22世紀の技術で作られたひみつ道具は、便利で面白いものばかりと思いきや、使い方を間違えると大変なことになるものもたくさんあるようです。

 次の4つのひみつ道具は、地球や人類を滅ぼしかねないアブないものばかり。映画『ドラえもん のび太の地球交響楽』でも、これらのひみつ道具を使えば敵を簡単に倒せてしまうのではないかと思えてしまうほどです。

◆ヘソリンスタンド──ほとんどドラッグ!?

 ヘソリンスタンドは名前のとおり、ガソリンスタンドの給油機のような形のひみつ道具です。

 ヘソからガスを注入すると、30分間ネガティブな気持ちを感じなくなり、幸福感にひたれる危ないクスリのような道具となっています。

 てんとう虫コミックス25巻の「ヘソリンガスでしあわせに」に登場しており、怪我をしても痛みを感じません。さらに、精神的な苦痛も感じないので、親の財布からお金を盗んだり、スカートめくりをしたりしても、罪悪感を抱かなくなってしまうようです。

 反面、30分経って効果が切れると、その間の痛みをまとめて感じてしまいます。その痛みから逃れるために、ヘソリンスタンドをくり返し使うことになるので、さながら依存性のある薬物のようです。

 痛みは生き物が生存するために必要な反応で、それを教える教育的な目的の道具なのかもしれませんが、作中ではジャイアンとスネ夫に奪われ悪用されます。

 小学生の子供たちがドラッグの常習者さながらにヘソリンガスをキメる、アナーキーなひみつ道具でした。

◆悪魔のパスポート──ドラえもんの知られざる所持理由

 悪魔のパスポートは、なんらかの悪事を働いたとき、相手にこのパスポートをかざすだけで、罪を許されてしまうというものです。

 てんとう虫コミックス13巻でのび太はこの道具を悪用。ママの財布からおこづかいを無断で前借りしたり、カンニングやスカートめくりをしたりと、思いつく限りの悪行をします。

 しかしもともと心根のやさしい少年なので、のび太は自主的にドラえもんに返し、取り返しのつかない事態にはなりませんでした。

 ドラえもんは作中で、言い訳っぽくこの道具を処分し忘れていたと発言しています。22世紀の未来では、悪行をいくらでもできてしまう道具を、子守り用ロボットが持ち歩いて問題ないのでしょうか。そもそも、何のためにドラえもんがこの道具を持っていたのか疑問です。

 『続ドラえもん全百科』でドラミは悪魔のパスポートについて、「冤罪を晴らすためだけに使うこと」と説明しています。ドラえもんは何か冤罪をかけられる心当たりがあったのでしょうか。

 もしくは過去に干渉して、のび太の未来を変えることで、タイムパトロールに捕まえられる危険性を考えて持っていたのかもしれません。

◆バイバイン──おやつを残しただけなのに

 バイバインは名前のとおり、薬液をたらしたものが5分ごとに2倍に増えて、2個から4個、4個から8個と、どんどん増えていきます。

 このひみつ道具の何がアブないかと言うと、1時間後には4096個、2時間後には16777216個までふくれ上がる計算となり、実際にのび太は地球を滅ぼしかけることになりました。

 作中ではのび太がおやつの栗まんじゅうをバイバインで増やしますが、食べきれなかった1個を庭に埋めたために、栗まんじゅうが無限増殖を始めてしまいます。

 幸い異変に気づいたドラえもんが小型のロケットを使い、増殖した栗まんじゅうを宇宙に廃棄して事なきを得ました。

 もしあのまま栗まんじゅうが庭に放置されていたら、2時間と経たずにのび太の家は押しつぶされています。さらに天体レベルの質量までふくれあがり、地球も滅亡しかねない状況でした。

 のび太が食べた分の栗まんじゅうが、お腹の中で増えている様子はないので、食べたり壊したりしてしまえば増えることはないと考えられます。本来はこのように危険な事態を起こさないように、増やしたものを廃棄するところまで監督するものなのでしょう。

 「悪魔のパスポート」のときもそうでしたが、ドラえもんの管理や監督がいい加減だったためにアブない事態が起きがちなのはご愛敬でしょうか。

◆どくさいスイッチ──ひみつ道具による教育的指導

 どくさいスイッチは、スイッチを押すと気に入らない相手を消すことができるというシンプルなひみつ道具です。

 たんに消えるわけではなく、はじめからこの世界に存在していなかったことになる道具で、のび太がジャイアンを消したことをしずかちゃんに告げたときも「ジャイアン? 誰のこと?」という反応でした。

 のび太はジャイアンを消したあとも、いじわるをしてきたスネ夫を消し、良心がとがめて悪夢を見た末に「誰もかれも消えちゃえ!」とどくさいスイッチで、全人類を消してしまいます。

 静かになった町をタケコプターで飛んで人を探すのび太でしたが、誰も見つけることはできませんでした。はじめのうちは漫画やお菓子を独占して一人の世界を満喫しますが、夜になっても明かりがつきません。

 発電施設を動かしている人たちもまた自分が消してしまったのだと気づいて、のび太は改めて1人では生きていけないことを知ります。

 するとどこからともなくドラえもんが登場。どくさいスイッチは、身勝手な独裁者をこらしめるために作られたひみつ道具であることを明かします。

 ドラえもんが消えていなかった理由は明言されていませんが、どくさいスイッチの用途が元々教育的なものなので、監督者であるドラえもんには例外的な効果が出るものだったのかもしれません。

 

 ──いずれも子守りロボットが持ち歩くには、安全管理の難しいひみつ道具です。それでも重大な事態を引き起こしていないのは、なんだかんだ言って、のび太が素直ないい子だからなのかもしれません。

〈文/雨琴 編集/諫山就〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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