未来トランクスの世界(以下、未来世界)では人造人間の17号と18号は残虐性が高かったものの、原作で描かれた世界(以下、本編世界)より弱かったとされています。
弱かったはずの人造人間にベジータたちが簡単に負けてしまったワケ、悟飯が人造人間を倒すためにドラゴンボールで叶えたかった願いはいったい何だったのかという謎が『ドラゴンボール』の未来編には残されたままとなっています。
◆未来の人造人間は弱かったのに完全敗北
トランクスは本編世界の17号と18号の強さに驚いており、「未来の人造人間は俺でもそこそこ戦えた」と発言していました。
このことから未来世界の人造人間は本編世界ほど強くはないと考えられますが、未来世界ではベジータやピッコロ、悟飯をはじめZ戦士たちは全滅させられてしまいます。
17号と18号が完成してから、彼らは真っ先に生みの親であるドクター・ゲロの命を奪いました。その後戦ったベジータをはじめとしたZ戦士たちは歯が立たず、悟飯はピッコロが生きているうちにドラゴンボールで何らかの願いを叶えようとします。
しかし、それは失敗に終わり、ピッコロもついに最期のときを迎えてドラゴンボールもなくなってしまいました。本編世界と違ってトランクスによって人造人間の存在を知らされていなかったため、襲来に備えて修行や準備をできなかった影響は大きいでしょう。
さらに未来世界の人造人間は本編世界よりも凶悪だったため、ファーストコンタクトで死に追いやられてリベンジのチャンスを与えられなかったことも致命的でした。
しかし、1人生き延びた悟飯は、トランクスを弟子にして修行したあと2回戦っています。いずれも敗北しており、1回目の戦いでは左腕を失って西の都での2回目の戦いでは命を失いました。
ファーストコンタクトで人造人間のヤバさを知ってから、13年ほどの修業期間があったにもかかわらず敗れているわけです。この原因は1対2の戦いを強いられたことも大きかったでしょう。
ただ、これら以外にも本編世界よりも弱いはずの人造人間に、Z戦士たちがことごとく敗れた大きな要素として2つの原因が考えられます。1つはトランクスの勘違い、もう1つは悟空が心臓病で死んでいた影響です。
◆17号と18号が弱かったというのはウソ?
17号と18号が西の都を襲撃したとき悟飯は修業の手応えから勝算がありましたが、人造人間がまだ半分の力も出していないという衝撃の事実を知らされます。
トランクスはこの戦いに参加していなかったため、未来世界の人造人間が本編世界に比べて弱いというのはトランクスの勘違いだった可能性があります。
アニメ版ではトランクスは悟飯の亡骸を発見して、スーパーサイヤ人に覚醒しました。そこからさらに修行しているのでパワーアップはしていますが、それでも人造人間たちに敗北。
この結果、トランクスはブルマが開発したタイムマシンで過去に行く決断をします。このときの戦いでも人造人間が実力の半分程度しか出していなかったなら、本編世界での「未来の人造人間は俺でもそこそこ戦えた」という発言もうなずけるでしょう。
つまり、未来人造人間の本当の実力をトランクスは知らず、戦っているときも手加減されていたということです。それによってトランクスは未来人造人間はそこまで強くなかったと勘違いしただけで、本当は本編世界の人造人間と同程度の強さだったという可能性も考えられるでしょう。
そう考えると本編世界でベジータたちが17号と18号の圧倒的な強さに軽くあしらわれたように、未来世界のZ戦士たちが簡単に負けてしまったのも当然といえます。
◆悟空がいなかったため弱いはずの未来17号と18号に勝てなかった
仮に未来世界の17号と18号が本編世界より弱かったとしても、Z戦士たちが彼らに勝てなかったのは当然といえるでしょう。その原因は悟空が死んでいたことが、実はベジータや悟飯の強さに大きな影響を及ぼしていたからです。
フリーザを倒した悟空を超えようと、ベジータは闘志を燃やして修行していました。しかし、悟空が心臓病で死んでしまったことで目標を失い、もう一生勝てないという喪失感にさいなまれたに違いありません。
実際にセルとの戦いで悟空が死んだあと、ベジータは「オレはもう…闘わん……」と意気消沈しています。未来世界のベジータもまさにこのときと同じメンタル状況に陥ってしまったのだと考えられます。
また、本編世界では修業をさぼって体がなまっている悟飯をベジータが戒めているシーンがありました。このことからもベジータがやる気を失ったことで、悟飯たちにも影響があったのは確かでしょう。
何より悟飯が強くなったのは、精神と時の部屋で悟空と一緒に修業をしたからです。未来世界では弟子のトランクスとの修行だったため、そこにはやはりパワーアップの差に大きな隔たりが生じていたと考えられます。
ピッコロのパワーアップに関しては、本編世界では神様と融合したことがもっとも大きな要因です。未来世界では融合することなく死んでしまったため、人造人間にかなわなかったのは当然といえるでしょう。
やはり悟空が心臓病で死んでしまったことが、ベジータや悟飯の強さにも大きく影響していたと考えられます。トランクスもそういう考えがあったからこそ、タイムマシンで本編世界に悟空の薬を持って行ったのでしょう。
◆悟飯がドラゴンボールに叶えてもらいたかった願い事は?
