更されています。

 今、世界に「スプラッシュマウンテン」というアトラクションは日本の東京にしかありません。

◆封印されてしまったディズニー映画『南部の唄』

 アメリカでスプラッシュマウンテンがリニューアルされたのにも理由があります。実は題材となっていた映画『南部の唄』はソフトリリースや配信のアーカイブからも除外されている、事実上、封印されてしまっている映画だからです。

 映画『南部の唄』は肌の白い少年と肌の黒いリーマスおじさんの交流が描かれるといった内容で、このリーマスおじさんが作中で語るお話が、スプラッシュマウンテンで演じられる“うさぎどん”のエピソードとなっています。

 なぜ封印されているかといえば、作中の人種表現に批判の声が上がっているという理由が大きいです。かといって作中で肌の黒い人を侮蔑したりするようなシーンはありません。まったく差別するような内容ではないのに、なぜ批判を受けているかといえば、むしろ差別をしていないことが問題とされています。

 というのも、当時は肌の白い人と黒い人は映画『南部の唄』の作中のように対等な交流はされていなかった、と批判されており、このままでは誤った歴史認識を招く恐れがあるという理由で、問題の作品とされているのです。

 そんな曰く付きで、今では鑑賞が困難な映画が題材ということでは、リニューアルされてしまうのも必然でしょう。

◆日本のスプラッシュマウンテンは大丈夫なのか?

 では日本ではどうなのか。実は日本でも映画『南部の唄』は封印状態にありVHSを最後に、一切ソフト化や配信なども一切されていない状態です。そんな状態なので、アメリカに続いて日本のスプラッシュマウンテンもリニューアルされてしまうのではないか、という懸念はあります。

 しかもそれに輪をかけて不安を煽るニュースとなったのが、スプラッシュマウンテンのあるエリア「クリッターカントリー」のショップ「フート&ハラー・ハイドアウト」が2024年11月30日をもって閉店が発表されたことです。

 ただでさえクリッターカントリーエリアはほかのエリアに比べてもアトラクションやショップが少ないエリアなのに、ここにきてさらに規模を縮小するということから、スプラッシュマウンテンの存在を危ぶんでしまうのは、アメリカでの現状をふまえるとなおさらです。

 現状、東京ディズニーランドのスプラッシュマウンテンを閉鎖したり、リニューアルするという発表はされていないものの、果たして原作となる映画をアーカイブで観られないアトラクションをそのまま継続していってくれるかといわれれば怪しい話です。

 この際、一時期に封印されていた事情や理由をはっきりと明示しつつ、映画『南部の唄』のソフト化や配信を行ったうえで、世界で唯一昔ながらのスプラッシュマウンテンが現役で活躍する場所として、東京ディズニーランドが作品もアトラクションも大切にしてくれないかと思う次第です。

『プリンセスと魔法のキス』も素敵な映画ですし、新しいアトラクションも楽しみたいのも確かではあるのですが、原作の映画だけでなくアトラクションまでも“なかったこと”にされてしまうのは、存在を知っている側からしたら悲しく感じる部分です。世界最後の砦となった日本のスプラッシュマウンテン。果たして、いつまでも楽しむことはできるのでしょうか。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteではアニメ映画ラブレターマガジンを配信中。Twitter⇒@nejimakikoibumi

 

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