『ドラえもん』で、ドラえもんの頼れる妹ロボットとして登場するドラミちゃん。実は、藤子・F・不二雄先生が生み出したキャラクターではないそうです。その誕生には、昭和ならではのエピソードがあるようです。
◆誕生のきっかけは1通の手紙と先生の優しさ
ドラえもんのピンチヒッターとして要所要所で出番があるドラミちゃん。1989年3月に公開された『ドラミちゃん ミニドラSOS!!!』を皮切りに、現在ではドラミちゃんを主役とした映画、通称「ドラミちゃんシリーズ」が6作品も制作されています。
そんなドラミちゃんですが、作者の藤子・F・不二雄先生が考案したキャラクターではないという事実があります。ドラミちゃんのイラストが初めて掲載されたのは、1973年に発売された『小学四年生3月号』(出版社:小学館)です。当時連載されていた『ドラえもん』の最終ページで、4月号から登場する新キャラクターの予告としてドラミちゃんが描かれていました。
そのドラミちゃんのイラストの横に、「ドラミちゃんは奈良県在住の女の子のアイデアです」と、当時小学4年生だった女の子のファンレターから誕生したキャラであることが注記されています。
ちなみに、てんとう虫コミックス『ドラミちゃん』(出版社:小学館 2023年12月出版)によると、そのファンレターには「おねがい、女の子のドラえもんも出してください」とリボンや花があしらわれたドラえもんのイラストが添えられていたそうです。
このファンレターを見た藤子・F・不二雄先生が、「リボンとしっぽのアイディアがいい」と感心し、採用したそうです。当時は、漫画のアイディアを公募することも多かったのですが、ドラミちゃんの場合は1通のファンレターが先生の目に留まったことで誕生した稀有な例といえるでしょう。
──漫画家に自分の企画が採用されるのは、読者にとって夢のような出来事でしょう。子供の夢を叶えてあげるという行為は、まさに夢を叶える『ドラえもん』の物語を数多く生み出した、藤子・F・不二雄先生らしい心温まるエピソードではないでしょうか。
〈文/fuku_yoshi〉
《fuku_yoshi》
出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5
※サムネイル画像:Amazonより 『「ドラミちゃん」(出版社: 小学館)』