17号と18号との初対戦後、悟飯はピッコロが生きているうちに人造人間を倒すためにドラゴンボールで願いを叶えようとします。結果的にこの願いは叶わなかったため、悟飯が何を願おうとしていたのかは謎のままとなっています。
悟飯が叶えたかった願いでまず予想されるのは、シンプルに17号と18号から地球を救うことでしょう。しかし、ドラゴンボールは作った神の力を超える願い事は叶えられないため、17号と18号を壊したり別の星に飛ばすといった干渉はできないと考えられます。
次に考えられるのが、悟空を生き返らせることです。ピッコロが死んでしまうため精神と時の部屋は使えませんが、悟空と悟飯が2人で修業を続ければいつかは人造人間を倒せるようになるでしょう。
ただ、この願いを叶えるには問題があります。地球の従来のドラゴンボールでは、1度よみがえったことがある悟空を生き返らせられないからです。
3つ目として考えられる願いは、ナメック星での戦いでベジータやフリーザがドラゴンボールで叶えてもらおうとしていた不老不死。悟飯が不老不死になって修行を続ければ、いつかは17号と18号を超えるほど強くなっていたかもしれません。
トランクスを育てれば修行の効率も上がりますし、いずれは人造人間と2対2で戦えるようになります。ただ、これにも問題はあり、悟飯たちが人造人間を倒せるようになるまで、地球人の犠牲が莫大になることです。
もしトランクスが犠牲になれば、残された戦士は悟飯1人。それでは悟飯が人造人間たちを超えられるようになるまでに、地球人が全滅している可能性もあります。
もっとも確実な願いは、ナメック星からデンデを地球に呼び寄せることでしょう。本編世界ではセルゲームの直前に、悟空が新ナメック星に行って新しい地球の神様になってもらうべくデンデを連れて来ました。
デンデが神様になって新しいドラゴンボールを作り改良すれば、悟空も生き返らせられます。精神と時の部屋も使えますから、たったの1日で大幅なパワーアップができるでしょう。
本編世界ではそれによって悟飯は完全体セルをも圧倒しているくらいですから、17号と18号にも勝てることマチガイナシ。仮に人造人間がデンデの命をねらいドラゴンボールや精神と時の部屋が使えなくなったとしても、最初の願いで悟空さえ生き返らせれば勝利は確実です。
本編世界で2人が精神と時の部屋で修業したのは1日、つまり1年分となります。悟空の瞬間移動で悟飯と一緒に新ナメック星にでも行って、1年間修行すれば勝てるようになるでしょう。
そもそもデンデが死んでも悟空が生きていれば、次なる地球の神を連れて来てドラゴンボールや精神と時の部屋を復活させるという裏技も可能です。悟空はほかの戦士たちの目標というだけでなく、瞬間移動での裏技という意味でも地球の危機に対して唯一無二のかけがえのない存在だったといえます。
──『週刊少年ジャンプ』のテーマは「友情・努力・勝利」であり、『ジャンプ』作品の主人公にはライバルの存在はつきものです。悟空を失った未来世界の歴史は人が成長するにはよき友、つまりライバルと切磋琢磨することが重要だと教えてくれているのでしょう。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。X(旧Twitter)⇒@z0hJH0VTJP82488
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