TVアニメ『ドラゴンボールZ』には、原作漫画にはないアニオリ回が多くあり、ベジータとブルマの馴れ初めや、悟空がクルマを運転できるようになったきっかけなどが描かれており、原作を補完していることがあります。

サイヤ人の恐ろしさがよく分かる?──第11話 「宇宙一の強戦士サイヤ人めざめる!」

 第11話 「宇宙一の強戦士サイヤ人めざめる!」 は、ベジータやナッパがいかに非情な性格をしているかが分かるエピソードでした。

 このエピソードでは、ベジータとナッパが高く売れるという理由からアーリア星を奪おうとします。2人はこの星に乗り込むと、宇宙人ということで危険視され敵意を向けられました。しかし、彼らは「面白そう」という理由でわざと住民たちに捕らえられます。

 捕らえられたベジータとナッパは、星がモアイ王の支配によって荒れ果てたことを知ることに。そして、牢獄を抜け出しモアイ王のもとへと向かいました。

 モアイ王と対峙した2人は、「手下の戦士を倒したら何でも好きなものをやる」と賭けを挑まれます。

 その挑戦を受けたナッパは、圧倒的な力の差で手下の戦士とモアイ王の呼び出したアーリア星の地下に眠る巨大生物、イエディを倒しモアイ王の支配から惑星を救いました。

 その光景を見たある青年は、ベジータとナッパを救世主だと言い「この星にも平和が戻る」と喜びます。この青年はモアイ王によって、婚約者を奪われており、2人の活躍により、再び婚約者と再開できたのでした。しかし、ベジータとナッパは、惑星を去ったあと、アーリア星は金にならないと理由で破壊してしまいます。

 戦闘民族のサイヤ人にとって惑星は高く売れるかどうかだけで、その星に住んでいる人たちが何を思いどんな生活をしていようが関係ないという非情な考えがよく伝わるアニオリ回でした。

のちの作品にも登場する「あの種族」に関係が?──第20話 「よみがえるサイヤ人伝説!悟空のルーツ」

 第20話 「よみがえるサイヤ人伝説!悟空のルーツ」は、原作では明かされなかったサイヤ人の歴史について、界王様が直々に解説してくれるエピソードであり、惑星ベジータにはもともと高度な文明を持つツフル人が住んでいたことが分かりました。 

 母星を滅ぼされたサイヤ人たちは、ツフル人の住む惑星ベジータにたどりつき、ツフル人は彼らを受け入れます。サイヤ人は文明を持たない民族でしたが、次第に知識をつけツフル人を滅ぼしました。

 ツフル人を滅ぼしたサイヤ人は、これ以上の文明の発展は難しいと考え、高度な文明を持つ異星人と手を組み、その異星人の別荘用の星を提供する代わりに、彼らから知識や金銭を求めることにしたのです。

 ツフル人は1993年にバンダイから発売されたファミコンゲーム『ドラゴンボールZ外伝 サイヤ人絶滅計画』や、それを基にして作られたOVA『公式ビジュアルガイド ドラゴンボールZ外伝 サイヤ人絶滅計画』にも登場し、ツフル人のドクターライチーがサイヤ人を滅ぼすために「対サイヤ人専用マシン」のハッチヒャックを作ったり、『ドラゴンボールGT』では、悟空たちを苦しめたベビーを開発したりするなど、たびたびアニメの作中に登場しています。

ブルマとベジータの「馴れ初め」が描かれていた?──第124話「こえてやる…悟空を!!戦闘民族サイヤ人の王」

 原作では急に母親として描かれたブルマですが、第124話「こえてやる悟空を!!戦闘民族サイヤ人の王」というアニオリ回では、ベジータとブルマの馴れ初めともいえる様子が描かれています。

 このエピソードは、カプセルコーポレーションの重力室で人造人間の襲来にそなえて無理な修行をするベジータを中心に描かれていました。 

 ベジータは修行中に大怪我を負ってしまします。そのような状態にもかかわらず強がって無理ばかりをするベジータ。そんな彼を放っておけなかったブルマは、彼の看病をするなど世話を焼きます。

 寝込んでいたベジータが目を覚ますとブルマが机に突っ伏して寝ていたなど、彼女が献身的にベジータを看病していたことが分かります。

 ほかにも、ブルマが第118話「あれが地球だよパパフリーザ親子の逆襲」で「案外いい男」だとベジータのことを褒めていたり、第119話「フリーザはボクが倒す悟空を待つ謎の少年」では、危険な目にあってでもフリーザを見てみたいというブルマのことを「下品な女だと思っていたがかなり気も強いな」というベジータのセリフがあったりと、お互いがお互いに持つ印象についてもアニオリで描かれました。

 鳥山明先生は『月刊OUT 19823月号』の対談にて「ラブコメは読めない、ダメ」と恋愛描写は苦手であることを明かしており、そのためか原作では人造人間編に入ってからブルマとベジータは唐突に子供をもうけています。

 こうした描写は原作では見られない、アニメならではの補完といえるでしょう。

ただのギャグ回かと思いきや……──第125話「免許皆伝?悟空の新たなる試練」

 第125話「免許皆伝?悟空の新たなる試練」は、人造人間が現れるまでの間の日常回で、悟空がクルマの運転ができるようになったきかっけが描かれています。

 クルマに乗って買い物に行けないことに不満を爆発させたチチに命じられて悟空と、それに巻き込まれる形でピッコロは教習所に通うことになります。

 戦士としては圧倒的な強さをほこる悟空ですが、覚えは悪く破天荒すぎる運転をして教官からは「お前は免許を取るのに3年はかかる」と言われるほどクルマの運転は致命的でした。

 紆余曲折を経て、悟空とピッコロは実技試験にのぞみますが、そのときに土砂崩れに巻き込まれる幼稚園バスに出くわし園児たちを救います。

 園児らを助けた悟空とピッコロは教官にその行いを素晴らしいと褒められるも、「君たちに教えることは何もない」と言われ遠回しに教習所を追い出されました。

 タイトルに「免許皆伝」とあるにも関わらずこの回では免許を取ることはできませんでしたが、その後の第172話「神様を探し出せ!! 悟空、大瞬間移動」で今度こそ運転免許を取れたことが分かります。

 漫画やアニメの世界であえて語られることがあまりない運転免許ですが、ハチャメチャで何でもアリに見える『ドラゴンボール』の世界でクルマの運転に免許が必要とは少し驚きです。

 ──『ドラゴンボールZ』にこのようなアニオリ要素が多いのは、アニメ放送当時原作のストックがなく、原作通りに進めるとすぐ追いついてしまうからだったと『テレビアニメ完全ガイド「DRAGONBALL」〜天下一伝説〜』で語られています。

 「悟空が気を溜めるだけで1話終了」「ナメック星が爆発するまでの5分間に10話割く」など引きのばしが多いと語られることも少なくない本作ですが、キャラクターや設定の深掘りをしてくれるところはアニメ版ならではの良いところといえるでしょう。

〈文/michel 編集/乙矢礼司〉

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