『ドラゴンボール』には、空腹を満たすため、生きるためにとんでもない物を食べてしまったキャラクターがいます。そのシーンは、強烈なインパクトからキャラクターの個性を引き立てています。

 しかし、振り返って考えるとドン引きしてしまう食事シーンでもありました。その中には、ファンの間で黒歴史として語り継がれるものもあります。

◆「オオカミとムカデ」を差し出してブルマにドン引きされた悟空

 悟空は夕食のためにオオカミとムカデをとってきて、ブルマにドン引きされていました。「丸焼き丸焼き!」と嬉しそうにしている悟空の様子から、普段から肉食獣や昆虫を食べることは当たり前だったことがうかがえます。

 ブルマと出会ってまだ間もない頃であり、山育ちで野性味があふれる悟空のキャラクターを語るには十分なシーンでした。もちろんリアルな世界でも犬や昆虫を食べる地域はあり、日本でも昔からイナゴやハチの子などが食されています。

 しかし、連載当時の日本人の感覚は、ブルマの抱いた感想に近かったのでしょう。固そうなムカデや、馴染みのない生き物のオオカミを食べる悟空には驚かさたものです。

 その後、悟空はブルマと都会で暮らしたり、チチと結婚しておいしい料理に舌鼓を鳴らしたりと、食生活はかなり変わりました。実際、界王様のもとで修業していたときは、食事にケチをつけるほどです。

 美食を知ってしまった悟空が、好んでムカデなどの昆虫を食べることはもはやないのかもしれません。

 『ドラゴンボール』の連載が始まってから約40年が経過しました。日本でも、昆虫食の飲食店、食用コオロギが出るガチャガチャが生まれていることに時代の流れを感じます。

◆「会話ができる相手」も食べてしまうヤジロベー

 ヤジロベーはシンバルを一刀両断にして倒すと、朝メシとして焼いて食べました。シンバルの外見は虫類のようであったとしても、人語を話す二足歩行の生き物を食べるのは人としてタブーでしょう。

 シンバルとの戦闘は、ヤジロベーが初登場してすぐの出来事でした。シンバルをあっさり倒したうえ、丸焼きにして食べるシーンが読者に与えたインパクトは強かったです。

 トカゲやヘビを食べる地域はありますし、味や食感は鶏肉のようでおいしいと言われています。しかし、いくら悟空に朝メシだった焼き魚を食べられてお腹がすいていたからといって、今まで普通に会話をしていた相手を平気で食べるヤジロベーにドン引きした読者も多かったでしょう。

◆黒歴史と化した「宇宙人を生食する」ベジータ

 ベジータは地球に来る前に別の星を攻めていましたが、そこで宇宙人を食べていました。二足歩行かつ知的生命体と思われる宇宙人を生で食べていたのは、ベジータの黒歴史とされています。

 こちらもヤジロベー同じく初登場シーンであり、このワンシーンだけで一気にベジータの存在感が際立ったように思えます。読者に宇宙人を食べる冷酷でとんでもないヤツという印象を与えるには十分でした。

 食べるものが少ない星だったとしても、せめて焼いて食べてほしかったです。生食は危険だと思いますが、戦闘民族サイヤ人は過酷な環境でも効率よくエネルギーを摂取できるように胃腸も特別にできているのでしょうか。

 『30th Anniversaryドラゴンボール超史集―SUPER HISTORY BOOK―』のおまけ漫画において、鳥山明先生はベジータに対して「おまえなんて悟空にやられて死ぬ予定だったのに」と語っています。鳥山先生の発言から、おそらくベジータはただの悪役キャラであり、あえてイメージを悪くするため宇宙人をモグモグしていたと思われます。

 しかし、思いのほか人気が出てしまい、ベジータは悟空のライバルとしてだけでなく、父親としての顔も見せるほど『ドラゴンボール』において存在感の強いキャラクターに変化を遂げました。

 このベジータの活躍ぶりとキャラクターのギャップから、宇宙人モグモグシーンは黒歴史と化してしまいます。ファンの間でネタにされすぎて、フィギュア化までされるほどでした。

 

 ──定番となっている天下一武道会の腹ごしらえなど『ドラゴンボール』では食事シーンが多いですが、初登場時ほどヤバいものを食べている傾向があるようです。

 生きるためには何でも食べないといけない厳しい環境に置かれているからこそ、悟空たちのような強さ、たくましさが培われるのかもしれません。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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