<この記事は『小説 葬送のフリーレン ~前奏~』のネタバレを少し含みます。ご注意ください。>

 4月17日に発売された『小説 葬送のフリーレン ~前奏~』は、原作者・山田鐘人氏の監修のもと、フリーレンたちが冒険に出る前の前日譚が描かれています。

 本書では本編で描かれていない戦いやキャラ同士のやり取りが描かれ、倒された魔族の強さが見直されたり、ファンの間で疑問とされていたことが解決されたりしました。

◆シュタルクが何年も村に滞在できた理由

 本書では、シュタルクが中央諸国リーゲル峡谷沿いにある村へ滞在しているときの様子が描かれています。

 シュタルクはフリーレンらの仲間になる前、中央諸国リーゲル峡谷沿いにある村へ滞在していました。彼は村の近くに根城を持つ紅鏡竜が村を襲った際に助けへ入り、それ以来、村人から英雄として慕われて、竜の抑止力として村にいたのです。

 しかし、安全に暮らしたい村人にとって竜の抑止力になるより、竜を退治してくれたほうが嬉しいハズ。それなのに、なぜ竜を倒さないシュタルクは英雄と慕われたまま、3年間も村に滞在できたのでしょうか。その答えが本書にシュタルクと村人のやり取りを通して描かれています。

 本編でも描かれた通り、シュタルクは自身が強いという自覚がなく、竜と対峙したときも竜の気まぐれで助かったと思い込んでいました。

 しかし、村人はそんなシュタルクに気づかず、村の希望として英雄扱いします。こうして偽物の英雄となったシュタルクですが、臆病だけど優しい彼は嘘を本当にするために日々修行に励むのです。

 このほかにも、シュタルクの人柄が分かるエピソードが描かれており、村人たちが彼の人柄を慕っていたことがよく分かります。本編でもシュタルクはどの村に行っても慕われて別れを惜しまれていますが、本書を読めばその理由がよく分かるでしょう。

◆実は強キャラだったアウラ

 本編ではフリーレンと戦って敗れたアウラですが、本書では魔王直下の大魔族「七崩賢」の名に恥じぬ姿が描かれていました。

 本編でのアウラは活躍の機会に恵まれず、読者から「弱い」と評価されています。

 たとえば、アウラが北側諸国のグラナト領を攻めて、フリーレンと戦ったときのことです。このときのアウラは自信満々にフリーレンへ戦いを挑んだのにもかかわらず、あっさりと負けてしまいました。さらには、自身の魔法を逆手に取られ、自害を命じられて死んでしまいます。この一連の流れから、アウラは弱いといわれるようになってしまいました。

 しかし、小説ではそんなアウラの評価が一変するような姿が描かれています。それは、勇者ヒンメル一行との戦いの様子です。

 本編ではアウラはこの戦いで配下のほとんどを失い、消息不明になったと語られていました。しかし、本書では一連の戦いの流れが描かれており、なんと途中まではアウラが数の差でヒンメルたちを押していたのです。ヒンメルたちの実力は仲間同士でも「化け物」と称するほど。そんなヒンメルたちを圧倒するアウラの実力は、七崩賢の名にふさわしいものでしょう。

 そもそも、弱いと思われがちなアウラですが、実際には500年以上生きた大魔族なので、彼女よりも魔力が大きい人はなかなかいません。もし、仮にアウラより魔力が大きくても、フリーレンぐらい魔力制限がうまくなければ、アウラをあざむけないでしょう。これらのことから、アウラは戦った相手が悪かっただけで、作中でも上位の実力といえます。

◆フリーレンが師匠の命乞いを聞きなれていた理由

 本編でフリーレンが「師匠の命乞いは聞きなれていた」と言っていましたが、本書でその理由が明かされました。

 本編でフリーレンが「師匠の命乞いは聞きなれていた」と語ったのは、フェルンに幻影鬼(アインザーム)のことを話したときです。フリーレンはフェルンへ死者の幻を見せる幻影鬼が、過去に命乞いをする師匠(フランメ)の幻影を見せてきて、これを撃ったと語りました。

 そのときにフリーレンは「師匠の命乞いは聞きなれていたからそこまで罪悪感とかはなかったけどね」と言っていたのです。

 その後、フリーレンがフランメの命乞いを聞きなれている理由は明かされず、長らくファンの間でも謎とされていました。

 フランメは歴史に名を残す大魔法使いで、その実力は彼女が1000年以上前に作った結界はいまだに破られていないほどです。なぜ、そんな強さを持つ偉大な魔法使いが頻繁にフリーレンへ命乞いしていたのでしょうか。

 小説ではそんな謎が明かされ、実際にフランメがフリーレンへ命乞いする姿が描かれています。フランメの命乞いは実に彼女らしい上から目線の命乞いで、フリーレンが聞きなれているのにも納得でした。

 また、本書ではほかにも、フランメがフリーレンに投げキッスを教えた経緯が語られています。フリーレンがフランメのもとにいたころのことは、本編でもあまり描かれていないので、小説でしか見られない貴重なシーンといえるでしょう。

 

 ──このほかにも小説にはハイターと暮らしていた頃のフェルンや、魔法学校時代のラヴィーネとカンネが描かれています。本書を読んでから本編を見ると、キャラクターや小話などの見方が変わり、違った角度から本編をより楽しめるでしょう。

〈文/林星来 @seira_hayashi

《林星来》
フリーライターとして活動中。子供の頃から培ってきたアニメ知識を活かして、話題のアニメを中心に執筆。アニメ以外のジャンルでは、葬儀・遺品整理・金融・恋愛などの記事もさまざまなメディアで執筆しています。

 

※サムネイル画像:Amazonより


アニメ『葬送のフリーレン』公式サイト
© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

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