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 歴代の劇場版エヴァシリーズを上映する“月1エヴァ”の企画もついに新劇場版シリーズへと突入。その第1作目にあたる『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007)が11月14日(金)から公開が始まりました。

 新劇場版の四部作の中でも内容の大半がTVアニメシリーズに沿っている作品ということで「見逃してもいいかな」なんて思う人もいるかもしれませんが、ただのリバイバル上映として捨て置けないポイントや注目しておきたい点が多々ある作品です。

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◆そもそも新劇場版として再映画化されたのはなぜか

 今となってはなぜ新劇場版が作られたのか、という話が懐かしいほどになっていますが、新劇場版シリーズは当初は“現代版のエヴァンゲリオン世界を構築する”という気概のもと、製作がスタートした企画でした。

 かつては『エヴァ』といえばTVアニメシリーズ製作時のガイナックス社の作品という印象が強かったのですが、この新劇場版シリーズの製作のタイミングで今の製作元である株式会社カラーというスタジオが立ち上がり、心機一転して臨んだという意欲作です。

 既に『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』(1997)で従来のシリーズの完結を描いており、そこから約10年を経たタイミングでスタートした新劇場版シリーズですが、当時も「なぜ新しく作るのか」という疑問というよりは、TVアニメにしても劇場版にしても“衝撃の結末作”として考察本などが出版されたりしていた伝説的な作品に位置しており、「あれをまたなぞっていくのか?」という衝撃の方が大きかった印象が強いです。

 『シン・エヴァンゲリオ劇場版』が公開された今では単純なリメイクでなかったことは周知の通りですが、新劇場版シリーズの第1作目となる『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』のころはまだ顛末自体はTVシリーズに近い内容だったこともあり、“リメイク”シリーズという認識を持っていた人がまだ多かったです。そういう意味では今回上映される『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』は今と公開当時では認識が特に大きく異なる作品ともいえます。

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◆ただのリメイクではないことは『序』の細部からも分かる!?

 相対的に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が後続の新劇場版シリーズと比べると“リメイク”的な印象が強くなってしまうのは否めないところですが、実は既ににかつての『エヴァンゲリオン』シリーズからかなり新しくなっていることは、ディテールを追っていくと顕著に分かるところです。

 TVアニメシリーズでは序盤ではまだ登場しないはずのキャラクターが登場していたり、時代設定などが明確ではないことや、すでに近郊の海が真っ赤になっているなど設定部分での大胆な変更があったりと、筋としては従来の物語を追っているようで実は既に全然違う物語が始まっていたことは、その後を知っている人こそ余計に際立って見えるところでしょう。

 顛末が分かっている上でも実は残されている謎なども多いです。冒頭に登場する町中に残された巨大な人型の白線の正体などは明言されておらず、後に公開されたオーディオコメンタリー企画などでも、庵野監督に聞いてみないと分からないと語られるなど、その正体が未だ不明な要素もあります。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』まで観たという人ほど、そういった細部を再考できるという意味でも鑑賞は楽しめるでしょう。

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◆映画館だからこそ注目したいのはその“光”!

 そして映画館で観られるという点は、TV放送やソフト化、配信などを経た今となってもかなり有意義と言えます。

 TV放送などではミサイルの着弾シーンなどで発光するシーンは、色味をマイルドに抑える必要があるので独自の処理が加えられてしまい、ソフトでの鑑賞をしないと、本来のねらい通りの映像として体験できませんでした。“解像度が高ければ高いほど迫力は倍増する”というこだわりを持って製作されているシリーズなので、劇場で観られるのであればそれが一番といえます。

 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の光の描写のインパクトは特に劇場ならでは。真っ暗な空間で映像を観るという映画の体験自体が、作品内容と特にシナジーを得ている作品でもあり、終盤で描かれるヤシマ作戦のクライマックスにおける発光ぶりは歴代シリーズの中でも特に凄まじいことになっています。

 実はシンジの搭乗する初号機の緑色の部分が発光し始めたのもこの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』からでした。TVシリーズ放送時はセルアニメでは光る部分を動かすのは、色味を少しでも間違えると点滅したように見えてしまうので難しく、実現しなかった念願の設定でした。

 フォーマットという点でも、手法の変化という点でも、テレビでは到達できなかった“光”が体験できるという意味で「映画館で観る」ことに価値が乗ってくる──。そんな作品が『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』なのです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeよりキャプキャ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 Angel of Doom PV』(KING RECORDS公式チャンネル)(C)カラー/EVA製作委員会 (C)カラー

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