『ドラゴンボール』にはストーリー上、必要だったため追加された能力や弱点、本編では明らかにされていない人造人間に関する設定が存在します。その中には一度きりの登場だったため、すっかり忘れられているものも……。『ドラゴンボール』の懐かしい設定、知られざる設定にはどのようなものがあるのでしょうか?
◆消えた悟空の特殊能力
ギニュー特戦隊と戦っているベジータたちのもとへ到着した悟空は、読心術のような技でクリリンの頭の中を読んで状況を把握します。この技はいつ覚えたかも分からないうえ、これ以降は登場しない幻の特殊能力となってしまいました。
ナメック星でのドラゴンボール争奪戦では、シリーズ史上最高とも評価されるハラハラする駆け引きが繰り広げられています。フリーザと対立するナメック星人やクリリンたち、そしてうまく立ち回ってドラゴンボールをかすめ取ろうとするベジータ。
さらには途中から招集されたギニュー特戦隊の登場によって、ベジータとクリリンたちが共闘するなど戦局がめまぐるしく変わります。そのため、遅れてやって来た悟空に複雑な状況を説明する必要がありました。
実際にクリリンが説明しようとしますが、それをさえぎって悟空は頭の中を探ろうとします。クリリンの頭に手を触れることで、一瞬にして悟飯たちがパワーアップしたこと、ドラゴンボールが奪われたこと、ベジータとギニュー特戦隊のことなどを理解しました。
マンガの手法としては風景や別のキャラクターのシーンなどを一旦はさんで、クリリンが状況を説明し終えた瞬間まで時間を飛ばすという省略法があります。ストーリーのテンポを悪くしないという理由なら、この手法を使えば問題なかったはずです。
そのため、悟空が使ったこの特殊能力が今後の展開にも影響するのかと思いきや、これ以降は一度も使われていません。しかし、これまでに同じようなシーンは作中で登場していました。
それはナムが参加していた第21回天下一武道会です。ジャッキー・チュン(亀仙人)は心を読んで、ナムが大会の優勝賞金で水を買って水不足に苦しむ村を救おうとしていることを悟ります。
師匠である亀仙人が使えたわけですから、悟空がこの特殊能力を使えるようになっても不思議ではないのかもしれません。ただ、やはりギニュー特戦隊を前に長い時間かけて状況説明を受けるのは違和感が生じてしまうため、ストーリー上の都合という部分が大きいのでしょう。
また、宇宙船で激しい修業を行っていた悟空の心理を考えると、早く強敵と戦って自分がどのくらい強くなったのか試してみたいという思いもあったはずです。キャラクターの心理を優先して、展開を早くする意図があったとも考えられるでしょう。
◆忘れられたナメック星人の弱点
劇場版アニメ『ドラゴンボールZ 超サイヤ人だ孫悟空』では、ナメック星人が口笛の音が苦手なことが明らかになります。ピッコロは悟飯の口笛を聞いて苦しみだし、最終的には人格が崩壊してしまうほどでした。
ナメック星人は水だけで生きていけたり聴力がよかったり、それに加えて再生能力も持っている種族です。また、戦闘力の高い個体やドラゴンボールを作るなど特殊な能力を使える者もいます。
あらためて見るととんでもない種族ですが、劇場版『ドラゴンボールZ 超サイヤ人だ孫悟空』では触覚と口笛が弱点であることが判明。スラッグとの戦いでは、ピッコロが触覚を引っ張って相手を弱らせました。
また、口笛は地球人にとっての金属やガラスを擦る音に近いもので、ものすごく不快に感じるようです。といってもずっと聞き続けると人格崩壊するレベルなので、ナメック星人最大の弱点といってよいでしょう。
ただ、口笛が弱点というのは知られてしまえば、簡単にピッコロを無力化できてしまうため、これらの設定は劇場版『ドラゴンボールZ 超サイヤ人だ孫悟空』のみでの登場となっています。原作ではナメック星人は再生したり特殊な能力を使ったりできるうえ、弱点のない超有能種族といえるでしょう。
◆18号の名前はラズリでクリリンとは一回り違う年の差婚
結婚したあともクリリンたちは18号と呼んでいましたが、彼女にはラズリという本当の名前があります。なお双子の弟である17号の名前はラピスで、宝石のラピスラズリが由来です。
この設定は『DRAGONBALLフルカラー人造人間・セル編』第6巻で明らかにされており、ラピスとラズリはストリートギャングをやっていた不良でした。そこをドクター・ゲロに拉致されたうえ、改造されたという過去を持ちます。
クリリンが彼女に惚れたのは、やはり頬へキスされたことが大きいでしょう。しかし、18号たちが被害者であること、セルが完全体になるために吸収される存在という悲しい運命を背負っていることも影響していると考えられます。
そのことで守ってあげたいというクリリンの男気スイッチが入ったわけです。また、不良が捨て犬を拾うといい人に見える法則があるように、強くて凶悪だと思っていた18号がむやみに命を奪わないことを知って好感度が激上がりしたのだと思われます。
18号はクリリンのことを「チビのオッサン」といっていましたが、2人の年齢はクリリンが31歳、18号が17歳あたり。一回りも違う年の差婚ですから、18号の感覚からするとオッサンと感じるのも致し方ないでしょう。
セル戦後17号と18号はどこかへ行ってしまいますが、どのようにクリリンと再会して結婚に至ったのか気になるところです。18号は気がないのでクリリンから会いに行くのは難しく、18号がカメハウスを訪れたのかもしれません。
そのあたりは原作で語られていませんが、ゲーム『ドラゴンボールZ KAKAROT』にはこの2人のイベントが存在します。18号がクリリンを初デートに誘うイベントでは彼女がカメハウスを訪れており、やはり18号のほうから会いに行ったと考えるのが妥当でしょう。
◆人造人間16号には実はモデルがいた
人間をベースにした17号と18号と違って、人造人間16号はドクター・ゲロが1から造ったものですが彼にもモデルがいます。それはドクター・ゲロの息子であるゲボです。
ゲーム『ドラゴンボールZ KAKAROT』のサブストーリー「永遠の友」で、ゲロの息子の名前が判明。さらに、同ゲームの「Z大全集 キャラクターの章 人造人間16号の項目」では、そのゲボが16号のモデルであることが明かされています。
また、映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』ではドクター・ゲロの孫であるドクター・ヘドが登場します。ドクター・ヘドの紹介のときに一瞬家系図が映し出されるのですが、ドクター・ゲボの顔写真は16号にそっくり。
このことからも16号のモデルがドクター・ゲボだったことが分かります。ただし、ドクター・ゲボは悪人でであり、16号の優しい性格とはまったく異なっていたそうです。
なお、ゲボとヘドの関係は伯父と甥ということになります。ゲロの妻と次男の名前は不明ですが、もしこのような一家に自分が生まれてしまったのならせめてリバースと名付けてもらいたいものです。
──国民的作品のため『ドラゴンボール』の原作やアニメは、何度も見たという人は多いでしょう。人気作だけに幅広いコンテンツで展開されていることもあり、原作やアニメでは語られていない情報も多いため、あまり知られていない設定を調べてみるのも一興です。
〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。
※サムネイル画像:Amazonより 『ドラゴンボール 第30巻(出版社:集英社)』