アムロ・レイとシャア・アズナブル最後の戦いを描いた映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(以下、『逆襲のシャア』)には、カミーユ・ビダンやジュドー・アーシタは登場しません。彼らが登場しなかった理由について後年、富野由悠季監督は真相を明かしています。
◆カミーユやジュドーはノイズになる可能性があった?
富野監督は、カミーユやジュドーを登場させなかった理由として「映画のテンポを下げないため」と、2018年6月に発売されたBlu-ray『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 4KリマスターBOX』に付属する、「逆襲のシャア ドキュメントコレクション」内で語っています。
カミーユやジュドーを出演させるなら、彼らがアムロとともに戦うまで、何をしていたか解説が必要になります。
特に、精神崩壊を起こしたカミーユは、どうやって戦線に復帰できるまで回復したのか、視聴者は気になるはずです。
しかし、『逆襲のシャア』ではアムロとシャアだけでなく、クェス・パラヤをはじめ、物語を左右する新規キャラクターが多く登場しました。
新規キャラクターに加えて、ジュドーやカミーユまで参戦すると情報量が多くなり、物語のテンポが悪くなってしまいます。
そのため、富野監督は「テンポが悪くなる」と判断し、『逆襲のシャア』に、カミーユとジュドーを出演させなかったのでしょう。
実際、彼らを登場させなかったことで、『逆襲のシャア』は「アムロとシャアの最終決戦」として機能しています。
また、『機動戦士ガンダム―逆襲のシャア― シネマブック』(出版社:ムービック、1988年3月出版)によると、当初、富野監督はアムロのパートナーとして、チェーン・アギではなくベルトーチカ・イルマを登場させる前提で脚本を執筆したと語られています。さらに、アムロとベルトーチカを結婚させ、彼らの間に子供が誕生する案もありました。
しかし、第1稿を読んだ製作側は、「そのような主人公でロボットモノを描いていいのか」と疑問を抱いたようです。そのため、富野監督は劇場版でベルトーチカではなく、チェーンを登場させたとされています。
ちなみに、小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』(出版社:角川文庫、1988年2月出版)では、富野監督の予定通り、ベルトーチカがアムロのパートナーとして登場していました。
──アムロに次ぐ主人公として登場したカミーユとジュドー。そんな彼らが『逆襲のシャア』に登場しなかった理由には、現場ならではの事情がありました。しかし、あえて彼らを登場させなかったからこそ、今でも『逆襲のシャア』はアムロとシャアにとことんフォーカスした名作として評価されているのでしょう。
〈文/北野ダイキ〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア―ベルトーチカ・チルドレン」(出版社:KADOKAWA)』


