『機動戦士ガンダム』を象徴するガンダム、アムロ、シャアですが、富野由悠季監督は、これらの作品名やキャラクター名について意外なほど率直な本音を明かしています。完成した作品からは見えない、名前誕生の舞台裏とは──?
◆ガンダム、アムロ、シャア──名前付けの裏で起きていた複雑な事情
富野監督は、2005年8月19日に放送された、NHKの『BSアニメ夜話』で、作品名やキャラクター名に関する裏話を詳しく語っていました。
まず作品タイトルにもなった『ガンダム』。初期案は「ガンボーイ」でしたが、スポンサーには却下されたといいます。当時は子供向け番組としての制約が強く、タイトル決定は想像以上に難航したそうです。
最終的に「ガンダム」に落ち着いたものの、当時のスポンサー主導の制作体制がよく分かるエピソードといえます。
次に主人公・アムロ・レイ。この名前は富野監督が1週間以上かけて考え抜いた渾身のネーミングだったといいます。ところがアニメ放送後、実在の地名「安室島」があることを知り、大きなショックを受けたとのこと。偶然とはいえ、創作者としては複雑だったはずです。
それでも今では、主人公の代名詞として完全に定着しているため、結果オーライなのかもしれません。
そしてもっとも印象的なのがシャア・アズナブル。この名前は意味ではなく、音の響きだけでスタッフが提案したものだったといいます。それに対して富野監督は当時を振り返り「本当に嫌いだった」と語っていました。
また、シャアの名前の由来には諸説があり、2010年11月2日に日本テレビ系列の『スッキリ!!』で、富野監督は、当時好きだったシャンソン歌手のシャルル・アズナヴール氏の名前をもじったとも話しています。
──こうして見ると、名前一つにもスポンサーとの調整や偶然の一致、スタッフとの意見のズレといったさまざまなドラマが詰まっています。富野監督の本音のトークは、創作の裏側を知る貴重な証言ではないでしょうか。
〈文/コージ 編集/相模玲司〉
※サムネイル画像;:Amazonより 『小説「機動戦士ガンダム Ⅱ」(出版社:KADOKAWA)』


