ドリームワークス・アニメーションの今後が心配──。

 ドリームワークス・アニメーションは、『シュレック』や『マダガスカル』、近年では『ボス・ベイビー』などのシリーズを手がけたことでも知られるアニメーション製作スタジオです。

 直近では2月7日から新作『野生の島のロズ』の日本公開が始まりました。この映画は、賞レースでも多数のノミネートや受賞を既に果たしており、昨年の公開作品の中でも指折りの高評価作品となっています。

 ドリームワークス・アニメーションといえば海外ではディズニーやイルミネーションといったスタジオとも並ぶ知名度の大きな製作会社なのですが、どうも最近は“順調”と言い切れないようです。

◆大規模なレイオフと製作規模の変化を迎えたドリームワークス

 ドリームワークス・アニメーションといえば、時期によって配給会社が変わっている製作会社です。2000年代はパラマウント・ピクチャーズ、2010年代は20世紀FOX、そして2019年以降はユニバーサル・ピクチャーズが映画の配給を担ってきました。

 数々のヒットシリーズを送り出してきたドリームワークス・アニメーションですが、時期によってヒット作の有無や大小もまちまちで順風満帆に現在に至ったわけではありませんでした。

 近年も成功作こそあれど好調とは言い難い状態です。2015年に500人という大規模なリストラが報道されていましたが、2023年には興行成績の低迷からさらに社員の約4%に当たる70人規模のリストラが報道されています。加えて、ドリームワークス・アニメーションの完全自社製作を終了するといった報道もされており、製作体制が大きく変わっているのは確かなようです。

 直近でも2024年にNetflix映画として発表された『オリオンと暗闇』はフランスのミクロス・アニメーションと製作。海外で1月に公開されたばかりの『ドッグマン(原題)』はミクロスと同じくフランスのテクニカラー・アニメーション・プロダクションと製作。

 そして、2025年公開予定の『バッドガイズ2(原題)』はソニー・ピクチャーズ・イメージワークスとの製作となっており、近年の全て内製の長編作品は『野生の島のロズ』だけです。

 このままだと、『野生の島のロズ』が完全自社製作をした最後の作品になってしまうかもしれないという状態です。多くの名作を手がけてきたと思うと、少し寂しい話です。

◆良いニュースが続き始めた? 起死回生なるか!

 一方でドリームワークス・アニメーションもずっと悲しいニュースが続いているわけではありません。

 昨年海外では劇場公開された『カンフー・パンダ4 伝説のマスター降臨』は世界興行収入5億ドル規模の大ヒット。最後の内製作品となるかもしれない『野生の島のロズ』も3億ドル以上の成績を収め、日本でも興行が始まったばかりなのでまだまだこの数字は伸びていきます。

 しかもその『野生の島のロズ』は前述の通り、アニメーションをメインとしたアメリカの賞「アニー賞」で最多ノミネートを果たしていたりと、『インサイド・ヘッド2』や『モアナと伝説の海2』など興行成績では劣った作品たちに勝る賞レース成績を経ています。そういった点からもオスカーの長編アニメーション部門でも特に有力な作品として名前が上がっている状態です。

 それに加えて1月31日に全米公開がスタートした『ドッグマン』は興行収入3600万ドル(約54億円)規模の週末成績では1位のスタートを果たしており、期待を上回る成績として報道されています。

 製作背景ではネガティブなニュースが続いている一方で、直近で発表されている映画たちの成績では軒並みポジティブなニュースが続いているのは幸いです。

 どうしても映画の評判や成績が即座に現場に反映されるとはいかないわけですが、少なくともドリームワークス・アニメーションが今後も起死回生を果たしていく可能性は決して低くはないでしょう。

 日本での興行についても同じようなことがいえます。2023年製作の『トロールズ バンド・トゥゲザー』や、2024年製作の『カンフー・パンダ4 伝説のマスター降臨』はいずれも日本で劇場公開されませんでした。

 しかし、そんな中で『野生の島のロズ』が新規のシリーズでありながら日本でも劇場公開を果たせたのはとても嬉しいニュースです。こういった上向きな変化から今後も日本の劇場でドリームワークス・アニメーションの活動が見られるかもしれません。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteではアニメ映画ラブレターマガジンを配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『ドリームワークス』より
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