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 改めて原作を読み返してみるとセル編でZ戦士はヤラカシばかりしており、その中でも誰が致命的なミスをしたのかドラゴンボールファンの間でもしばしば話題になります。自らの目的や感情を優先してしまったため結果的にセルに逃げられたり完全体にしてしまったり、どんどん自分たちの首を絞めて追い詰められてしまいました。

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◆ピッコロの本当のヤラカシ

 セル編のヤラカシとして印象深いのは、神様と融合してパワーアップしたピッコロがセルを追い詰めながらも取り逃がしてしまったことでしょう。しかし、それより致命的だったのは、ピッコロの細胞を取り込んだセルに再生能力があることを教えてしまったミスです。

 ピッコロは神様と融合してパワーアップすると、完全にセルの実力を上回ります。この余裕から策を用いて、セルの口から正体や目的を聞き出すことに成功しました。

 ここまでは良かったもののセルの放った太陽拳で目をくらまされて、みすみす逃してしまいます。セルは突如現れた謎の生命体だったため、正体や目的を聞き出そうとする判断は妥当でしょう。

 しかし、その経過でセルが悟空たちの細胞を取り込んでいることを知ったにもかかわらず、太陽拳で一杯くわされたのは大きな失態でした。なぜならピッコロがマジュニアとして参加した第23回天下一武道会で、太陽拳を使ったのは悟空だったからです。

 これをピッコロが天津飯の技と知っていた理由は謎であり、技の性質上スキンヘッドから放たれるイメージを勝手に結びつけてしまった可能性もあります。ただ、ピッコロの本当のヤラカシは、セルに再生能力があることを教えてしまったことです。

 アニメでは吸収された左腕を再生させるときに、自分の細胞を取り込んでいるのにその能力について知らなかったセルをあざ笑っています。その後、セルはベジータや悟空の攻撃で体の大部分が消滅したとき、この再生能力を使って復活しました。

 セルが再生能力について知らないままであれば、彼らの手によってあっさり勝てていたと考える人も多いでしょう。ただ、結局セルは再生能力を知らなくても、いざというときには本能的なものによって勝手に復活していたと考えられます。

 そのため、ピッコロの再生能力に関してのヤラカシは、それほど影響なかったと考えてよいでしょう。ただ、策に溺れてセルを取り逃がしてしまったのは詰めが甘いといわれても仕方ありません。

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◆キスで籠絡されてしまったクリリンのヤラカシ

 クリリンはブルマから人造人間の機能を止める緊急停止コントローラーを託されますが、以前、18号から頬にキスされていたことで簡単に籠絡。緊急停止コントローラーを自ら壊してしまい、間接的にセルが完全体となる手助けをしてしまいました。

 クリリンがこのときに役目を果たしていれば、セルが完全体になるのを防げていたと考えられます。しかし、セルが完全体になれば格段に強くなれることを知ったベジータが、クリリンのせいでそのチャンスを失ったと分かれば激怒していたでしょう。

 完全体セルと戦いたいベジータが暴れまくれば、クリリンやトランクスたちでは止められません。結局のところ、ブルマの手によってしぶしぶ18号を再起動させる展開になっていた可能性も考えられます。

 また、結果的ですが18号はもともと人間であり、正確にいえば人造人間というより改造人間でした。望んで人造人間になったわけでもなく、むしろドクター・ゲロによる被害者です。

 そのため、クリリンが彼女を強制停止させずに逃がそうとしたのは、1人の少女を助けようとした行為に他なりません。一見、頬にキスされた純情過ぎるおっさんが、若い女に簡単に籠絡されて判断を間違ってしまったように映ります。

 しかし、これまで修行や戦いに明け暮れて、あまりロマンスがなかったことを考えると仕方ないでしょう。何よりセルを倒したあとのクリリンと18号の幸せぶりを考えると、彼の判断を責める気にはなれません。

 もしあのときクリリンが緊急停止コントローラーを使っていれば18号は破壊されていた可能性もあり、それはドクター・ゲロの被害者である少女の命を奪うに等しい行為です。そう考えるとクリリンのヤラカシは結果的に18号を救ったわけですから、ファインプレイだったといえるでしょう。

