既に漫画原作も、アニメシリーズの展開も一度“完結”を迎えていながらも、ここに来て2026年に『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』の劇場公開が発表されました。原作単行本の最終巻が発売されたのが2019年。アニメシリーズの完結編である『銀魂 THE FINAL』が上映されたのが2021年。『銀魂』は各媒体での完結が謳われてから既に時間が経っているのですが、いまだに継続して新作アニメシリーズを展開できる理由はなんなのでしょうか?
◆完結してもファン向けのコンテンツの提供を続けていた
結論からいえば、『銀魂』ほど原作やアニメシリーズのコンテンツが完結を迎えていながらも、後続してファンが楽しめる新企画を発表しているコンテンツは珍しいでしょう。
『銀魂』のアニメシリーズの完結編である映画『銀魂 THE FINAL』は2021年1月に公開し、8月にはディスクリリースを果たしているのですが、完結の余韻はわずか1年ばかり。集大成的なイベントとして2023年の3月に「銀魂 後の祭り2023(仮)」と題した両国国技館で行う恒例のイベントが行われました。
集大成といいながらもこのイベントにて早くもスピンオフ小説である『3年Z組銀八先生』のアニメ化が発表され、それがこの2025年10月から満を持して放送されます。
加えて、映画館でのイベント展開も『銀魂』は継続して行なっていました。
2023年11月からは『銀魂オンシアター2D』と題して、TVアニメの中でも長編シリーズとなったエピソードを1本の長編に再編集して上映する企画を半年に一回以上のペースで継続して行なっていました。
この上映では再編集版だけでなく、ここだけのおまけパート映像の上映であったり、週替わりの入場者プレゼントや新たなグッズ展開もしたりと、ただのリバイバル企画ではない充実した内容となっていました。
これらも布石だったのではないか、という新作として2026年に『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』の劇場公開が発表されました。発表された予告編では原作漫画の「吉原炎上編」では登場していなかったキャラクターの出演も明かされていたりと、既に映像化を果たしていたエピソードを完全新作として楽しめる内容となっています。
『銀魂』といえば原作漫画が最終章を謳いながらも何度も媒体を移しながら、完結まで時間がかかった作品としても知られていますが、アニメシリーズに関してはさらにその上を行くように完結していながらも、平然と新作が提供されるという意味ではファンにとっては嬉しい作品となっています。
◆『銀魂』の特殊な点とは?
原作漫画が最終回を迎えていながらもアニメシリーズが継続している作品は今では少なくないですが、『銀魂』に関してはさらに特殊な例といえます。
同じ掲載誌だった『週刊少年ジャンプ』連載作品では、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』、『ハイキュー!!』などは原作は完結していながらも、そのアニメシリーズについては完結まで描ききれておらず、完結に向けて製作している最中の作品が増えてきました。
また『BLEACH』や『SLAM DUNK』のようにかつてはアニメシリーズが展開されていながらも、アニメ化されていなかったエピソードを追って新たに製作するパターンも出てきています。これらも原作漫画が最終回を迎えていながら新たなアニメ化が動いていた作品です。
昨今はリメイク作品なども増えてきており、アニメーション展開をするのに原作漫画が連載中である必要はなくなってきていることは顕著ですが、『銀魂』がそれらと一線を画しているのは“アニメシリーズを”一度完結させるタイミングを作ってていながら、そこからスムーズにアニメシリーズの新展開を長い休止期間を設けずに発表できていることです。
この『銀魂』が行なっていることは、前述のような現在アニメシリーズが原作の完結に向かっているコンテンツも、もし今後どこかで完結を迎えたとしても継続して新展開や新イベントを行う成功例としてモデルケースにできるでしょう。
直近では『僕のヒーローアカデミア』が10月から「FINAL SEASON」の放送を予定しています。ファンにとってはシリーズが終わる覚悟を持って臨むような作品となり得るわけです。しかし『銀魂』という前例があることは、もしアニメシリーズが終わりを迎えたとしてもそこで新作のコンテンツが途絶えるわけでもないという希望を、終わってほしくないファンとしては持てるのではないでしょうか。
フィナーレをお祝いする現地イベントなのか。もしくはTVシリーズの編集版の劇場公開なのか。はたまたアニメシリーズの完全新作を製作するのか。『銀魂』という前例が、原作の最終回に向かって今まさに走っているアニメシリーズにとっての一つの進路の候補となっていくでしょう。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:『「新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-」ティザービジュアル (C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会』
(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会