『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の物語は一つだけじゃなかった!?　いくつも違ったバージョンがある？

　『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が2021年3月に公開されて、早くも4年が経過した今年、『エヴァンゲリオン』シリーズがTVアニメ版の放送開始から30周年を記念して、新たな商品の発売が発表されました。それが『EVANGELION 30th Anniversary Movie Collection』。

　新劇場版シリーズ4作品のディスクを一挙にまとめて収録した商品なのですが、エヴァシリーズらしい、こだわりの“コンプリート”商品になっています。

◆もっとも豪華な初回限定版はディスク28枚収録！　バージョン違いまで網羅

　『EVANGELION 30th Anniversary Movie Collection』は全部で3バージョンの商品の発売が発表されています。

　通常版にあたる「『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』＋『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 Blu-ray BOX（Blu-ray）』」はシンプルに新劇場版シリーズ4作品と、映像特典となるスペシャルディスク2枚を収録した6枚組の商品です。

　これに加えて、初回限定版となる「『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』＋『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 Complete Blu-ray BOX」ではなんと劇場公開時から徐々にアップデートを施したバージョン違いをそれぞれディスク化し、さらに特典ディスクが1枚加えた18枚組の商品です。

　そして、さらに豪華な初回限定版となる「『新世紀エヴァンゲリオン』＋『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』＋『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 Full Complete Blu-ray BOX」では新劇場版シリーズに加えて、TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズと劇場版シリーズを加えたディスク10枚をさらに封入した、合計28枚組のまさに“フルコンプリート”の名に違わぬ内容となっています。

◆新劇場版シリーズはなぜそんなにバージョン違いがあるの？　実は初商品化の物も

　新劇場版シリーズのみを網羅したコンセプトのComplete Blu-ray BOXですら、作品数としては4作品しかないのにディスク18枚組になっているのは、よくよく考えるとなぜそんなにバージョン違いがあるのかと驚かされます。

　もともと新劇場版シリーズは劇場公開時やパッケージとして販売するタイミングで映像や音声の調整が施されてきました。そのアップデートの度にどのバージョンなのか細かくナンバリングされていて、こだわりのある人にも収録されている映像がどのバージョンなのかが分かるようにできています。

　今回のBOX商品の登場で初めて商品化されるバージョンも複数存在します。中でも、新劇場版シリーズがそれぞれ劇場公開時点で最初に発表した最初期のバージョンは、商品化のタイミングでアップデートが施されて実は商品化されていませんでした。

　それが今回、『序』『破』『Q』『シン』と4作品とも劇場公開版を初めて映像商品化します。意外にも原体験として劇場で観た人も多いであろうバージョンが今回初めて自宅で鑑賞できるようになるわけです。

　バージョンの差によってストーリーといった大筋が変わるわけではないとはいえ、新劇場版シリーズは細部にまでこだわってこれまで更新されてきました。そういったこだわりを比較して体験できるソフトという点ではアニバーサリーイヤーにふさわしい試みの商品と言えます。

◆実はそれ以外のバージョンも存在する？　さらにマニアックなバージョンたち

　バージョン違いのこだわりに関しては、実は今回収録されていないバージョンの存在からもよく分かります。その収録されていないものの分かりやすい例はTV放送バージョンです。

　新劇場版シリーズは過去に金曜ロードショーといった地上波の番組でも複数回放送されています。しかしTV放送であるために爆発のシーンなどの発光……、とりわけ点滅させるようなシーンは制限が厳しいので、劇場での公開時から映像の発光の具合などの調整が必要です。新劇場版シリーズはそういった調整を施し、そのうえで別バージョンであることが分かるように、バージョンナンバーに「' （アポストロフィー）」を表記した放送限定のバージョンが作られ流されました。

　もちろん今回発売される商品は地上波での放送でもない上に、本来の映像効果を弱める調整にあたるのでそういったバージョンをわざわざ収録はしていませんが、それぐらい『エヴァンゲリオン』シリーズは“その都度の発表に合わせて調整を施している”作品であり、さらに“どのバージョンなのか”を明示してくれる作品なのです。

〈文/ネジムラ89〉