◆悟飯に地球の未来を託そうとした悟空のヤラカシ

 悟空は秘められた力と今後の地球の未来も考えて、悟飯にセルを倒させようとしました。しかし、悟飯の詰めの甘さから自分が死ぬこととなったうえ、その後の地球を守る役目も結局悟空が担うことは変わりませんでした。

 本来、悟空は強敵を前にすると燃えるタイプであり、これまでも圧倒的な差を見せられても絶望するどころか逆にワクワクしています。しかし、セル編での悟空は1度戦っただけで自分はかなわないとあっさり引き下がりました。

 悟飯の秘められた力に気づいて勝算があったのでしょうが、悟空であればもっと修行して自分が戦いたいという気持ちもあったでしょう。このことから悟空は今後の地球の平和を考えると自分は一線から引いて、あとのことを悟飯に託そうという気持ちがあったのだと考えられます。

 戦闘向きではない悟飯の甘さからセルが地球を巻き込んで自爆をはかろうとし、その結果悟空も死ぬこととなりました。結局、最終的に地球を救ったのは悟空であり、悟飯にあとを託すという目論見は失敗。

 それだけならまだしも、次の魔人ブウとの戦いでも悟空が中心となって戦っていました。そして、最終的に特大元気玉によって、悟空が魔人ブウを倒して人類を救います。

 そのため、セル戦でも悟空ががんばれば何とか元気玉で倒せていたのではないかと思う人も多いでしょう。最初から悟空が戦ってセルを仕留めておけば、自爆の犠牲になる必要もなかったはずです。

 それでも悟空の思惑どおりに、その後の地球を悟飯に任せられれば良かったのですがそうもいかず……。これでは悟空がセルと一緒に瞬間移動したことで、自爆の巻き添えをくらった界王様も浮かばれないというものです。

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◆セルが完全体になるサポートをしたベジータのヤラカシ

 ベジータは完全体のセルを倒してやると意気込んで、それを阻止しようとするトランクスを妨害。その結果、セルに18号を吸収させてしまい、さらには完全体となったセルに完膚なきまでに叩きのめされるという大失態を犯します。

 修行して超ベジータとなった彼はセルを圧倒してしまったため、あまりの弱さにかえって失望するほどでした。自分の強さに酔いしれてしまったのか、完全体と戦いたいといい出す始末。

 挙句の果てには反対するトランクスを妨害して、セルに18号を吸収させてしまいます。それでも完全体セルを自分で倒せれば問題なかったのですが、今度はベジータが圧倒的な実力差を見せつけられてしまいました。

 「どうしたのだ? 先刻までの勢いは……笑えよベジータ」と挑発されて放ったファイナルフラッシュも、再生能力のあるセルには効果なし。ウヌボレから舐めプして絶望の淵に追い込まれるお家芸は、ベジータの十八番というイメージを確立してしまいます。

 調子に乗らずあっさりセルを倒しておけば地球や人類を救ったのはベジータとなり、今回に限ってはある意味悟空を越えたと認められていたと考えられます。直接的な強さで超えたわけではないので、ベジータとしてはそれでは意味がないのでしょう。

 その気持ちは分かりますが、悟空を超えるために実績を積み上げていくことも大事だと思われます。ベジータのヤラカシは何のフォローもできず、調子に乗っていた瞬間とセルに圧倒されてからの意気消沈ぶりのギャップも印象的です。

 セル編のZ戦士はヤラカシばかりですが、その中でもベジータの失敗は共感できないうえ取り返しがつきません。そのため、セル編での一番のヤラカシはダントツでベジータといってよいでしょう。

 

 ──人生うまくいっているときは、何でも自分の思い通りになると勘違いしてしまいがちです。しかし、これまでもうまくもみ消せたからと調子に乗って同じことをやっていると、このSNS時代ではすべてが掘り返されて取り返しのつかないことになります。そのため、ヤラカシてしまったときは素直に説明責任を果たして、謝罪することが重要だといえるでしょう。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。X(旧Twitter)⇒@z0hJH0VTJP82488

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「ドラゴンボール」完全版 第26巻(出版社:集英社)』

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