悟空は多くの戦闘を経験してさまざまな敵とまみえましたが、本気でブチギレるのはいつもクリリンが死んだときです。それに対して悟空はチチとキスしたこともないという疑惑があり、奥さんよりクリリン愛のほうが強いのではないかと感じさせられます。
◆タンバリンに向けた明らかな敵意
クリリンの命を奪ったタンバリンに対して、悟空は「オラのドラゴンボールとクリリンの命をかえせ!!!」と激怒。これまでの戦いで敵の命を奪うことに積極的ではなかった悟空が、明らかな敵意を見せたことに驚いたファンも多いでしょう。
本来なら天下一武道会が終わって腹ごしらえをするはずですが、悟空の頭からそんなことはぶっ飛んでタンバリンを追おうとします。このとき師匠である亀仙人が強く制止しますが、まったく聞く耳を持ちませんでした。
これまでの修業や戦いで悟空は亀仙人の教えをよく守っており、その素直さが成長につながったといえるでしょう。しかし、亀仙人の制止はまったく耳に届かず、タンバリンを追って行ってしまったことからクリリンの死によって悟空が完全にブチギレていたことが分かります。
怒りまかせに挑んだ1度目のタンバリン戦では負けてしまいますが、ヤジロベーと出会って腹ごしらえをしてからの再戦では勝利。かめはめ波でタンバリンを跡形もなく消し去り、宣言通り死に至らしめました。
本来悟空は強敵と戦いたい、強い相手との戦いはワクワクするという気持ちを抱いていることが多いです。その悟空がタンバリンを倒すことを前面に押し出したというのは、それほどクリリンのことを大切に思っていたということでしょう。
◆クリリンの死がきっかけでスーパーサイヤ人に覚醒
フリーザとの戦いでクリリンが爆死させられ、その怒りによって悟空は伝説のスーパーサイヤ人に覚醒しました。「クリリンのことか───────っ!!!!!」のブチギレシーンで、悟空のクリリン愛の強さを感じ取ったファンも多かったと思われます。
ナメック星での戦いではピッコロやベジータ戦を通して、フリーザの圧倒的な強さを目の当たりにさせられます。さらにベジータは再三にわたって、スーパーサイヤ人の伏線を張っていました。
このことから悟空がスーパーサイヤ人になって、フリーザを倒すというストーリーを予測していたファンは多かったでしょう。そのため、どのようにしてスーパーサイヤ人に覚醒するのかが焦点でした。
息子である悟飯が死ぬ展開も考えられましたが、1度も死んだことがないので地球のドラゴンボールで生き返らせられます。フリーザ戦のときの悟空は、ナメック星のドラゴンボールなら同じ人を何度でも生き返らせられることをまだ知りませんでした。
タンバリンのときでさえあれだけブチギレたわけですから、もう今度はクリリンが生き返らないという事実は悟空にとって衝撃だったでしょう。それ以上に悟空にとってクリリンは一緒に亀仙人のもとで修業した仲間であり、同年代の初めての友達でもありました。
一緒に修業をした期間は8ヵ月ほどでしたが、同じ釜の飯を食いながら過酷な日々を過ごしただけあって特別な存在だったのだと考えれれます。そのため、フリーザにクリリンを木っ端みじんにされた怒りによって、スーパーサイヤ人に覚醒するのも納得です。
また、悟空のクリリン愛を強く印象づけたのが、『ドラゴンボール』の中でももっとも有名ともいえるあのシーンです。クリリンが死んだ直後の怒りで悟空がスーパーサイヤ人に覚醒、その後追い詰められたフリーザに挑発されたことで「クリリンのことか───────っ!!!!!」と怒りが再燃。
漫才やバラエティなどテレビで芸人が使うこともあるこのセリフが、強く印象に残っている人も多いでしょう。『ドラゴンボール』ファンにとっては、悟空の怒りが再点火したインパクトあるシーンであり、それだけクリリンへの強い想いが感じられる場面となっています。
◆驚くほど冷静だったナッパ戦
サイヤ人の地球襲来危機では、悟空が到着したときには既にヤムチャや餃子、天津飯、ピッコロが死亡。悟空はそれなりに怒りを見せて彼らのうらみを晴らすべく報復していましたが、手加減していたのは明らかで最終的に気絶したナッパを生きたままベジータに返していました。
到着した悟空はピッコロ、天津飯、ヤムチャの亡骸を見つけ、餃子が木っ端みじんになったことを知ります。しかし、思いのほか冷静でまずはクリリンと悟飯に仙豆を食べさせ、2人の成長ぶりを讃えました。
