『機動戦士ガンダム』に登場する重モビルスーツであるドム。地上戦ではホバー走行で地上を滑走する姿が印象的ですが、実はドムのホバー走行は、制作現場の切迫した事情から生まれたといいます。
◆ドムのホバー走行はアニメ放映を間に合わせるための苦肉の策?
ドムは、ジオン軍の地上戦用モビルスーツとして、一年戦争中盤頃に開発されました。当時、地上ではザクやグフが主に運用されていましたが、これらのMSは運搬に時間がかかるという欠点があったようです。
ザクやグフの移動は歩行か、車両による運搬で行われるものの、それでは展開速度が遅すぎたと『講談社ポケット百科シリーズ33 機動戦士ガンダム モビルスーツバリエーション2 ジオン軍MS・MA編』(出版社:講談社、1984年4月30日出版)で語られています。
そのため、陸戦用量産機として開発されたドムには、地上での機動力を確保するため、ホバー走行能力が与えられました。作中でも、この機動力の高さを活かして、ホワイトベースの面々を翻弄しています。
そんなドムのホバー走行ですが、実は作画の手間を省くために編み出された、苦肉の策でした。重力下でモビルスーツが足を動かして走る様を表現しようとすると、作画枚数が増えてしまい、毎週『機動戦士ガンダム』を放送できない可能性があったと『月刊OUT 9月号』(出版社:みのり書房、1982年9月1日出版)で裏話が明かされています。
そこで、作画コストを減らすために、一枚絵さえ用意すれば成立するホバー走行のモビルスーツを登場させたと語られています。この手法が現場で好評だったのか、続編となる『機動戦士Zガンダム』以降、地表を滑走する描写は多用されるようになりました。
一方で、ドムの活躍によって、ホバー走行は陸戦における、理に適った移動手段として地位を確立しました。
たとえば、『機動戦士ガンダムF90』に登場するF90の、陸戦仕様のミッションパックHタイプには、ホバーユニットが採用されています。
──ドムの代名詞とも言えるホバー走行。その出自は、非常に切実な現場の事情がありました。しかし、ドムの活躍によって、現在では作画コストを省く手法ではなく、モビルスーツの性能を押し上げる設定として受け入れられるようになったのです。
〈文/北野ダイキ〉
※サムネイル画像:バンダイ ホビーサイトより 『「MG 1/100 ドム」 (C)創通・サンライズ (C)SOTSU・SUNRISE』


