元暴走族が教壇に立つ──そのインパクトだけで多くの読者を引きつけた『GTO』。2024年4月にはフジテレビ開局65周年特別ドラマとして復活し、令和の世でも熱烈に支持されています。鬼塚英吉が私立中学の非常勤講師として受け取る報酬は、いったいどれくらいなのでしょうか。教頭・内山田や校長・ザビエル(丸山一八)の懐具合も含め、2026年4月時点の給与水準をもとに試算してみます。
◆私立中学の非常勤講師の年収は?
鬼塚が勤務する東京吉祥学苑中等部は、幼等部から短大まで擁する名門私立のマンモス校です。姉妹校も複数あることから財務基盤は安定しており、給与水準も私立中学の中では比較的恵まれていると推測されます。
鬼塚の勤務形態は「非常勤講師」です。非常勤講師とは、担当科目の授業や教材準備など必要な業務のみを担い、それ以外の時間は拘束されない働き方で、一般企業のアルバイトに近い位置づけといえます。給与は月給制ではなく、授業を行ったコマ数に応じて支払われます。
文部科学省が2021(令和3)年に公表した「標準授業時数について」によれば、鬼塚が担当する中学3年生の社会科の授業数は年間140コマとされています。求人サイト「求人ボックス」や「教員採用.jp」などを参照すると、私立中学の社会科1コマあたりの給与は概ね2000円〜4000円。名門校勤務という条件を考慮し、1コマ3000円と仮定します。
「140コマ×3000円」で年間42万円。鬼塚が4クラスを担当すると想定すると、「42万円×4クラス」で授業料の合計は168万円になります。
鬼塚は3年4組の担任も任されているため、担任手当も加算します(後に入院で副担任に交代しますが、ここでは担任期間を考慮します)。公立校には担任手当の制度がない一方、私立校では設けていることがあり、ある私立中学・高校の2021年度採用募集要項には月7500円と明記されていました。夏休みを除いた11ヵ月で計算すると、年間8万2500円です。
ボーナスについては、公立の非常勤講師には原則支給されませんが、私立校は学校の方針や経営状況によって異なります。東京吉祥学苑は生徒数の多い名門校であり資金力も十分と考えられるため、ボーナスが支給されると仮定します。
フリージャーナリストの前屋毅氏が2023年4月にYahoo!ニュース エキスパートで指摘しているように、近年では公立高校に準じた給与体系を採用する私立中学が増えています。東京都教育委員会が公開する「学校職員の給与に関する条例」を基準に試算すると、期末手当と勤勉手当は年2回(6月・12月)支給され、合計は月給の約4カ月分。鬼塚の年収168万円を11ヵ月で割ると月約15万2000円となり、4ヵ月分のボーナスはおよそ60万8000円です。
なお、鬼塚は学校の屋上の踊り場を住居にしているため、交通費は0円です。
以上をまとめると、「授業料168万円+担任手当8万2500円+ボーナス60万8000円」、合計237万500円前後が鬼塚英吉の年収と推計されます。実際の非常勤講師の中には複数校を掛け持ちしたり、塾講師を兼業したりしてさらに収入を得る人もいますが、鬼塚にそうした副業の描写はないため、この金額が実質的な全収入と見てよいでしょう。また、非常勤講師が担任を務めること自体が異例であり、この雇用形態が成立したのはまさに『GTO』という作品ならではといえます。
◆教頭・内山田や校長・ザビエルの年収は?
教頭・内山田と校長・ザビエルは、役職を持つ「専任教諭」であり、給与の算出方法が鬼塚とは根本的に異なります。専任教諭は一般企業でいう正社員に相当し、月給制で処遇されます。
近年、私立校においても給特法に基づく給与体系が普及しており、文部科学省が定める「教育職給料表」に準じて報酬が決まるケースが増えています。この表では「等級」(役職によって変動)と「号給」(勤務年数・功績によって上昇)の組み合わせで基本給が決まります。
内山田は51歳であることが判明しており、大学卒業後すぐに教職に就いたと仮定すると、教育職給料表に照らし合わせた基本給はおよそ47万6700円。扶養手当・通勤手当・ボーナスを加えると年収は約900万円と見込まれます。
校長・ザビエルの年齢は公表されていませんが、内山田と風貌が酷似していることから近い年代と推測されます。50歳前後の校長の基本給はおよそ50万5200円で、各種手当やボーナスを合算すると年収は約960万円前後。東京吉祥学苑の財務状況を踏まえると、1000万円を超える可能性も十分にあります。
〈文/士隠カンナ 編集・監修/水野高輝(マネーメディア コンテンツディレクター)〉
《士隠カンナ》
1990年〜2000年代に放送されたアニメに中学・高校の頃にどっぷりとハマり、その後フリー編集・ライターに。主にアニメ・漫画のムック本のブックライターとして活動中。最近のマイブームはもっぱら『ちいかわ』。
※サムネイル画像:Amazonより 『「GTO」第11巻(出版社:講談社)』


