『機動戦士ガンダム』ですが、実は初期案の段階では、ロボットは登場しない予定だったと後年、制作者たちが当時を振り返り書籍などで語っています。『ガンダム』といえば、ロボットが代名詞となっていますが、どのような経緯を経て今のような形になったのでしょうか?
◆仮タイトルは『フリーダム・ファイター』だった
富野由悠季監督が提出した企画案では『ガンダム』の文字すらなく、『フリーダム・ファイター』という仮タイトルが付けられていたと、2020年11月に出版された『安彦良和 マイ・バック・ページズ』(出版社:太田出版)内で明かされています。
また同書によると、当初、富野監督は冒険小説『十五少年漂流記』をベースにしたSFものを考えていたようです。少年たちが戦争に巻き込まれ宇宙戦闘機で戦うというのもので、ロボットが登場する予定はなかったと、2002年10月に講談社から出版された『ガンダム者: ガンダムを創った男たち』内でも綴られています。
しかし、この初期案だと宇宙船以外に、玩具化して売れるものがなかったようです。そこで、スポンサーである玩具会社クローバーから、玩具展開が容易なロボットを出すよう要請されたといいます。
こうして、スポンサーの意向を受けて、『フリーダム・ファイター』はロボット路線へとシフトします。それに伴い、タイトルも『フリーダム・ファイター』から、『ガンボーイ』『宇宙戦闘団ガンボーイ』と名前を変えながら、企画が練られていきました。
ちなみに、『ガンダム・エイジ ガンプラ世代のためのガンダム読本』(出版社:洋泉社、1999年3月出版)によると、モビルスーツは SF小説『宇宙の戦士』に登場する、宇宙強化服であるパワードスーツがモチーフになっているようです。
そのため、当初はパワードスーツのサイズに合わせて、ロボットの全高も2.5メートルほどと想定されていました。しかし、子供受けを意識したため、マジンガーZと同じ18メートルへと変更されたと語られています。こうして、現在まで知られる、18メートル大のガンダムが誕生しました。
また余談ですが、『十五少年漂流記』をベースにするというプランは、のちに富野監督が原案を担当した『銀河漂流バイファム』に活かされたことが、2016年9月に双葉社から出版された『グレートメカニックG 2016AUTUMN』内で明かされています。
──1979年に誕生してから、現在まで日本を代表するロボットアニメとして君臨し続けている『機動戦士ガンダム』。その誕生の背景には、スポンサーの意向という切実な事情がありました。しかし、そんな切実な事情があったからこそ、富野監督の才能が存分に活かされた、ロボットアクション作品が誕生したのかもしれません。
〈文/北野ダイキ〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「機動戦士ガンダムⅡ」(出版社:KADOKAWA)』


