『機動戦士Zガンダム』(以下、『Zガンダム』)にて、カミーユ・ビダンの導き手となる、クワトロ・バジーナことシャア・アズナブル。そんなシャアの『Zガンダム』におけるファッションですが、実は富野由悠季監督と、キャラクターデザインの安彦良和氏の不和によって生まれたといいます。
◆クワトロのノースリーブは事故? 不和が生んだ修正不能なデザイン
クワトロの特徴といえば、サングラスに赤いノンスリーブの制服という、奇抜すぎるファッションでしょう。アーガマでは女性メンバー以外、ほぼ全員が袖がある制服を着ているため、マッシブな腕を晒すスタイルは、むしろ悪目立ちしているように感じます。
そんなシャアのノンスリーブですが、実は色指定の担当者によるデザインミスで生まれました。
アニメカルチャーメディア『Febri』が2022年12月21日に配信した「アムロ・レイの演じかた~古谷徹の演技・人物論~ 第7回(後編)」という記事によると、安彦氏は元々クワトロの制服も、袖がある想定でデザインしていました。
しかし、色指定の担当者が、クワトロの線画を見た際に、袖部分は肌色を指定されていると勘違いしてしまいます。
元々、安彦氏が袖の色をウォームカラーを想定し、カラーイメージもつけていました。それを担当者が、肌色と勘違いした結果、クワトロは袖なしになってしまったようです。
ただ、担当者のミスであるなら、本来あとから変更すれば済む話と考えるかもしれません。しかし、当時の『Zガンダム』の現場では、あとからの修正は難しい状態だったのです。
当時、富野監督が様代わりをしてしまい、安彦氏を意図的に避けるようになっていました。そのため、クワトロの袖の色も、安彦氏が知らないところでOKを出していたのです。のちにミスに気づいた安彦氏は、色指定の担当者に抗議したものの、「監督OKが出てしまったので変えられません」と言われてしまいます。
その結果、クワトロのデザインミスは修正されることなく、そのままオンエアされたのです。
なお、安彦氏は現在でもクワトロの袖がなくなったことに心残りがあるようで、サインなどでクワトロを描く際は赤く塗った袖付きの制服を着せています。
──色指定の誤解が、制作現場のコミュニケーション不全によってそのまま定着してしまったという、異例の誕生秘話。ただ、富野監督と安彦氏の不和が、図らずもクワトロに新たな個性を吹き込んだともいえるでしょう。
〈文/北野ダイキ〉
※サムネイル画像:プレミアムバンダイ公式Webサイトより 『「GGG 機動戦士Zガンダム クワトロ・バジーナ」(発売元:株式会社メガハウス)』