ナッパとの戦いに向かう悟空を見て、クリリンは「あれほどの怒りを見せた悟空は初めてだ。俺たちの立ち入る隙がない」と述べています。しかし、これはクリリンが自分が死んだときの悟空の反応を知らなかったから出た言葉でしょう。
クリリンが最初に死んだときは我を忘れるくらいブチギレており、それに比べこのときは驚くほど冷静です。ナッパを圧倒して餃子やヤムチャ、天津飯、ピッコロのうらみを一応晴らしますが、悟空はあくまで地球から出て行くことを要求するスタンス。
結局、温存していた界王拳を使ったのもナッパがクリリンや悟飯をねらったときでした。その攻撃でもナッパにトドメをさしておらず、明らかに死なせないようにしています。
フリーザを見逃そうとしたことからも、あまりに実力差があると悟空はしらけて戦う意欲がそがれてしまうのかもしれません。しかし、ナッパの手によってピッコロが死んだためドラゴンボールを使えず、天津飯たちを生き返らせられない状況となっていました。
それにもかかわらず、クリリンが最初に死んだときとは怒り具合が雲泥の差だったといえるでしょう。長い付き合いであるはずのヤムチャ、死闘を繰り広げた天津飯やピッコロたちと比べてクリリン愛の強さが際立ちます。
◆悟空はチチとキスしたことすらない?
悟空はチチと結婚してから彼女に頭が上がらなかったり、悟飯の教育方針では意見が合わなかったりするシーンが多いです。2人の関係が描かれたシーンが少ないというのもありますが、ベジータの愛妻家ぶりがしっかり表現されていることを考えると、悟空のチチへの愛情よりクリリン愛のほうが勝っているようにも見えてしまいます。
しかも、悟空はアニメ『DRAGON BALL超』の第60話で、トランクスがマイに口移しで仙豆を食べさせているのを見て「ひゃあトランクス、よく口と口くっつけんなあ」と発言。キスをしたことがないのか聞いてきたベジータに、「え、あったりまえだろ」と答えて呆れさせています。
このため、悟空は奥さんであるチチにキスをしたことがない疑惑が浮上しました。ただ、アニメ『ドラゴンボールZ』の147話では、悟空がチチにキスをしたと思わせるシーンもあります。
それは心臓病から復活した悟空が再び戦場に戻るとき、付きっ切りで看病してくれていたチチにキスをするというアニメオリジナルシーンです。しかし、キスシーンが直接描写されたわけではなく、近づく2人を亀仙人が目を覆いながら見ているという形で表現されています。
このことから悟空とチチがキスをしたと推察され、ファンの間では『DRAGON BALL超』でのセリフと矛盾すると話題になりました。おそらく2人がキスをしているのは確かでしょうが、唇を重ね合わせたとは限りません
第23回天下一武道会で悟空が結婚したとき、チチは彼の頬にキスしていました。悟空の男女のスキンシップに関する知識は、100%チチから与えられたものと考えて間違いないでしょう。
そのため、悟空はキスとは愛情表現のためのものだと理解はしているものの、頬にするのだと認識している可能性が高いです。『ドラゴンボールZ』の147話でも唇にはしておらず、頬にキスしたのだと解釈すれば矛盾は解消されるでしょう。
そもそもチチとの結婚は悟空の勘違いからであり、好意というよりは約束していたからという理由でした。献身的に看病する姿や悟空が死んだときに号泣する姿から、チチから悟空への愛の深さは見られます。
もちろん悟空も人並みにチチに愛情は抱いているでしょうが、ベジータが見せるブルマへの想いほど明確に描かれてはいません。そのため、いくつもの戦場をともにした友人であるクリリン愛のほうが強いと感じてしまうのも仕方ないでしょう。
──アニメやドラマで妻が旦那に「私と仕事とどっちが大事なの」と迫るシーンがありますが、「お願いだから働いて」といわせる男よりマシでしょう。悟空はチチに「私とバトルとどっちが大事なの」と「お願いだから働いて」の両方のセリフをいわせるような生き方をしており、そういう意味では生き様も圧倒的な強者といえるのかもしれません。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。X(旧Twitter)⇒@z0hJH0VTJP82488
※サムネイル画像:Amazonより 『「ドラゴンボール」第24巻(出版社:集英社)』