2月13日に映画『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』が公開され、SF時代劇コメディとして連載が終了した今もなお人気を集める『銀魂』ですが、実は連載開始前の初期構想では、物語のメインは「万事屋」ではなく「真選組」をメインとした物語が考えられていました。
◆最初はギャグなし!? 大河ドラマ便乗型の「真面目な時代劇」
その事実は、コミックス第6巻に収録された作者のひとりごとコーナー「すっぱだか銀魂」にて明かされました。
作者である空知英秋先生によると『銀魂』は連載前のプロトタイプ段階では、今のようなギャグ要素も、SF要素もほとんどない、極めてストレートな「新選組時代劇」として構想されていたのです。
当時、NHK大河ドラマ『新選組!』が放送されていたこともあり、それに便乗する形で企画された物語。主人公として想定されていたのは、容姿だけは坂田銀時に似ていたものの、万事屋の銀時ではなく、新選組の「土方歳三」ポジションの浪人でした。
物語の内容も、のちの志村新八となる「永倉新八」が剣術修行のために上京し、「近藤勇」ら試衛館の面々と出会ってともに戦うという、いわば正統派に近い構成でした。さらに、この時点での新選組局長・近藤はのちの長谷川泰三になっていたそうです。
しかし、いざプロットを固めようとした段階で、空知先生はある壁に直面します。それは、史実の新選組に対する思い入れが強すぎたことによる「キャラを崩せない」という悩みでした。
歴史上の人物を忠実に描こうとすると、どうしてもシリアスになりすぎてしまい、空知先生が得意とする独特のギャグやナンセンスな展開を盛り込む余地がなくなってしまったのです。
そこで先生は、新選組をメインとしない大胆な決断を下します。そして生まれたのが、史実のしがらみから完全に自由なオリジナルキャラクター、銀時・神楽・新八という万事屋トリオでした。
さらに、新選組のキャラクターたちも、名前や設定をあえて史実から少しズラす(近藤勇→近藤勲、土方歳三→土方十四郎など)ことで、「真選組」として再構築。これにより、土方十四郎がマヨラーだったりと、やりたい放題にキャラを崩したりすることが可能となったといえます。
当初の「大河便乗型」という安易な出発点から、悩み抜いた末に生まれた「ズラし」の発想。それこそが、歴史ファンもギャグ漫画ファンも唸らせる、何でもありの『銀魂』ワールドを生み出す決定打となったのです。
──『銀魂』は最初から「銀時のギャグ漫画」として生まれた作品ではなく、もともとは新選組を主軸にした真面目な時代劇構想だったのです。その大胆な方向転換こそが、歴史モノでもバトルでもなく『銀魂』という唯一無二の作品を生み出した最大の分岐点だったといえるでしょう。
〈文/凪富駿〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。
※サムネイル画像:Amazonより 『「銀魂」第77巻(出版社:集英社)』



