世界初のドラゴンボール公式ストアとして11月14日(金)に東京駅一番街にオープンしたばかりの「DRAGON BALL STORE TOKYO」が、現在の『ドラゴンボール』という作品の在り方を表す結果となりました。
というのも、オープンの告知として東京駅内に掲示された『ドラゴンボール』のイラストのクオリティーがあまり高くないなど、SNS上などでは一部で批判的な声が上がっています。
11月30日には『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親である堀井雄二さんとかつて原作者の鳥山明先生の担当編集として知られる鳥嶋和彦さんがホストを務める番組「ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局」内ではイラストの監修に批評的な意見を発表するなど、いまなお話題に──。
鳥山明先生が2024年に亡くなられた今、『ドラゴンボール』の版権とはどうなっているのでしょうか。
◆漫画とアニメーションでは管理が別? 『ドラゴンボール』が今置かれている状況とは
実はここ数年、『ドラゴンボール』の権利関係についてはたびたび報じられている状況にありました。鳥山明先生がまだご存命の時点である2023年に集英社にて『ドラゴンボール』関連の業務を担当する部署に所属していた伊能昭夫さんが独立しカプセル・コーポレーション・トーキョーという新しい会社を設立すると報じられ、『ドラゴンボール』の権利関係自体が変化が起きたとされます。
原作漫画に関連した商品開発は基本的に引き続き集英社が権利を有する一方で、それ以外のTVアニメーションであったりゲームやグッズなどの派生製品の権利をカプセル・コーポレーション・トーキョーが有するとされていました。
そんなカプセル・コーポレーション・トーキョーの活動としては『ドラゴンボール』だけでなく、映画やアニメシリーズに加え、ゲーム製作が行われたばかりの同じく鳥山明先生原作の『SAND LAND』シリーズにも大きく関わっており、作品のさらなるメディアミックス化を発表する“SAND LAND Project”の発表会にも名を連ねています。。
では『ドラゴンボール』関連のアニメーションの権利をカプセル・コーポレーション・トーキョーが独占しているのかといえば、そういうわけでもなく、たとえばアニメーションの製作を担っているのは、かつての放送作品でも製作を担った東映アニメーションが引き続きその多くの製作を担当しています。さらにグッズやゲーム作品ではバンダイナムコホールディングスが製作・販売などを担っていて、2025年の3月には売上が1906億円にまで伸びていることも発表されています。
このように現在の『ドラゴンボール』はいろいろな会社がそれぞれに少しずつ権利を有していて、それらが連携して新たな商品開発やビジネス展開を進めています。これは『ドラゴンボール』に限らず、作品のブランドが大きくなると同傾向へ進んでいく例がほとんどです。規模が大きくなるにつれてビジネスのスケールや動くお金の金額も大きくなるので、新会社の設立といったことが起こると利権関係が移ったりといったことでニュースとなるのです。
◆今後『ドラゴンボール』ブランドはどうなるのか?
そんな中でまさに今回広告として使用されているイラストが悪い意味でも話題となってしまった「DRAGON BALL STORE TOKYO」のような例が起こると、いったいどうやって監修していったのかが話題になってしまいます。
どこが製作したのか、もしくはどこが監修したのか。さらに言ってしまえばそもそもなぜ使われているビジュアルが鳥山明先生のものではないのか、といったところに焦点が当たり、今の『ドラゴンボール』という作品の扱いが見えてきます。
実際、「DRAGON BALL STORE TOKYO」ではアニメーションシリーズの素材を使った商品を取り揃えています。往年のアニメシリーズに馴染みがある人には「おっ」と思わせるグッズも販売されている一方、ジャンプショップといった集英社が管轄する原作者の鳥山明先生のイラストを活用した商品展開を求めていた人にはギャップを感じる商品ラインナップになっています。
作品の規模が大きくなるほど専門店であっても商品傾向が生まれてしまうもので『ドラゴンボール』はまさにそんな渦中にある作品と言えるでしょう。ましてや、現在は肝心の原作者本人が亡くなられてしまった今、“取りまとめる”にもより苦労を要するのは必至です。
今回のビジュアルのクオリティーの話題と同様、今後の『ドラゴンボール』に関連した展開はファンも評価をしっかりしていきたいところです。
──現在『ドラゴンボール』はサウジアラビアに世界初となるテーマパークの建設に取り組んでいる最中です。
サウジアラビアというとなかなか気軽に行けない距離感ではあるからこそ他人事には思えてしまうかもしれませんが、気づいたら「なんでこんなできなの?」と思わせる施設になってる可能性も想像できてしまいます。
「DRAGON BALL STORE TOKYO」の反響なども踏まえて各所でしっかりと連携して、日本がうらやましいと感じるような娯楽施設になってほしいところです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:DRAGON BALL STORE TOKYO公式X(旧Twitter)より ©バード・スタジオ/集英社・東映アニメーション




