悟飯がラディッツに大ダメージを与えたときに明らかにされた、サイヤ人と地球人の混血は純血より強いという設定。セル戦など悟飯が一時的に悟空より強い時期はありましたが、最終的に純血である父を超えられた息子はいませんでした。なぜ、悟飯、トランクスたちは悟空やベジータを超えられなかったのでしょうか? サイヤ人の特性から考察します。
◆サイヤ人ならではの特性
戦闘民族サイヤ人がその人生を戦いに特化できるように所持しているのが、彼らならではの特性です。その中には純血のサイヤ人と地球人との混血で共通するものと受け継いでいない特性があり、これが彼らの強さにも関与していると考えられます。
まず確実に受け継がれている特性は、大食いです。悟空やベジータはもちろん、天下一武道会では悟飯も大食いぶりを発揮。
『ドラゴンボールGT』では大量のから揚げにテンションが上がっていることから、パンもそれなりに大食いだと思われます。これは消費カロリーが大きい体質なのかもしれませんが、やはり戦闘民族だけあって栄養をしっかり摂って戦いのためにより強い体を作ろうとする特性があるのでしょう。
瀕死の状態から回復すると戦闘力が大幅にアップする特性も、ナメック星での悟飯を見ると共通する特性だと思われます。また、『銀河パトロール ジャコ』では「サイヤ人は周囲を油断させるために子供時代が地球人より長く、急激に成長して大きくなる」という設定が語られていました。
悟空は15歳まで3頭身で3年後には一気に7頭身くらいにまでなっており、悟天やトランクスも急成長していました。
逆に受け継がれていないものとしては、ベジータが言っていた「純粋なサイヤ人は頭髪が生後から不気味に変化したりはしない………」という特性です。悟飯は子供の頃はおかっぱでしたが、成長してからは短くなっています。
また、悟空は子供の頃は凶暴だったと育ての親である孫悟飯が言っていました。しかし、息子の悟飯や悟天、トランクスにはそのような特徴はまったく見られません。
こうしてみると、サイヤ人の特性が必ずしも受け継がれるわけではないことが分かります。そして、共通する特性の中にも地球人の血が入ることで薄まっている可能性も考えられるでしょう。
◆若い時代が長い特性は受け継がれない?
サイヤ人の特性の中には若い時代が長いというものもあり、悟空は40歳を超えても20代の頃と変わらない見た目をしていました。地球人の血が入ることで悟飯たちに、この特性が受け継がれなかったのだとしたら父を超えられなかった要因の一つだと考えられるでしょう。
『ドラゴンボールGT』の悟飯が32歳とまだ若いため、この特性が混血のサイヤ人に受け継がれていたのかは不明です。『ドラゴンボールGT』の最終回、100年後の世界でパンは年相応に老いた外見になっていました。
しかし、これだけでは特性が受け継がれていないとは言い切れないでしょう。また、パンは悟飯とビーデルの娘のため、サイヤ人の特性がかなり薄くなっていてもおかしくありません。
ただ、普通に考えれば地球人の血が入ることでサイヤ人の特徴が、それなりに薄くなると考えられるでしょう。そうだとすれば、悟飯たちには全盛期の状態で長く戦えるというサイヤ人の特性は、悟空やベジータほど備わっていないのかもしれません。
◆サイヤ人と地球人の混血は早熟なだけ?
サイヤ人と地球人の混血である悟飯や悟天、トランクスは子供のときからセルや魔人ブウと戦えるほどの強さを発揮していました。しかし、最終的に父を超えることはなかったため、地球人の血が混ざることで早熟になっていた可能性も考えられます。
悟飯は4歳で既にラディッツを超える戦闘力を持っており、セル戦のときはまだ10歳でした。最初にスーパーサイヤ人2になったのは悟飯であり、ベジータや未来トランクスが互角の戦いをしていたセルジュニアたちを一瞬で倒します。
さらには、セルジュニアの生みの親であるセルまで圧倒。このときは確実に父・悟空の実力を超えていました。
また、悟天やトランクスは父たちがあれだけ苦労したスーパーサイヤ人に幼い頃にあっさりなっています。これらのことからサイヤ人と地球人の子供が強いというのは、ある意味正しいといえるでしょう。
ただ、地球人の血が入ることで純血のサイヤ人ほど若い時代が長くないのであれば、混血サイヤ人が早熟になっている可能性も十分考えられます。つまり、若い体で戦える期間が短い分、早い時期から強さを発揮できるようになっているというわけです。
実際に悟飯や悟天、トランクスは最終的に悟空やベジータの強さを超えていません。また、この早熟という性質は、肉体だけでなく精神面にも影響していると思われます。
普通の人間でも若い頃は血気盛んでとがっていた時期はあっても、年齢を重ねれば次第に落ち着いて来るのが一般的です。サイヤ人でも純血の悟空たちは戦闘への意欲が盛んな時期が長く、混血の悟飯たちはその時期が短いのだとすれば息子たちが父を超えられなかった理由としてもしっくりくるでしょう。
◆サイヤ人は働いたら負け?
収入を得て安定するとハングリー精神が乏しくなってしまうというのは、多くの人間に当てはまることでしょう。つまり、悟空やベジータの強さの秘密は、働かなかったことなのかもしれません。
悟飯は子供の頃からの夢だった学者になり、トランクスは『ドラゴンボールGT』でカプセルコーポレーションの社長に就任しました。忙しい日々を過ごすことで修業する時間がなくなったというのももちろん大きいでしょうが、精神的にも安定・充実してしまっては強さを追い求める気持ちは薄くなってしまいます。
また、悟天は『ドラゴンボールGT』では無職だったようですが、恋人がいてデートをするのに忙しかったようです。しかし、『ドラゴンボール超』では畑を耕す姿が描かれていることから、実家の農業の手伝いが仕事だった可能性もあります。
その点、悟空やベジータは早くに結婚しましたがヒモ状態で無職のまま。どちらも気の強い嫁であり、本人たちも色恋には無関心のため浮気をするという選択肢もありません。
そんな環境だったからこそ、ブウとの戦いから4年後が舞台の『ドラゴンボール超』でも彼らはビルスのもとで強さを追い求めて修業できました。普通に仕事をしていればそのような生き方はできません。
悟空やベジータの強さ、戦いへの渇望は安定とはほど遠い生活を送り続けた結果であり、仕事をしなかったからこそ維持できたのでしょう。「働いたら負け」という言葉は、サイヤ人にこそ当てはまるネットミームなのかもしれません。
──サイヤ人の中でもエリートのベジータ、その彼が天才と認めた悟空。この2人でさえ、強くなるために働くという選択肢を捨てています。「何かを求めれば何かを失う」という言葉があるように、調子に乗ってあれこれ欲張り過ぎると失敗を招いてしまうことを純血サイヤ人は教えてくれているのかもしれません。
〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。
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